後から来た奴等は隣に座るやビールを注文。あまつさえ、お調子者のT島に至っては『大将、端から握ってもらおか』と品書きを指差すではないか。ボケ、高い方から指すなっちゅうねん。ぼーずの心の声が届かない4人は勝手なもんを頼みだした。
こうなりゃヤケだ。何でも食えと度胸を決めた。まぁ若大将とは知らん仲でもない。最悪は学生証をカタにでもして帰るか。取り敢えず痛手を最小限に食い止めるため、ひたすらガリを齧り、茶をすするぼーずだったが、遠慮なしの後組4人の食欲は止まる所を知らない。
その内に若大将が気付いたようで『兄ちゃん、どないしたんや。今日は余り食べへんけど』二次会ですよってと誤魔化し、イカ、卵ばかりを食べるぼーずに『これ、ワシの奢りや』と色々握ってくれるではないか。透き通ったヒスイのようなサバや脂の乗ったブリ、淡白でコリコリと身の締まった白身とどれもが絶品だった。
とりわけ白身はそれまで食べたことがなかったので、なんですかこれと尋ねた。『オコゼいう魚や』へー、あれ食えるんだ。バイト先御主人の弟さんが海で、海藻に潜んでいたこいつの小さい奴に刺されてどえらい目にあったと話していたのを思い出した。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。覚悟を決め勘定を頼んだ。『1万2千円』え、そんなんでええの?!あの時程ほっとしたことはない。遅いとは知りつつも店を出てから、かのバカタレ4人組に遠慮という言葉を教える(笑)。
その翌年の12月。初めて出た冬のボーナスを持ってオーダーしたスキーを確認しに元バイト先に出向いた。200cmのヤマハ・パラマウント・カスタムGS。懐が温かで気が大きくなったぼーずは1年ぶりの安っさんに飛び込んだ。あれ、若大将がいない。『今日は所用で外出なんや』と若大将の親父さんが店に出ていた。
親父さんのお薦めを次々に平らげ、満腹状態で勘定を頼む。『はい、9千5百円ね』1年後再び若大将の心遣いが身に凍みた。やっぱり6人であの値段は無い(笑)。それから何回かここを訪れたが、震災後に場所が判らなくなったまま今に至った。
昨日、たまたまハンズの裏口から出て駅に向かう途中、大きな水槽に安っさんと染め抜かれた暖簾を発見し、思わず入る。カウンターの中には懐かしい若大将の顔があった。僕のこと覚えてますぅ?と尋ねるぼーずに『覚えとうよ』迷わず水槽にいたオコゼを造りにしてもらう。
うわ、憎たらしい顔(笑)。憐憫の情を抱かずに活け造りが食べられる貴重な魚だと実感する。しかし、この顔どこかで見た気が・・そーだ、東映のゴジラ(笑)。↓ 皆さんはどう思われるだろうか。そうそう、味は最高だったし、残ったアラの味噌汁は絶品だった。え、勘定?いーじゃないっすか。美味かったんだから(笑)。
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