韓国ドラマ「病院船」から(連載96)
「病院船」第9話➡三角関係のはじまり⑥
★★★
「酸素飽和度が」とアリム。
「数値が低いな」とヒョン。「患者の状態はどうなってる?」
「状態? あっ!」
ジェゴルはスボンの手とつながるコードの異変に気づいた。
「悪い。動いて外れたらしい」
★★★
ウンジェとヒョンらはホッと安堵する。
「残り時間はどれだけ?」とウンジェ。
アリムが答える。
「13分です」
手術は仕上げに向かった。
手術を終えてウンジェらが出てくる。
真っ先に船長が訊ねる。
「手術はどうなった?」
「成功したのか?」と事務長。
「もちろんです」
ウンジェは笑顔を見せた。
「やったぞ!」
待機のスタッフらは歓声をあげた。
「どうやって?」と韓方科出身の看護師。
「何を言ってる」と事務長。
信じられない看護師は身振りを入れて訊ねる。
「本当に鍼で麻酔を?」
「できるわけない」
答えたのは待機組の後ろに立つジュニョンだ。
「僕も鍼治療は好きだけど無理だと思う。ジェゴルさんのために痛みをがまんしたんじゃないのか?」
「それはない」
とヒョン。
ウンジェも軽くジュニョンを睨みつける。
ジェゴルは仁王の顔になっている。
「回復手術の痛みに気力で耐えるのは無理だ。ですよね? ソン先生」
「もちろんです。気力で耐えられる痛みじゃない」
そう言ってスタッフの間を抜けていく。
ジュニョンは首を傾げた。
「あれれっ? 今、ソン先生は韓方医の肩を持ったぞ」
「悪いか?」とジェゴル。「もう鍼を打ってやらないからな」
「先輩、それはないだろ。公私は分けないと」
「しかし友達は選ばないとな」
「先輩、冗談きついですよ」
手術を終えたウンジェは息抜きでデッキへ出て来た。風が吹いている。大事な手術をやりおえたすがすがしさがそれに重なる。ウンジェはたっぷりと風と陽光を浴びた。
ヒョンは冷蔵庫からビールを二本取り出した。冷たさが心地いい。
デッキで手術の疲れをいやすウンジェのところへジェゴルがやってきた。ビールを握っている。
ウンジェに声をかける。
「受け取って」
ビールを握らせる。
「この礼はいつか必ずするよ」
「…」
「お疲れ」
ビールのプルリングを外して差し出す。ウンジェも黙ってプルリングを外す。
「無粋だな」
ジェゴルは自分の方から缶ビールをぶつける。
デッキに上がってきたヒョンはウンジェがジェゴルと一緒にいるのを見て立ち止まる。
「次は先生の番だ」
ジェゴルはウンジェの手を取り、自分の頭に持っていく。頭を撫でさせる。
「”お疲れキム先生。おかげで患者を救えたわ”とやるのをね」
缶ビールを二本持ってたちつくしているヒョンのそばに誰かが立った。黙ってビールを一本抜き取る。
ヨンウンだった。
「先を越された?」
「…」
「意外とお似合いね、あの2人」
ヒョンはヨンウンを睨みつける。
そのまま戻っていった。