雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載27)






 韓国ドラマ「病院船」から(連載27)





「病院船」第3話➡プライドと使命感④






★★★


 ウンジェはほぼ未経験の手術をスグォンの指示でやり続けた。
「問題が発生しました。血管が短いです」
 しかし、この道の権威、スグォンは冷静だった。
「心配するな。表在性銃脈を採取して移植しろ。君ならできる。頑張れ」


 
 ウンジェに対する声援と細かい指示の映像を目にしながら、ジェゴルの気持ちは複雑だった。スグォンの息子でありながら、こういう愛情を父からもらったことは一度もなかった…。
 山で脚を痛め、兄の適切な応急処置で助けられたことがある。あの時も父はケガした自分より、手当てしてくれた兄の外科的処置の見事さを優先して褒めたたえた。ケガした自分には見向きもしなかった。
「お前にはすぐにでも病院は譲れる…あっははははは」と上機嫌だった父は今でも忘れない。
 


 ウンジェはスグォンの指示を着実に実行した。
 モニタ越しに言った。
「よくやったソン先生。問題ないと言っただろ。…血管吻合の技術も
申し分ない。では縫合を始めろ」
「わかりました」
 ウンジェは縫合を開始した。


 長い手術時間だったが、それを待つだけの者たちにはもっと長かった。
 そして長かった手術は無事に終わった。


 ウンジェは言った。
「患者を起こしましょう」


★★★


 手術に関わったスタッフ始め、SNSを通じてモニタ越しで見つめる視聴者も、ウンジェの言葉に耳を傾けた。
「ジョンホさん。聞こえますか?」
「…」
「返事して」
「はい」
「指を動かしてみて」

 手術した手に注目が集まる。指は…人差し指から順にピクピクと動いた。満遍なく動く指を見てウンジェは笑みを浮かべた。ヒョンもアリムもゴウンも顔をほころばせた。
「成功だ」とヒョン。
 ゴウンも小さくガッツポーズをとった。 
「お疲れ様」とジュニョン。
 モニタを通じてこの場面を見たスグォンも頷いた。
「すばらしい。よくやった」
 そう言って拍手を添えた。ウンジェのスタッフたちも拍手で手術の成功を讃えた。




「腕は元どおりになったわ」
 ゴウンが外で待っていた者たちに報告した。
「成功したのか。凄い先生だな」と船長。
 事務長がすかさず言った。
「これでもソン・先生を追い出すつもりか?」 
「俺がいつ追い出すと言った。ソン先生はとても大事な人だ。この病院船の宝だよ」
「調子いい人だな、もう」と事務長。
 そのうち船長の音頭で”ソン・ウンジェ”合唱連呼となった。




 ウンジェは1人でデッキに出た。腰をおろし自分の両手をみた。ひとりの医者として患者を救うことに全力を投入できた充足感でいっぱいだった。
 ウンジェのところにヒョンがやってきた。飲料缶をウンジェに持たせた。
「こんな日は祝杯を挙げないと」
 そう言ってヒョンも腰をおろした。
 リングプルーを外した。
「いい朝だね、ソン先生」
 ウンジェも笑みを浮かべた。
「そうね。今日はいい朝だわ」
 ヒョンの飲料缶に自分のをぶつけた。




 ジョンホは巨済第一病院で術後の検査を受けた。
「もっと上、うむ…きれいだ。うむ、いいね。ソン先生、ご苦労だった」
 ウンジェは頭を下げる。
 ジョンホにも伝えた。
「経過はいい。順調です」
 ジョンホもお礼を返す。
 ウンジェたちは外に出てきた。
 キム・スグォンは足を止めて言った。
「ソン先生、これからもよろしく」
 ウンジェの方を振り返る。
「救急に言っておいた。明日から出勤を」
「…」
「どんな騒ぎだったにせよ、その実力なら申し分ない」
 キム・スグォンの方から握手を求めてくる。
 ウンジェは両手で握手を返した。
「最善を尽くします」




 巨済第一病院にはたくさんのマスコミが押しかけた。
「ソン先生。じつに感動的な手術でした」
「ご感想をお聞かせください」
「患者の回復を祈るだけです」とウンジェ。
「なぜ、病院船に?」


 取材の様子を病院船のスタッフらもテレビで見ている。


「公衆保健医は兵役代わりが一般的ですが、志願した特別な理由でも?」
「病院船の前はどこで勤務を?」
「ソウルデハン病院です」
「国内トップの大病院からなぜ病院船に?」


 この様子はデハン病院のキム・ドフンらもテレビで見ていた。
「まさか、暴露する気では?」
 とミョン・セジュン。
「…」


「いったいどんな医療事故だったんだ」とチャ・ジュニョン。「あんな腕のいい医者を追い出すなんてどうかしてるよ」
 みなの目はアリムに向けられる。
 アリムは戸惑う。
「なぜ、私を見るんですか?」
「噂の始まりはあなただもの」とゴウン。
「私も詳しくは知りません」
「知らないって?」
「なら、嘘を?」
 アリムは両手で否定する。
「友達に聞いたんです」
「友達って誰?」
「第一病院の院長の秘書です。騒ぎを起こし、クビになったと」
「どんな騒ぎを?」
「そこまでは私も…」
 事務長がやってきた。
「だから医療事故だと勘繰ったのか?」
「つまり、医療事故ではないってことか?」と船長。
「まったくひどいわ。根拠もなく騒いで」
「真相を知ってるのはあんただろ」と船長。
「そうみたい…事務長ちゃんと説明して」とゴウン。
 事務長は大きくため息をつく。
「これは誰にも話さないでくれって、念押しされてたんだけどなあ…」
 しぶしぶ説明を始める。





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