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韓国ドラマ「病院船」から(連載120)

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韓国ドラマ「病院船」から(連載120)




「病院船」第11話➡私に構わないで⑦




★★★


 注意したのに壁も障子も気にしない……ウンジェは大きくため息をついた。
「出てきて」
 返事はない。ウンジェは立ち上がった。
「分かってるの。ピョさん、そこにいるんでしょ」
 やはり返事はない。
 ウンジェは歩いて隣室とのドアを開けた。
「そこにいるのは誰?」
 ジェゴルが顔を上げた。
「見ての通りだ。ピョさんに頼まれて修理をしてる」
 ウンジェは歩み寄った。
「聞いてたの?」
「耳はいいからね」
「忘れて」
「そうするよ。ライバルが消えれば先生を口説きやすくなる」
 ウンジェは呆れて言う。
「ほんとに軽口が好きね」
「いや、今日は紳士になろうと思う」
「どういうこと?」
「ヒョンは恋敵のようなものだけど、フェアに戦いたい」
「彼に話すというの?」
「ダメなの?」
「やめて」
「なぜ?」
「余計だし、何より…」
「何より?」
「私たちから聞けば彼が恥をかく」
「これは詐欺だ。騙されるより恥をかく方がマシでは?」
「いいえ…恥をかくことが何より耐えがたい人もいる…」
 ジェゴルは立ち上がった。ウンジェに歩み寄った。
「今、自分の話を?」
「…」 
「恥をかくのが嫌だから、彼にも気遣いを?」
 ウンジェは黙り込んだ。
 ウンジェの気持ちを理解してジェゴルは言った。
「分かった。君の言う通りにする」
 ウンジェはジェゴルに目をやる。
「ただし、条件がある」
「それは何?」
「まだ決めてない。決めたら伝える。では」
 ジェゴルは内科の診療室を出て行った。


★★★


 ジェゴルは自室に戻った。アコーディオンカーテンを閉めてからぼやいた。
「やあ、まいった。完全に三角関係さまだな~」
 立ち止まったまま思案する。
「このまま突き進むべきか?」
 デスクのコインが目に入った。それを手にした。
「絵柄が出れば”ゴー”、数字が出たら”ストップ”だ」
 頷いて放り上げる。両手で受け止める。開く。
 数字が出てしまった。
「おっとと、今のはリハーサル。本番は次だ」
 聞いてなかったか周囲の気配を気にし、コインをもう一度、宙に放り上げる。両手で受け止める。さらに慎重に中を開く。
「おっととととっ―、これもリハーサル」
 誰かの気配をさっと気にし、さっと投げ上げる。受け止める。片目で覗く。
「三度目の正直なるか…」




 小島の丘陵地で草刈りに励んでいる老人と若者がいる。
 若者は軟弱な仕事ぶりで、老人は見かねてずっと注意や檄を飛ばしている。
「力を入れてしっかり刈れ。鎌で切れなきゃ手で抜くんだ」
 あまりに小言が多くて、若者は作業をやめた。
「やってられないよ」
 鎌を放り出す。
「何て態度だ」老人は怒る。「仕事を続けろ」
「草むしりなんか人を雇ってやらせろよ」
「やらせろ、って誰にやらせろというんだ」
「大丈夫だ、父さん」若者は携帯を取り出した。「インターネットで探せばすぐに見つかる」
「インターネットなど、勝手なことを言うな。人を雇う金などあるもんか。定職に就かないヤツが生意気を言うな」
 若者は頭をかきむしる。
「また説教かよ」
「言われたくなきゃ、無駄飯食ってないで就職して家を出ろ」
 若者は渋々鎌を持って作業を始める。しかし、土中に半分埋まったカゴみたいなものに鎌があたり、そこから虫が飛び出してきた。
「わっ!」
 若者はのけ反った。叫んだ。
「蜂だ」
 若者は頭上を旋回する蜂を両手で払った。逃げ出した。老人も逃げにかかる。
「危険だ、逃げろ。走れ!」
 2人は一目散に蜂から逃げた。
 蜂に追われて逃げてるうち老人は足を踏み外した。斜面を転がり落ちた。息子が助けに走りおりた。しかし父親は動けない。助けを呼ぶしかない
 息子は救急電話を入れた。
「もしもし、父親が蜂に追われてケガをしました」
「場所は?」
「高介島…」
 そう答えたきり、若者は気を失ってしまった。
「応答がありません」
 オペレーターは上司に相手の状況を説明する。
「管轄外だから海洋警察に引き継げ」
 海洋警察が状況を引き継いだ。
 チーム長がやってきて部下に指示を出す。
「警備艇を出動させろ」
 しかし部下はもっと有効な情報を提示する。
「高介島には病院船が停泊中です」 
 チーム長は目の前の受話器を握った。


 
 病院船の船長がその電話を受けた。
 情報を引き継いで船内に放送を流す。
「この島で緊急の患者が発生しました」

 ヒョン、ウンジェ、ゴウン、アリムらの救急スタッフが島の乗用車トラックで現場に直行した。
 巨済市から警備艇も出動した。
 
 
 船長は居残りのスタッフの前で文句を並べた。
「蜂に刺されたくらいで救急や海洋警察を呼ぶとは情けない…おかげで病院船まで大騒ぎだ」
「まったくだ」
 と事務長も同調する。
「ところで」設備のカン・ジョンホが訊ねる。「蜂の毒は危険なんですか?」
「そんなのミソでも塗っておけばすぐ治るだろ」と船長。
「ミソとは古いな」と熊さん、いや事務長。
「そうです」と韓方科の看護師。「蜂の種類にもよります」
「スズメバチなら大変でしょう?」
「もちろんです」とジュニョン。「アナフラキシーショックで死ぬこともあります」
「蜂に刺されて死ぬだって」と船長。「うわ~、最近の蜂はこわいんだな~」
 事務長は同調できずに困った表情をする。
「昔はおとなしかったのに…」
「それはちょっと」と事務長。





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