「偶然という雨」
その日はシクシクした雨が降っていた。
何故か今までもずっとこんな雨が降っていた気がした。
ツイてない、仕事の日に雨とは。
しかも1日に2件・・・・・もう潮時かもしれない。
女は孤独にそう思った。
別けられない孤独、知らぬ間にそうなっただけの話かもしれない。
果たして孤独でない人間なんて居るのだろうか。
しばらくして今更雨を避ける理由も無いなと女は思った。
1人目の男は簡単に事を終えた。
胸に一発。
男は理由も無く状況を受け入れるバカな自信家だ。
その男は死の間際さえ自信家だった。
本当にそう言い、そうなると勝手に考え
‘‘‘‘‘‘ ‘‘‘‘
解ってもらう方にばかり熱意を注いでいる。
ドアに向かってその男だった男を跨いだ時、
女はまた1つ何かを落とした気がした。
絶望を?希望を?もしくはそこにある現実を?
女は何か解らないまま、再び雨の中を前に歩いた。
「棺桶の自分から観たら、今は通過点」
その諦めとも前向きとも言える事を誰かが言っていたのを思い出した。
しかし女にとって、自分の人生より不思議と他人の人生の方が
より現実にこの手に触れられるような感覚がした。
横顔だけはハッキリと自分には観えてるのに。。。。
煙草に火をつけ、2人目の標的を、止むはずの無い雨の中で確認した。
男だ。 背が高い。 何をしでかしたは知らない、
善人か悪人かも関係なかった。ただ事を済ますだけの話だった。
生を感じ奪うはずが生を少しずつ落としていく自分を感じるだけの話だった。
ふと、人の気配がなくなり女は微笑した。
色んな状況は自分が、本人が、神が与えるものではない。ただそうなるのだ。
そっと男に近づき消音器のついたそれの指を絞ろうとした瞬間、
男は突然近くにあった自販機に小銭を入れ始めた。
固まった女は男の顔を始めて現実に見据えた。
男は少しだけ驚いた素振りを見せ、女の手にあるそれを確認した。
「君の仕事は解っている。・・・まさか女だったとは。
急にコーヒーを飲みたくなってね。」 男は笑った。
「男だと勝手に思ってたんだ、この種の仕事をする人間は。
はっきり言って油断したよ。全くもって打つ手無しだな。」
そう言って手元の缶の蓋を開け、飲み始めた。
女は更に近づいた。雨が2人を近づけた。
「煙草持ってないか?」
女は男を見つめ、そっと煙草を差出し火をつけてやった。
「お互い消え行く人種だな・・・・煙草の事だが。」男は煙を吐き出し言った。
「さぁ仕事を済ませ、恨みはしないよ。・・不思議と穏やかな気分だ。
正直、まさか今日自分が棺桶に入るとは考えもしなかったよ。
解ってたらコーヒーじゃなく酒を飲んでる。でもそういうもんだろう!?、
終わりを観て歩いてる訳じゃ無い」
奥深く煙を吸い込み今度はゆっくりとはきだした。
「仕方が無いんだよ君も俺も。それでも人生は続くのさ。」
’’’’’’’’
空を見上げ言った「明日も雨かも知れないな」
飲み終えた缶をゴミ箱に投げ入れ、男は女を見た。
傘が互いを見つめ合った。
・・・・・・・・・微かな異音と共に男は静かに崩れ、
歩き疲れたかの様にその場に沈んだ。
女は雨を感じ、自分を感じた。
その男を跨ぐ事が出来ないと悟った。
もう如何なるモノも事も跨げないと悟った。
女は傘を畳み、倒れた男の胸に顔を埋めた。
まだある暖かさを、孤独でない孤独を、本当にあったのか解らない煙を、感じ取った。
「それでも人生は続く」
女は声に出して呟いた。
雨で濡れた男の顔を覗き、男の言った通り明日は雨なんだろうと笑った。
この先も雨は降るんだろう、
人生は続くんだろう、
そしてこれは前向きなんだろうと。
女はそっと微笑み、自分のこめかみに向かって引き金を引いた。
ある人に捧げる
何を求めるかはその人の指標である
しかし誰であってもその指標の行き着く先は解らない
解らないモノを結論にし、そこから自分を慰めるのは
愚かより悪い知ったかぶりの愚者がする事である。
東森 英彦
その日はシクシクした雨が降っていた。
何故か今までもずっとこんな雨が降っていた気がした。
ツイてない、仕事の日に雨とは。
しかも1日に2件・・・・・もう潮時かもしれない。
女は孤独にそう思った。
別けられない孤独、知らぬ間にそうなっただけの話かもしれない。
果たして孤独でない人間なんて居るのだろうか。
しばらくして今更雨を避ける理由も無いなと女は思った。
1人目の男は簡単に事を終えた。
胸に一発。
男は理由も無く状況を受け入れるバカな自信家だ。
その男は死の間際さえ自信家だった。
本当にそう言い、そうなると勝手に考え
‘‘‘‘‘‘ ‘‘‘‘
解ってもらう方にばかり熱意を注いでいる。
ドアに向かってその男だった男を跨いだ時、
女はまた1つ何かを落とした気がした。
絶望を?希望を?もしくはそこにある現実を?
女は何か解らないまま、再び雨の中を前に歩いた。
「棺桶の自分から観たら、今は通過点」
その諦めとも前向きとも言える事を誰かが言っていたのを思い出した。
しかし女にとって、自分の人生より不思議と他人の人生の方が
より現実にこの手に触れられるような感覚がした。
横顔だけはハッキリと自分には観えてるのに。。。。
煙草に火をつけ、2人目の標的を、止むはずの無い雨の中で確認した。
男だ。 背が高い。 何をしでかしたは知らない、
善人か悪人かも関係なかった。ただ事を済ますだけの話だった。
生を感じ奪うはずが生を少しずつ落としていく自分を感じるだけの話だった。
ふと、人の気配がなくなり女は微笑した。
色んな状況は自分が、本人が、神が与えるものではない。ただそうなるのだ。
そっと男に近づき消音器のついたそれの指を絞ろうとした瞬間、
男は突然近くにあった自販機に小銭を入れ始めた。
固まった女は男の顔を始めて現実に見据えた。
男は少しだけ驚いた素振りを見せ、女の手にあるそれを確認した。
「君の仕事は解っている。・・・まさか女だったとは。
急にコーヒーを飲みたくなってね。」 男は笑った。
「男だと勝手に思ってたんだ、この種の仕事をする人間は。
はっきり言って油断したよ。全くもって打つ手無しだな。」
そう言って手元の缶の蓋を開け、飲み始めた。
女は更に近づいた。雨が2人を近づけた。
「煙草持ってないか?」
女は男を見つめ、そっと煙草を差出し火をつけてやった。
「お互い消え行く人種だな・・・・煙草の事だが。」男は煙を吐き出し言った。
「さぁ仕事を済ませ、恨みはしないよ。・・不思議と穏やかな気分だ。
正直、まさか今日自分が棺桶に入るとは考えもしなかったよ。
解ってたらコーヒーじゃなく酒を飲んでる。でもそういうもんだろう!?、
終わりを観て歩いてる訳じゃ無い」
奥深く煙を吸い込み今度はゆっくりとはきだした。
「仕方が無いんだよ君も俺も。それでも人生は続くのさ。」
’’’’’’’’
空を見上げ言った「明日も雨かも知れないな」
飲み終えた缶をゴミ箱に投げ入れ、男は女を見た。
傘が互いを見つめ合った。
・・・・・・・・・微かな異音と共に男は静かに崩れ、
歩き疲れたかの様にその場に沈んだ。
女は雨を感じ、自分を感じた。
その男を跨ぐ事が出来ないと悟った。
もう如何なるモノも事も跨げないと悟った。
女は傘を畳み、倒れた男の胸に顔を埋めた。
まだある暖かさを、孤独でない孤独を、本当にあったのか解らない煙を、感じ取った。
「それでも人生は続く」
女は声に出して呟いた。
雨で濡れた男の顔を覗き、男の言った通り明日は雨なんだろうと笑った。
この先も雨は降るんだろう、
人生は続くんだろう、
そしてこれは前向きなんだろうと。
女はそっと微笑み、自分のこめかみに向かって引き金を引いた。
ある人に捧げる
何を求めるかはその人の指標である
しかし誰であってもその指標の行き着く先は解らない
解らないモノを結論にし、そこから自分を慰めるのは
愚かより悪い知ったかぶりの愚者がする事である。
東森 英彦