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韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話⑬
韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話⑫
★★★
「何をしておる」ヤン氏は配下に命じた。「殺してでも捕らえるのだ」
ヤン氏の声に触発され、配下の者たちはいっせいにセファめがけて矢を放つ。銛を投げ入れる。
これ見よがしの笑いを向けてくるヤン氏にタムリョンはこみ上げる怒りを抑えきれなかった。
握った剣を両手で八双に持ちかえてヤン氏の船めがけて飛んだ。
タムリョンは怒りの鬼となって手向かう相手を切り倒していった。しかし乱闘となってタムリョンも背後からの一撃を頭に受けて動けなくなった。
次の攻撃を受けなかったのは都からの官吏が加勢してくれたからだった。立とうと必死のタムリョンの前で火の手があがった。それは一気に燃え広がった。
タムリョンは薄れそうな意識でヤン氏の動向を気にかけた。しかし視野にはいない。
ヤン氏は乱闘には加わらず、銛を握ってセファだけに狙いを絞っている。
セファを見つけて不気味な笑い声とともに銛を構えた。
この時タムリョンは背後でヤン氏が銛を打ち込もうとしてるのに気づいた。
瞬間、大きな声で叫んだ。
「セファー〜ッ!!
タムリョンの声は海中のセファの耳にも届いた。
セファが身を翻した時、ヤン氏の銛は海中めがけて投げ入れられていた。同時に船上にタムリョンの姿もなかった。
銛より先にタムリョンはセファのもとに辿り着いた。両腕で抱き上げた瞬間、海中を潜ってきた銛はタムリョンの背中を貫いた。
「手応えあったぞ!」
船上のヤン氏は喜悦を浮かべた。
タムリョンに抱かれて沈みながらセファは目を開ける。命果てていくタムリョンを見つめながら、セファは決心した。タムリョンの背中に刺さった銛で自分の身体をも貫いた。強く抱き合ったまま二人は海中深く沈んでいった。
★★★
セファは遠のいていく意識の中で、自分たちの若かった頃を思い出した。
「私たちは住む世界が違うけど、いつか死んだら別の世界へ行くのかしら…私たちは生まれ変わっても同じ姿でいられるかしら…?」
「…」
「お互いに気づかなきゃいけないけど」
タムリョンはセファを見た。小さく頷いた。
「そうなるさ。来世でも私とそなたはきっと変わらないさ」
「…覚えていられる?」
「…」
「この話を?」
「約束するよ。生まれ変わっても必ず巡り合い、そなたを愛して守り抜く。この思いは決して忘れない…」
タムリョンを抱きしめたセファの手腕は海中にぶら下がった。ヒスイの腕輪も手首から抜けて海深く沈んでいった。
韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話①
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ジュンジェの意識は現実に戻ってくる。
最後に父親の声を聞いた。身を起こした。
夢の生々しさにしばらく放心状態だった。ジュンジェは息を整える。
「守れなかった…」
涙が目元ににじみ出る。
「結局は、俺のせいで…」
タムリョンはセファが銛で自分の身体を貫いた事をも記憶して死んでいった。
その瞬間をも覚えていた。タムリョンは自分だったのだ。
「俺は―彼女を守れなかった」
涙にむせんで最後は泣き声だけになる。
「(この話を覚えていられる?)」
「(約束する。生まれ変わっても必ずめぐり逢い、そなたを愛し守り抜く。この思いは決して忘れない)俺は…あの日の約束も忘れてしまっていた。生まれ変わっても彼女は俺を愛し続けてくれていたのに、それをみんな忘れていたなんて…傷つけてばかりで…俺は何も―守れなかった」
ジュンジェは目頭を指で押さえた。声をもらして泣き続けた。
マ・デヨンはドアを開けた。半開きの状態で診察室を覗いた。男の背中が見える。
「彼は27歳でした。今の俺の年です。彼女をかばった彼に銛が突き刺さりました。彼女はその銛をつかみ―自らを突き刺しました」
「…」
「二人の最後です」
「悲しい結末だな」
「なぜ僕たちは…生まれ変わったのか…」
「それはつまり、目的を持って生まれ変わったのでは?」
「…」
「ある者は恋を成就させるために、またある者は欲望を満たすために」
「どうして悪縁まで前世から引きずる必要が?」
「君が前世から引きずる悪縁とは何だ? 君たちをつけ狙う者たちとの縁か?」
マ・デヨンもこのやりとりを聞いている。
「それとも君と一緒に生きる彼女との縁か?」
「…」
「君が彼女を愛さなければ…彼女が君を愛さなければ、この悲劇は避けられたはずだが」
「…」
「愛し合った結果、お互いを死に追いやったそのこと自体が悪縁なのでは?」
「…前世の結末が繰り返されるとおっしゃるのですか?」
「君が身を引き、彼女を元の場所へ帰せば―同じ結末は避けられるのではあるまいか…?」
「いいえ」
ジュンジェしばし考えて答えた。
「そうは思いません。これは運命を変えるいい機会です」
「…」
「僕が結末を変えて見せます」
ジュンジェの言葉をこっそり盗み聞いたマ・デヨンは薄笑いを浮かべた。
「(結末を変えて見せるだと…? 何をほざいてる!)」
マ・デヨンは床に投げ捨てた紙コップを踏み潰した。ドアを閉めて医院を後にした。
診療を終えたジュンジェは決意に満ちた表情で赤い車を自宅に向けた。
あの後医師は訊ねた。
「(君の力で運命を変えるというのか?)」
「(僕はおそらくそのために記憶を取り戻したんです。今度は、彼女を守ります)」
「必ず守る!」
アクセルペダルを強く踏み込んだ。