カンジャを無視しようとしたアンナだったが、思い直した。
「あのまま家に帰したら、ずっと待ち続けるわ。雪を待つように私を待ち続けるでしょう。私が送ってあげなきゃ」
アンナは玄関に向かって歩き出した。
「どういうことです? 社長はアメリカに行かないんですか?」
ユギョンは同僚に訊ねた。
「ええ。奥様だけ帰るんですって。戻ってはきたけど、結局、別れるみたい」
「…彼女は本当に出国するんですか?」
「荷物はもう送ったのよ。魔女が人間になって戻ってきたのに――離婚するなんて理解できない」
ユギョンは足を止める。同僚は先に立って歩き出した。
アンナはカンジャを車で自宅まで送ってきた。
「お姉さん、もっと走って。もっと、もっと」
「着いたから、おりて」
「うん、お姉さんのお家へ行こう」
「あそこは私の家じゃないわ」
「子供たちが待ってるよ。だから私が代表して迎えにいったの」
アンナはしんみりとなった。
「子供たちも待ってるの?」
カンジャは顔を近づけた。こっそりした口調で言った。
「これは私だけが聞いた話だけど…コッスンも”待ってる”んだって」
アンナは前方に目をやった。
「面倒ね。しがらみが多すぎるわ」
「お姉さん、行こうよ」
「あなたはここにいて。一人で行くわ」
アンナはチョルスの家にやってきた。
ジュンソクたちは庭先でコッスンを相手に遊んでいた。
「コッスン、食べちゃダメだよ」
コッスンはアンナをいち早く見つけてうれしそうにする。尾っぽを振り、すぐにも駆けつけたいしぐさを取る。
「あっ、おばさんだ」
グンソクらも気付いた。いっせいに駆け出す。
「来ないで!」
アンナは叫ぶ。
「そこでよく聞いて。私は遠くへ行くから二度と会えないわ。だから”待たないで”と伝えにきたの」
「もう会えないの?」
「過ぎたことは戻らないわ。私も行ったら戻らない」
「僕たちが会いに行くよ」とグンソク。
「短い足では無理よ。とても遠いの」
「それでも会いたくなったら?」
アンナは涙ぐんだ。
「我慢して。生きていくには我慢も必要なの」
グンソクは涙をぬぐった。
「大人に心配かけちゃダメよ。叔父さんの前で泣いたりしないで」
アンナの励ましに長男のジュンソクもユンソクも涙ぐんでいる。
「だけど涙が出て仕方ないよ」
「おばさん、行かないで」とユンソク。
「100までの数え方は教えてくれないの?」
三人はアンナのそばに歩み寄ろうとする。
「来ないで! 離れてた方がいいの。それ以上こっちにきたら――つらくなる」
「おばさん」
たまりかねたようにグンソクが走り寄る。
「行かないで!」
アンナにすがりついて泣き始める。
ジュンソクたちも走り寄る。
「行かなくてもいいでしょ」
アンナの手を取り、涙ながらに訴える。
「お願い、行かないで」
「…」
「行かないで。僕たちと一緒にいて」
アンナは必死に涙をこらえた。
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