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オコゼの味(その1)

ぼーずが大学5年生の時、取るべき科目は落とし続けた一般教養の英語とゼミだけという緩やかな、というより気の抜けたカリキュラムであった。クラブも公式戦には出られないOB扱いだった為、時間はたっぷりとあり、山とスキーの専門店でバイトをしていた。

平日の昼過ぎにふらっりと立ち寄る常連さんがいた。いつも板前用の白衣に下駄履き。登山用具を見ては主人と山の話をしていた。『彼なぁ、安さんという有名な寿司屋の息子や』その後、主人にこの寿司屋に連れて行ってもらった。えらく高そうな店で少々ビビりながらも一口食べて・・・メッチャ美味い!!

それまで、寿司は死んだ魚?でしか食ったことがなかったのだが、活け魚の美味さを初めて知った。歯ごたえ、かすかな甘み、噛み締めると酢飯と身が混然一体となり、食べたことの無い美味さだった。顔見知りと言う事でかなり安くしてくれているとのことだったが、それでも当時の学生が気軽に行ける額ではなかった。

その年、我がラグビー部は3部Cリーグで優勝はしたものの、入れ替え戦は予選で敗退・・・言い訳になるが、2部との入れ替え戦は予選が激戦区で、本戦は毎年3部総合優勝校が昇格していた・・・した後、12月に打ち上げコンパを開催した。毎年、4年生が1~2年を2次会に連れていくのが決まりだったが、その年は少々思う所があったのだ。

というのもシーズン中は1年生が大活躍してくれ、優勝の大きな力となってくれた。中でもスタンドオフのW橋は高校3年冬まで県立の強豪校で現役として活躍、受験が間に合わず1浪して入学してきた男だった。Wの母校は受験にも強く、彼の同級生数人が現役で合格し、未経験者としてラグビー部に入っていた。

かつての同級生数人は部の先輩であるが、実際にプレーすればW橋の方が断然上手い。ラグビー部の上下関係は武道系などに比べれば、はるかに緩やかであるが、やはりやり難かったと思う。打ち上げはW橋をちょいといい所に連れて行ってやろう。そう思っていた。

コンパが終わり、自然にいくつかのグループに別れて散り出した。『W橋、付いて来い』最後尾になった時に声をかけ、そっと安っさんの暖簾をくぐった。すごいとこですねと言う彼に『今シーズンよう頑張ってくれたからな。好きなもん食べてええぞ』と鷹揚に構えるぼーず。

突然、扉が開き『ラッキーッ』と言いながら見知った顔が入って来た。W橋の元同級生達2年部員の4名だった。待たんかい!!ここの勘定6人分も持ち合わせ無いぞ。絶体絶命の危機(笑)。鷹揚さは跡形も無く崩れ去った。

ここに続く




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