お前が試験を受けて会社に入ったのか?とお疑いの向きもあろうと思う。そう、試験はあったが、埼玉の面接会場で言われたのは『よく神戸みたいに遠い所から受けに来てくれました。』北大や琉球大なら無条件で通ってたんじゃないか(笑)。
巷では正社員になる人が減っていると言う。正社員であるかないかはライフスタイルの選択なので、本来は大した事ではないはずだ。問題なのはなりたいのになれない人が多い、更に言えば正社員と契約社員の格差が広がっていると言う事だろう。
ぼーずが入社した78年、新入社員全員が埼玉にある工場で実習をさせられた。ここには期間工と呼ばれる、今で言う契約社員が多く働いていたが、彼らの条件は悪くなかった。大卒定期入社の月給が10万前後の頃、もちろん時間外手当てを含んでだが、彼等の月給は2~3倍程あった。しかも寮費、休日分の食費までが只。作業着も支給なので給与全額を溜める事も可能だったのだ。
4月末、基準労働日を満たさないため、雀の涙となった給与明細を見ながら、『この際、会社辞めて期間工になるか』と同期のアホ達とぼやき合ったのを覚えている。業務時間こそ長いが・・それも任意だが・・内容はほとんど変わらず、鎌田慧さんの『自動車絶望工場』ってのはどこの話と言う位、期間工の方が圧倒的に高い給与を取っていたのだから、幾分かは本気が混じっていたといってもいい。
気になったので今年の契約条件をネットで調べてみた。会社負担部分は変わらないものの、モデル賃金が23~27万とある。大卒初任給21万前後と比較して昔ほどのメリットは感じられない。おそらく供給が需要を大幅に上回っているのだろう。でなければこちらの相場も同じように上がるはずだ。
契約社員には季節工と期間工の二通りが存在した。季節工は農閑期のお百姓さん達を指し、中には同工場歴10数年のベテランもいて、仕事を教えてくれる人もいた。また期間工の中には山に登る費用、店を持つ資金という夢の実現の為に、短期で稼ぎたいと言う人たちも多かった。中には、職場が気に入りそのまま正社員で居付いた人もいる。それぞれが自分流の生き方を持っていたのだ。
今、若い人が『夢なんか持てない』と言うのを聞くのは哀しいことだと思う。近年の刹那的な凶悪事件の裏にはこの『夢のなさ』『夢を描けない』という問題が潜んでいるような気がしてならないのだ。
※自動車絶望工場:筆者自らが某日本最大の自動車会社で契約社員として働いた経験をもとに書いたルポルタージュ。名著なんだけど、自動車会社の人間が読むとちょっと辛くなる。
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