雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」第1話⑧







韓国ドラマ「30だけど17です」第1話⑧
Korean drama "30 but 17" (serialization 8)



「30だけど17です」第1話(人生を揺るがす出会い)⑧


☆主なキャスト&登場人物 

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)



★★★






「ショックだろうよ」
 若手医師がステーションに戻った看護師に説明した。
「目が覚めたら30歳になってたんだ。その顔をすぐ受け入れられるはずはない」
「…」
「会いに来る男性との連絡は?」
「最近は御無沙汰で電話もつながりません」
「そうだ。事故で一緒だった友達の消息を聞かれました」
「そこまでは私も知らされてないわ」
「無事かどうか調べてほしいと頼むものだから、当時の記事を検索したんです」
「それで?」
「あの事故で死んでました」
 医師はため息をつく。それを伝えるわけにいかないという表情になった。


★★★


 「30歳…」
 ウ・ソリの中で少しずつ記憶が蘇りだす。
 友達が自分たちの名を呼びながら道路を走り渡って来た日…あの日がそうだった。
 自分たちの前に立つと荒い息を整える間もなく彼女は切り出した。
「担任の先生が結婚するんだってよ」
「えっ! ほんとに?」
「すごい!」
「私たち、結婚式でお祝いの歌を送りましょう」
「いいわね」
「やろう、やろう」
 ノ・スミと腕を組んだまま、自分たちはぴょんぴょん飛び跳ねたものだった。 
「30歳でやっと結婚できたんだからね」
 みんなして、”うんうん”と頷きあったものだった。
「30歳か~」
 友達と別れた後、ノ・スミは言った。
「その頃になったら、ウ・ソリは世界的なバイオリストになってるね」
「どうかな…」
 照れ臭そうに笑い返したのは昨日のことに思えるのに…。
「私はその頃、3人の子持ちになってるかもね」
「えっ? 3人も~! 多すぎない?」 
「多いかな? 私は子供だけはたくさん産もうと思ってるんだけど、いけない?」
「そんなことないよ」
「そうよね。あっはははは」 





 ノ・スミと笑い交わしたのを鮮明に覚えているのに、ほんとに13年前の出来事だったの? 事故に遭ったせいで…私はあれからその30歳までを眠り過ごしてしまったの…?
 ウ・ソリは病室の窓に目をやった。深まった夜の窓は30歳になったソリの顔をくっきり映し出した。
 その顔を見ながらソリは心で呟いた。
「じゃあ、私の18歳は? 20歳は? いきなり大人になっちゃうのは~嫌だ。30歳になんてなりたくない…!」
 そう思うだけで悲しさがこみ上げる。
 夜が来るたび、窓に映る自分の顔を見てソリは泣いた。涙を流し続けた。







 長い休暇中のコン・ウジンは、毎日が夜も昼もない状態にあった。
 パソコンのテレビ電話が鳴った。タブレットPCの液晶画面に女の顔が浮かび上がる。
 ウジンの勤務するデザイン事務所の代表、カン・ヒスだった。
「コン・ウジン、まだ寝てるの?」
 ベッドに寝たまま、ウジンはムニャムニャ答える。
「ああ、切るよ」
「ダメ、早く起きて。起きなさい。 さっさと起きなさい!」
 ウジンはひょいと起き上がる。ボサボサ髪と顎髭に包まれた顔のアップに、デスク前に座ったカン・ヒスは思わずのけ反る。





「びっくりした。クマかと思った。森にいたら間違われて銃で撃たれるわよ」
 ウジンは手でピストルを作り、自分を撃って横に倒れる。
「やい、起きなさい。何時だと思ってるの。ほら、コンコン!」
「何だよ」
「何だよ、じゃないでしょ。自由に休めるのは誰のおかげだと思ってるの? いいご身分だこと。浮浪者ごっこは封印して、早く戻ってきて仕事に復帰しなさい。でないと、ぶっとばすわよ」
「今度はクロアチアに…」
 画面はいきなり切れた。
「ん? もしもし…」
 ウジンは頷いて身体をおこす。
「切って当然だな」
 それからまた横になる。
 間を置かずまたテレビ電話が鳴った。
 ウジンは身体を起こす。
「カン代表、今…」





 液晶画面に現れた弟を見て、姉のヒョンジョンはびっくりする。
「びっくりした。ひどい恰好ね。クマかと思った。ヒスと通話を?」
「たぶん…」
「今回の休暇は長いわね」
「…」
「7月から私たち夫婦はアフリカへ~医療奉仕に行って来るから」
「うん、気をつけて」
 ウジンはゴロンと横になる。慌てて起き上がる。
「チャンはどうなる?」
「だから電話した。チャンをあの家に行かせるから、何があっても帰って来なさい」
 ウジンも姉には顔が上がらない。
「姉さん、それはあんまりだ。だって」
「住み込みの家政婦も手配したわ」
「家政婦…他人は家に入れたくない」
「ああ」ヒョンジョンは思い返す。「そうだったわね。じゃあ、あんたが―チャンの食事から洗濯の世話までやってくれる? 高校3年のあの子の面倒見るの大変だわよ。頼むわね」 
「なぜ僕がそれを~」
「この際、はっきりさせましょう。あの家は両親のもので、そこではあんたも居候なの」





 休暇で家をあけることの多いウジンはやむなく妥協した。
「分かった。チャンはいいとして家政婦は…」
 テレビ電話は一方的に切れた。
「ね、姉さん…コン・ヒョンジョンさん」
 しかし、テレビ電話はつながらない。
 ウジンはしばらく考えて得心する。
「そりゃ、切るだろうな」
 自分の好き勝手に合わせるほど、世間も家族も甘くないのはウジンも承知していることだった。
 ウジンは大きくため息をついた。




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