アンナはやむなく運転席に乗り込んだ。チョルスを乗せて町中を走った。
「運転して何か思い出したか?」
「ええ。思い出せそうよ」チョルスを見た。「もう少しで思い出せるから・・・約束を取り消してこのまま大通りを走らない?」
「いや、俺は降りるよ」
「それじゃ、ガソリンを使い果たしてやるわ」
アンナのムキになってるところがおかしい。
「次の通りを右折して」
聞こえない振りしてアンナは通りをまっすぐ突っ切って行く。チョルスはあわてる。
「おい、右折と言ったろうが」
「早く言ってよ」
チョルスは呆れた。
「チャン・チョルス。約束を取り消してこのまま走らない?」
「いいから、次でUターンしろ。大事な約束なんだ」
アンナはカリカリして口中で文句やグチを並べる。その表情を愉快がりながら、チョルスはユギョンの言っていた言葉を思い出した。
「彼女はこのこと知ってるわ。私が話したの。私が会いに来る事も知ってるはずよ」
「サンシルが?」
「あなたの元へ戻っても構わないと言ってた」
チョルスはカリカリ苛立って車を走らせるアンナを見た。どう見てもユギョンの言っていた話と合わない。
チョルスはアンナに訊ねていた。
「そう言ったのはウソか?」
アンナはいきり立って訊ね返した。
「私が何を?」
「いや、何でもない。あそこで止めて」
「もう着いたの?」
車は灯台に向かう突堤の途中で止まった。
「ここで会うの?」
車からおりてアンナは訊ねる。
チョルスは答えない。アンナが勘違いしているらしいことに気付いているからだった。
「ムードづくりから入るわけね、花束女」
「…」
「じゃあね、チャン・チョルス。迎えには来ないからね」
チョルスは車に戻ろうとするアンナを制した。
「サンシル。朝から俺に何が言いたいんだ?」
「何?」
「ユギョンの元へ戻るなってことか?」
「そうよ。この気持ちを知っていてここに来たの?」
「お前が言わないからだ」
「いいわ、もう、ここまで来たならどうせ終わりだわ。行けば? せいぜい仲良くね」
車に戻ろうとするアンナを今度は両手で制した。
「行かない。お前がイヤなら行けない」
アンナはチョルスを見つめ返した。
script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb