東森英彦の反逆者日記

思い付きな日々の追憶

「万能」

2023-09-12 23:08:00 | 相棒との会話シリーズ
雑居ビルの裏手で待っている。
今回の相手はこのビルに頻繁に出入りしてる事は分かってたので、下見に来てるのだ。数日間見張ってると、何回か標的がビルに寄るのを見かけた。
ところがその相手は健康志向なの?!
必ずエレベーターを使わずに階段で昇り降りしてる。
何処の階に行ってるのか分かりづらい。
何だよーっ。文明の利器使えよーっ。
階段ってさ。何の修行なのさ!!
こりゃダメだ、別の場所でやるかーっと思った所に相手が出て来た。とりあえず尾行する。職場のビルに着く。
あの雑居ビルは何の為に行ってるんだろうか?! 怪しい事でもしてんだろ、殺してくれって頼まれるくらいだし。

さりげなく会社が入ってるビルのエントランスまで見届ける。まさかな?!と興味に負け、案内板を見る振りして相手を確認してやると、、、、、嘘だろ!!
コイツ何目指してんの!
会社でも階段を使ってる。
何だ?!あれか?用心してんのか??

いやコイツは普通の会社員だと資料にあったし、狙われてるなんて思ってもないだろう。
普通ならエライ!と褒めてやりたい事なんだが。殺す相手とすれば健康バカ!!と言ってやりたい。
は〜どうすっかなぁ。
今日は止めとこう、とマンションを後にする。
後日、また雑居ビルに来やがったので、俺は裏の階段に座って煙草を吸いながら出るのを待つ。中の階段は部外者が往来するには目立つし。何か良い方法ないかなぁー。

プカプカしてると上から人が降りてきた。
その相手だった。
俺はそいつを突き落としてから、止めを刺した。 うん、何かあれだ。。。うん。

事務所に戻る、ふと階段で昇ってみようと
思ってやってみた。
いや6階はしんどいなぁ。すげ〜なエレベーターって。
部屋に戻ると女はカップの片付けをしてるところだった。

「お疲れ様、今日はどうだったの?!」

無事終わったよ。

「そう、さすがね。ご苦労様」

といい出掛ける支度をする。
あれ?もう帰るのか?

「お茶が切れちゃって。たまには違う名柄試そうかしら。」

いやいつも違う種類飲んでるだろ!!
じぁ俺も行こうかな。
俺の口に合うのも欲しい。

「そ!? じぁ行きましょう」

とドアを開けエレベーターのボタンを押す。

「なーにー? ジジくさいわね?!降りるくらい階段でいいじゃない。」

いや昇って来たんですけど階段で。。。

「健康は足腰からよ。」

と言って女は階段を降りた。

階段は万能じゃねぇからな!
エレベーターに謝れ!!
結局俺は女の後に続いた。





「初心」

2023-09-07 01:09:40 | 相棒との会話シリーズ
横たわっている男を見下ろして、俺は今色々と考えてる。
首の骨を折ったんだが、依頼の内容は殺されたと明らかに解る様にとの事。
困ったな。
外傷あるわけでもないしな。
いやこんな簡単に済むと思ってなかったし。
相手は狙われてると知ってるって聞いてたんだが?!
警戒心の薄い事!!
俺の腕が良いのか?
いやいや喜んでる場合じゃない。
どーしょ?
とりあえずあれだ、今から顔でも殴っとくか。死後って痣つかないんだっけ?手を後ろ手に縛っとくとか、それだと殺されたと解るだろ流石に。

俺はあーだこーだ寝転がってる男をそれなりに演出した。
よし、コイツは捕まって猿轡されて、首の骨を折られた!
うんこれで、、、いいと思う!!
はー疲れた。


女にその事を言うと
「それはお疲れ様。でも別に何もしなくても依頼内容は果たしてたんじゃない?
階段の下とかじゃない部屋の玄関で首が折れるってないでしょ?!」

何その俺のプロ努力否定。
律儀に依頼人の期待に沿う様致しましたのよ!!

「はいはい偉いし、プロよね。
でも何か主婦みたい。」
女は欠伸してお茶を飲んだ。

何で主婦なの?
その茶の色ちょっと黄色過ぎないか?

「だってチラシに載ってる安い品物を買いに行ったのに、安いからって他の物を買って結果的に余計な買い物しちゃった、みたいな!?」

.....少しわかるけど、その例えは嫌だ!!


「取り柄」

2023-09-03 16:12:57 | 相棒との会話シリーズ
女がスムーズにハンドルを切り、駅のロータリに向かう。

今日の彼女は「ピックマン」だ。女だけど。

なかなかに絵になるなと俺は思いエアコンの送風口を左に除けた。



「聞いてるの!? 今回は事故に見せかける事。その分頂いてるんだからね。」



わかったわかったギャラは良いに越したことはないしな。

不慮の事故に合ってもらいましょ。

俺は流れる景色と人々を眺めながらふと思った。

中肉中背、顔も可もなく不可もない、目立った傷や身体的特徴もない。

、、、、、なぁ俺ってどうなの!?



「何よその質問?」



いや人混み眺めて思ったんだよ、これに紛れたり自分の雰囲気変えてみたり

これは技術だよな!? この仕事には大切な事だよな!?

でも目立つ奴は目立つし、光ってる奴は光ってる。

俺って人的に面白くない?



「何言ってるの、その目立たない風貌じゃ無ければこんな仕事で生きてないでしょ。

それはそれで才能よっ。」



うーんそれはそうなんだろうけどさぁ。普通が才能かぁ。



「普通の何がいけないの? 才能って誰が決めるのよ?」

そうなんだろうな・・・多分。

車がゆっくり停車した。



「人は自分が特別だと思ってるものよ。それに少なくともあなたがやってる事は

誰もが出来る事じゃないんじゃない!?  ほら、着いたわよ。」



へ~いとドアを開け降り立つ。

歩道の段差でつまずいた。振り返ると女が笑って手を振っている。

くそ。格好悪い普通な男だ。せめて普通の最上級を目指そう。

俺は事故に向かって歩き出した。


「無駄」

2023-08-31 10:41:00 | 相棒との会話シリーズ
あれ?!お前電子タバコに替えたの?!
何?!面倒くさくないか?
充電器持って、カートリッジ持ってってさ。
「面倒臭いからは何も生まれない。ただの気分よ」

ただよ気分ねぇ〜、
いやだってお前何より、いざとなったら火が必要な時ライターあるって重要だぞ?!
湯もわかせねぇし肉焼けねぇぞ?! 

女は冷めた目でこっちを見ながら、吸い終わったカートリッジをゴミ箱に投げ入れる。
「何よそのサバイバル状況?
それより現場に吸い殻なんて残してないわよね?!」

こらこら当り前だろ!そんな自爆するかよ。でもあれだよな。何で普通にポイ捨てするのかな?!こーやってコレに入れるだけなのに。俺はケツのポケットから携帯灰皿を見せた。
モラル?!いやいやモラルなんて関係ないだろ、こんな仕事してんだし。
わざわざ道を汚す必要無いって事。
返り血浴びる様な殺し方するか?!
しないだろ?わざわざ。

「そーね、面倒臭いからは何も生まれない」
女はそー言って俺の煙草から1本取り出し、俺に顎をしゃくる。
王かお前は!!
その威圧に負け火を付けてやると、ゆっくりと煙を吐き出し俺の携帯灰皿を見やる。

「クマさんの携帯灰皿なんてどこで売ってるのよ?」
女は少し楽しそうにクマさんを手に取って
「これを持ち歩くの面倒くさくない?!」
吸った俺の煙草を俺のクマさんに飲み込ませた。
「さ、依頼の話よ」

....なるほど。
はいはい、お仕事ね。



「スタイル」

2011-10-15 01:12:03 | 相棒との会話シリーズ
ぶぁ、何だよこれ。スーってする茶かよ! まるで近所の悪ガキを見る様な面持ちで、女は振り返った。「ジャスミンティーよ、それ。それよりちゃんと説明しなさい。」 説明?何をだよ。ちゃんと仕事してきたぜ、標的も間違いなくアイツだったし。「それは解ってるわよ。私が言いたいのは、今回の依頼とは別に何故もう1つの死体が出来たって事」 あ、それか。簡単な話なんだよ、ソイツは死んで当然だから。いつもの通り指定の場所に早めに行ってさ、俺なりに様子伺ってたんだ。下調べっていうか…以外だろ!?俺にも神経質な所あるんだ。罠って場合もあるし。そー考えるとこの商売、避妊せずやっちまう様な感じだな!? 依頼人や標的の事余り知らずに危険な事するんだからよ。 「いいから、せ・つ・め・い!」 あ~はいはい、時間になると標的が情報通り出て来たんだ。罠も何にもなく。そして俺は事を成し得ようとしたらさ、何と標的が通り魔的追い剥ぎに逢ったんだよ。「ふ~ん…大体話見えてきたわね、それで?」それで!? それでも何も、もう俺は道具持って出ちゃってるし、やるしかないよな!?とりあえず、そ
の追い剥ぎ野郎を始末して、標的をきちんと始末したよ。結果的に今回の依頼内容より1人増えちゃったけど、あんな野郎は世の中の為には居なくなって良かったんじゃねぇか!? 「…そうね、私少し解らない所あるんだけど?」 スーってする茶を啜りながら女は言う。「何で先に、可哀想な追い剥ぎをやったの?仕事的には標的が先なんじゃないのかしら?」 だってお前、いきなり見ず知らずの男が、見ず知らずの男に追い剥ぎされてるんだぞ!?そんな事許されてたまるかよ! だから俺は引導を渡してだな…女は解った解ったと手を振り「わざわざ助けてあげてから始末したのね。お優しい事ね」 そんなんじゃねぇよ。何か、俺は仕事で手を染めてるけど、それは依頼内容にある標的だけ。あの野郎は誰でも良かったんじゃねぇか!?『よし、あと3人目の奴を襲おう!』っとか。ふざけんじゃねぇよ、そんな行為は俺のプロ意識が許せねぇんだよ。「ふ~ん、ま、どっちが先だなんて別にいいわよね。ちゃんとアンタは仕事をしてきた。ご苦労様」女は立ち上り言った。「ジャスミンティーが駄目なら、違うお茶入れてあげよっか?
」     …それどんなやつ!?
「ローズヒップよ」 あ…う~ん…やっぱやめとく。意地の悪い顔をして女は笑った。