韓国ドラマ「イケメン（美男）ですね」第９話（８）
Korean drama "You're Handsome" Episode 9 (8)
テギョンとユ・ヘイのキスをミニョは離れた場所から切なそうにじっと見ている。
「カット」
監督の声が飛んだ。上機嫌だ。
「はっは、よかったぞ。最高だ。撮影はこれですべて終了だ」
テギョンはユ・ヘイに苛立ちの目を向けた。ユ・ヘイは平然としている。
「さすが、恋人同士だ。出てる雰囲気が違う。ほんと、よかったぞ」
「お疲れ様です」
ユ・ヘイはスタッフらに満足そうな笑顔を返した。テギョンを振り返った。
「驚いた？」
「・・・」
「おかげで早く終わったでしょ」
そう言って背を返した。手で頬を押さえながら歩き去った。
「おかげだと？」テギョンは顔をしかめた。「何なんだあいつは」
不快そうに口をぬぐった。
二人のキスシーンを見つめなければならなかったミニョの心は重かった。晴れなかった。苦痛だった。
ミニョは鼻の頭を指先で押し上げた。
何も見なかったことにしよう。嘘の呪いとは知らない。こうすれば少しなりと気持ちも紛れてくれるかもしれない。
この時、誰かが呼んだ。我に戻るとジェルミが近づいてきた。肩に腕を回してくる。
「よかったぞ、コ・ミナム」
「ありがとう」
「社長がお祝いしてくれるそうだ」
「・・・」
「行こう」
テギョンらのことが気になりながら、ミニョはジェルミに従った。
その様子を樹木のそばでシヌがうかがっている。彼もテギョンらの方をちょっと気にした。
待合のテーブルに戻ったユ・ヘイはワンに声をかけた。
「一緒に行きましょう」
「これが終わったらね」
ワンはミニョの衣服を整理していた。衣服のポケットから髪留め（ピン）が下に零れ落ちたのに彼女は気付かなかった。
ユ・ヘイはそれに気付いた。
「ミナムのだわ」
ワンはスタッフに言った。
「クリーニングして期限までに返却してね」
ユ・ヘイはこっそりピンを拾い上げた。手の中に包み込んだ。
「行きましょう」
ワンの言葉にユ・ヘイは何事もなかったように応じた。
「ええ」
この時、ミニョが走りこんできた。
「ワンさん、僕が着てた服はどこ？」
「どうしたの？」
ミニョは自分のバックの中などを探しだした。ひどく焦っている。
「どこ？ ないよ」
ワンに訊ねた。
「服のポケットに何かありませんでした？」
「なかったけど」
「ああ、どこにやったかな」
ミニョはそこらじゅうを探し始める。
ピンを隠し持っているユ・ヘイは同情の振りして言った。
「探し物見つかるといいわね。ワンさん、私、車で待ってるから」
「わかった」
ワンはその場に残って一緒に探しだす。
「何をなくしたの？ 早く行かないと」
「自分が探しますから、先に行ってください」
「何言ってるの」
ワンはミニョの腕をつかんだ。
「主人公のあなたが行かなくてどうするの。ほら」
ミニョはどうしても探したい。しかし、ワンはつかんだ腕を放さない」
「今度にしなさい。みんな待ってるんだから」
ワンはミニョを引っ張って歩き出した。
コ・ミナムの新曲（ＰＶ）完成とヒット祈願のパーティーがアン社長の音頭で始まった。
「さあ、コ・ミナムのヒットを願って乾杯！」
「乾杯！」
ほとんどが立ち上がって乾杯してるのに、主役のミニョは沈み込んで椅子に腰をおろしたままだ。
シヌはそんなミニョが気にかかって仕方がない。
他の者から声がかかった。
「ミナムも飲めよ」
シヌはテーブルをまわりこみ、ミニョのそばにやってきた。
「浮かない顔してるな。いったい、どうしたんだ？ 何かあった？」
「大切な物をなくしたんです」
「そうか・・・これが終わったら探しに行こう。一緒に探してやる」
ミニョの表情は晴れやかになった。
「本当ですか？ 兄貴、ありがとうございます」
二人の仲むつまじい姿がテギョンの目に飛び込んだきた。
（続く）
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