雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載17)






 韓国ドラマ「病院船」から(連載17)





「病院船」第2話➡劣悪な手術室④


★★★


 ヒョンは診察室に入り、診察台に寝転んだ。
「確かにどこかで会ってるんだがなあ~」
 思い出せない。諦めて立ち上がる。
 デスクの前に来た時、壁に張り付いた写真に気づいた。写真を手にして得心した。
 このせいだったのか…。
 ゴウンは新聞を事務長の前に置いた。
「見覚えがあると思ったのよね」
 ”ドゥソンの後継者を救う”の見出しでウンジェの写真がデカデカと載っている新聞だった。
「どういうこと? ソウルで成功した医者がなぜ病院船に?」
 事務長は困った顔になる。
「それは…」
 事務長はウンジェと約束させられていた。


―ここに来た理由と前の病院でのことは…。
―秘密に?
―お願いします。


「それは何ですか?」
「…秘密です」


 ヒョンは写真を持ってウンジェの部屋にきた。ウンジェの前に差し出した。
「これ、君でしょ?」
「…」
「何年前に撮った?」
 ウンジェは写真を見た。
「7年前よ」
「だから気づかなかったんだ。この頃よりだいぶ…」
 ウンジェは手を止めた。
「どうして?」
「何がです?」
「その写真はどこで?」
 ウンジェはそう言ってヒョンの手にする写真を取り上げた。


★★★


「特ダネだ」
 ジュニョンが船のマストに向け、固定梯子を上った。
「手術がうまくいくわけだ」
 ジュニョンは持ってきたタブレットを見せた。
「ああ、優柔な人なんだな。それで?」
「顔もスタイルも僕のタイプだ。ツンツンしてるけど、そこも可愛い」
「理由は何だろう…」
「名声を捨ててまで来るとはよほどの事情だろうね。僕がそのへんを」
「ストップ」とジェゴル。「やめときな」
「どうして?」
「回りくどいことせず、本人から聞いた方がいい。過去を探る男は嫌われるぞ」
「そうかな…」
 ジュニョンはタブレットを返してもらう。
「やめといた方がいい」




「君の母さんがくれたんだ」
 ヒョンは写真が手元にある事情を話した。
「見合い写真みたいなものだ。僕のことを好きになってもいいよ」
 イスに腰をおろす。笑顔でいう。
「でも、ライバルが多いから頑張って。診療に行く島は26か所。僕を婿にしたい人が各島に2人。競争率は52倍だ」
 ウンジェは資料を閉じた。
「それくらいにして、出てってくれない?」
 ヒョンは腕を組む。
「お母さんはどうしてる? 元気にしてる?」
 ヒョンの背中が大きな音を立てた。いきなりでヒョンは呻いた。事務長は耳をつかんでヒョンを外に引っ張り出した。
「事務長、痛いです」
 事務長はヒョンをデッキまで連れ出した。
「えっ! 亡くなったんですか?」
「無神経なヤツだ」
 事務長は行ってしまった。
 ヒョンは頭に手をやった。何度も嘆息した。




 そばで話を聞いていたジェゴルがジュヒョンに言った。
「見たか。突っ走りすぎるとああなるぞ」
「お母さんが亡くなって…ヤケになったんだな。そうか…よし決めた。僕がソン先生を守る」
 ジェゴルは呆れ顔になった。




 事務長は怪訝そうにする。
「何ですって? ソン先生を追い出せ?」
「そうだ。今すぐに」と船長。
「ソン先生は患者を救ったんだぞ」
「そんなことは分かってる」
「じゃあ、なぜ?」
「予算がないからに決まってる」
 船長はファイルを突き出した。
「ソン先生を受け入れてみろ」
 船長はファイルを開いた。
「こんなに買えっていうのか? これじゃ船が進まない」
「…」
「ただ浮いてるだけでいいのか?」
 事務長は手にしたファイルを机上に戻した。
「カネを出す必要はない」
「どういう意味だ」
「昨日みたいにソン先生が奇跡を起こせば、あっという間に病院船は注目の的になる」
「そしたら?」
「金づるがドバドバ押し寄せて来るんだよ」
「何のために?」
「そりゃ、撮影するためにだよ」
「わざわざ…?」
「ただし、タダで撮らせるわけにはいかない」
「そういうものか…」
「あとは大人しく私に任せておけばいい。すでにプロジェクトは始まっているんだ」
 船長はひとつ空咳をした。





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