雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載6)








 韓国ドラマ「病院船」から(連載6)


 「病院船」第1話➡病院船に導かれし者⑥


★★★


 病院船のデッキ―で憩いながらヒョンは言った。
「病院船を遊覧船だと思って楽しむんだ」
「いいだろ」とジェゴル。
 ジュニョンは釣竿を持ち出し、魚を釣り始めた。




 医者たちを見てアリムが言った。
「3人ともどうかしてるわ。公衆保健医は兵役替わりなのよ。たるんでるわ」
「いいじゃないの」とゴウン。「でも、どうせなら脱いでほしいわ」
 ゴウンの言葉に納得できないアリムは彼らのところへ歩いて行った。


★★★
 



 3人のそばまで来ると白い靴で床をどんどん蹴った。
「これは何のつもりです?」
「一緒にどうですか?」とジュニョン。
「それでも医者なの?」
「そうじゃない」
 ヒョンは読んでいた本を閉じた。時計を見た。
「診療開始まであと38分ある」
「何ですって!」
「診療の10分前までは医者じゃない」
「だから、個人として自由を楽しむ。それが良質な診療につながるんだ」
 ジュニョンの言葉に「うんうん」とヒョン。
「その通り」とジェゴル。
 アリムは呆れて自分の胸を叩いた。




 若い連中のやりとりを眺めていた事務長は言った。
「病院船に勤めて20年。あんなバカどもは初めてだ」
「名医の息子も期待外れみたいだ。まいったな」船長も同調した。「3人まとめて海に流されちまえばいいんだ」
「どうやら、特別処置も必要だな」
 船長は事務長を見る。
「特別処置?」




 デハン病院内を歩いているウンジェに年寄りの男がいきなり腕をつかんでくる。立ち止まったウンジェに親しく話しかけてくる。
「君だな」
 ウンジェには覚えのない人だった。
「顔見てすぐ分かった」
「どなたです?」
 老人はメガネのフレームをつかみ、ウンジェのネームプレートを見た。
「ソン・ウンジェ…ペンションの主人の姪だろう?」
 ウンジェは顔をしかめた。目をつぶった。
「お母さんから話を聞いてるよ。わしは肝臓が悪くて…」
「しずかに!」
 ウンジェは老人の大きな声を制した。
「あちらへ行きましょう」
「そうか。行こう」
 そそくさ歩いていくウンジェに老夫妻はとことこついて行った。




 その夕方、オ・へジョンに電話が入った。へジョンは妹のミジョンとくつろいでいた。そこに携帯が鳴ったのだった。
 今日はまた一人、彼女のもとに病人を送り込んだ。そんな時は決まって娘は怒りの電話を寄こす。
 鳴りしきる携帯を見てミジョンは言う。
「死神のお迎えが来たわね」
「どうしよう」
 へジョンはミジョンを見た。へジョンは怒りの電話をよこすウンジェが苦手だった。
「どうもこうも出なきゃしようがないでしょ」
 ミジョンは携帯をへジョンのもとに押し付けた。
「だって怒られそうだもの」
 携帯はずっと鳴り続ける。へジョンは手を震わせながら携帯を握る。やっぱり出ることができない。
「出て」
 ミジョンに代わりで出てもらおうとする。しかし、ミジョンは拒んだ。
「ウンジェの小言は聞きたくない」
「ああ、もう…」
「早く出て」
 へジョンは仕方なく電話に出た。
「おお、ウンジェ、母さんよ」
「母さん、もう5回目よ」
「そうね、知ってるわ」
「今月だけで3件も」
「分かってるって」
「いい加減にもうやめて」
「ウンジェ、あのね」
「私を殺す気?」
「親に何てこというの」
「母さんが私に怒る資格はないはずよ」
「ああ、悪かったわ。母さんの考えが甘かった。ごめんなさい。ほんとごめんなさい」
 へジョンはウンジェに謝りながらミジョンと目を合わせた。
 ウンジェは乱れた髪を手指で押し上げた。
「これが最後よ。今度患者をよこしたら縁を切るわ。いい」
 へジョンの言葉が言い終わらないうち、ウンジェは携帯電話を切った。



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