韓国ドラマ「30だけど17です」(連載60)
「30だけど17です」第7話(内職に励む)②
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
★★★
「これ?」
ソリは笑顔でまた腕を伸ばした。親指と中指の中に月を収めた。
「ママが教えてくれた弓の持ち方は…」
その日のことをソリは思い浮かべた。
「肘をあげて〜、左目を手で隠して見てごらん…」
ソリは言われた通りにした。
「どう? 言った通りでしょ」
ソリは頷いてママを見た。
「ママは”月のウサギ”を取り出せた」
「ママ、そんなのインチキだよ」
「インチキじゃないよ。”できない、できない”と言ってたら〜本当にできなくなるの」
「…」
「でも、出来ると思っていたら、不思議にできちゃうようになるの。何事もね、考え方次第だから。月のウサギも取り出せたでしょ」
「いいわ」ソリは答えたものだった。「ママを信じてあげる」
いつもの陸橋での出来事だった。
「ふ〜ん、お母さんに習ったのか…その頃、可愛かっただろうなあ」
ソリはチャンの独り言を訊ねた。
「今、何て?」
チャンは少し慌てた。とぼけて答えた。
「何でもないよ」
チャンは両腕をほぐした。
「そろそろ寝ようかな。まだ寝ない?」
ソリは笑顔で答えた。
「もう少し残ってます。先に寝てください」
ソリの後ろ姿を目に刻んでチャンは中に消えた。
★★★
ウジンは部屋の窓を開けて外を見た。家を家と思わない外の暮らしも多かった。こうして家の外を眺めるのは久しぶりだ。
月を見、遠くに目をやった。
すぐ真下にはソリがいて高校時代の自分を懐かしがっている。
ウジンもまた同じ思いで月を眺めていた。
朝起きて小麦粉を固めていると、ドクス達が顔を出した。チャンを呼んだ。
「チャン、行くぞ」
大きなバッグを背負ってチャンも出て来る。
「おっ、食料だ」
玉ねぎの大きな網袋を見てドクスが感激する。
チャンがすぐ否定する。
「うちのじゃない」
玉ねぎ袋を見てチャンの脳内を光が走った。
「ちょうどいい。皮を剥こう。来てくれ」
「朝っぱらから何だよ」
キッチンからソリが走り出てくる。
「いいえ、いいです、いいです」
「…!」
「ダメです。目が痒くなるから」
しかしチャンは引かなかった。ドクス達とともに玉ねぎの皮むきにかかった。
しばらくしてジェニファーが顔を出した。トックも飛び出してきた。
「早くしないと学校に遅れますよ」
「まだ大丈夫です」
そう答える彼らを見てジェニファーは言葉を失った。
悪役のプロレスラーや馬みたいなぬいぐるみを被っている彼らを見て、トックは逃げてしまった。
ドクスがお面を取った。
ゼーゼ〜ッ、と息をついた。
「目は痒くないけど、息が苦しい」
チャンやソリも被りものを取った。ゼーゼ〜ッ、とやっぱり息をつく。
「さすがに苦しい」
ヘボムが訊ねた。
「一個剥くといくらなの?」
「50ウォンくれるそうです」とソリ。
ドクスがヘボムを見た。
「50ウォンだと、バイオリン直すには何個剥けばいい? 物凄い数だよな」
ヘボムがさわやかに言った。
「僕が新品を買ってあげますよ」
すると後ろでジェニファーが答えた。
「ソリさんのバイオリンは―イタリアで200年以上前に職人が手作りした名品です。状態により、時価は2億から5億ウォンにもなります」
ドクスはポカンと口を開けた。
「やります」
ヘボムはさっさと玉ねぎを剥きだした。
ドクスは感心して言った。
「ジェニファーさんはよくご存じですね」
「私はただ…」ジェニファーは答えかけて思いとどまった。「仕事に戻ります」
ドクスはヘボムと顔を見合わせた。
「あの人はAIロボットみたいだな〜何者かな?」
「…経歴とか家族は?」
ヘボムはチャンを見て訊ねた。
「さあな…」
ドクスは言った。
「ちゃんと答えろよ」
しばし考え、チャンはソリを見た。
「おばさんは知ってます?」
ソリは首を横に振る。
「私も知りません…あっ」
顔をあげた。ドクス達をせかす。
「学校に遅れますよ。早く行って」
ドクスは首を傾げつつ言った。
「一度に大金を稼ぐ方法は何かあるはずだ…」
「ありますか、そんなの…?」
とソリ。
チャンはソリに顔を近づけた。
「そんなうまい話は―詐欺しかありません」
それを聞いてソリは黙り込んだ。
「ああ、しかし剥いても剥いてもきりがない」
ヘボムの声にドクスは言った。
「1人じゃ大変だろうから、帰ったらまた手伝います」
「1人でへっちゃらです。気にしないでください。バイオリンのためなら何でもやるつもりですから。だから早く学校にムキなさい」
ソリの冗談にチャンやドクス達はクスクス笑った。
「いやいや」とヘボム。「おじさんに送ってもらうからまだ大丈夫です」
そこにウジンが顔を出した。ヘボムたちに声をかけた。
「俺がいつ送ると言った? 初耳だな」
「いいえ」とドクス。「そのつもりで出勤の準備をお願いします」ときっぱり言った。
「勝手に決めないでくれ。出勤にはまだ早いんだ」
ヘボムは引き下がらずに言った。
「さあ、あと10分で出ますからね」
「どうして?」
「急いで、GOッ!」とドクスは手を叩いた。
「だから、なぜ僕が…?」
今度はヘボムがパチンと手を叩く。
呆れながらもウジンは受け入れるしかなかった。
チャンはソリが小麦粉をこねていたボールの前にやってきた。途中でこねるのをやめたソリの手形が小麦粉の塊にくっきり残っている。
そこにそっと手を押し当ててみる。
「おっ、意外にも小さい…」
妙な感激がチャンの心をいっぱいにした。
玄関でドクスらが呼ぶ。
チャンは爽やかに返事して玄関に急ぐ。
出かける準備を急いですませ、しぶしぶ階段を降りて来る。
ウジンを見てドクスがさけんだ。
「おじさん、意外にのろまですね。みんな揃ってますよ」
ウジンはドクスを睨み返す。
「お前こそ、小言が多いぞ」
「急いで」
ドクスは背を返した。
「いい迷惑だよ、まったく…」
ぐちりながら最後の階段を降りようとしたら、植木に膝をぶつけそうになる。すんでで立ち止まる。
「ごめんなさい」
ソリが飛び出してきた。
「また、萎れちゃったものだから…片付けます」
ソリが植木を引っ張ろうとしたらウジンは両手で止めた。
「そのままで」
2人は目を見合わせた。ウジンは両手を広げた。
「葉っぱが元気になるから」
「…」
ウジンはソリにはにかみを残して玄関に向かった。
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