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電力危機の真実⑨エネルギー安全保障 LNG備蓄2週間 byiza産経デジタル

2014-06-10 16:10:55 | (英氏)原発・エネルギー問題
 日本が抱えるエネルギー調達をめぐる脆弱(ぜいじゃく)性が世界にさらされている。40年前の石油危機を教訓に脱石油などのエネルギー戦略を展開してきたが、化石燃料への依存度は危機前の水準に逆戻りした。国内すべての原発の運転が停止し、火力発電所のフル稼働が続く中で、中東地域など海外で有事が起きれば、輸入燃料が途絶する事態もありうる。シリーズ最後となる今回は、原発の稼働停止で根底から揺さぶられているエネルギー安全保障を取り上げる。

原油の85%経由 LNG備蓄わずか2週間


ベルシャ湾を警備する米海軍第5艦隊(米海軍ホームページから)

 「ホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば、日本にとって死活的な利益が損なわれる。わが国の船舶が危険に遭う可能性が高い中で、自衛隊が機雷掃海できなくていいのか」
 先月末、衆参両院で開かれた安全保障に関する集中審議。安倍晋三首相は憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使し、シーレーン(海上交通路)防衛の一環として、停戦が実現する前でも自衛隊が海外で掃海にあたることができるようにする必要性を強調した。
 昨年5月には米海軍第5艦隊がペルシャ湾で、日英仏など40カ国と共同で大規模な掃海訓練を実施した。この訓練では機雷を除去する掃海だけでなく、不審船への攻撃なども想定し、機雷によるホルムズ海峡の封鎖を示唆したイランを強く牽制(けんせい)するものとなった。
 実際にホルムズ海峡が封鎖されるような国際的な紛争が起きた場合、日本は先進国の中で最も深刻な打撃を受けるとみられている。発電比率の3割を占めていた原発が昨年9月からすべての運転を停止。現在は火力発電比率が過去最高の9割にまで高まっており、そのための燃料輸入が急増しているからだ。
 日本は原油の85%、液化天然ガス(LNG)の3割について、ホルムズ海峡を経由して輸入している。そうした中でエネルギーの大動脈が封鎖されれば、作家の堺屋太一氏がベストセラー小説「油断!」で描いた悲惨な日本の姿が現実のものになりかねない。
 日本のエネルギー安全保障は、第1次石油危機を受けて具体的な検討が始まった。安い原油で高度成長を謳歌(おうか)していたが、1973(昭和48)年にイスラエルとアラブ諸国の軍事衝突を契機に発生した石油危機で原油価格は一時、戦争前の4倍に急騰。当時、原油の8割を中東から輸入していた日本では「石油の供給が止まるのでは」との不安が広がった。
 これに伴い電力使用が制限され、飲食店などは深夜営業を中止。トイレットペーパーが店頭から消えるなどの混乱が起こり、狂乱物価に襲われて高度成長は終焉(しゅうえん)を迎えた。
 この苦い経験を教訓にして、「脱中東」「脱石油」を合言葉にしたエネルギー戦略が推進されてきた。
 脱石油の柱が原発だった。石油危機の翌年には電源立地法が制定され、全国で原発建設が進んだ。これによって電力業界は火力発電の比率を段階的に引き下げた。火力発電の燃料も、燃焼効率が高く温室効果ガスの排出も少ないLNGを増やしていった。
 石油危機から40年かけて確立を目指した日本のエネルギー安全保障だが、東日本大震災に伴う原発事故で元に戻った格好だ。とくに化石燃料に対する依存度は石油危機時を上回る水準となった。危機後に始まった原油の民間備蓄は半年分に達しているが、火力発電の7割を占めるLNGは貯蔵が難しく、2週間分の備蓄しかない。
 「ホルムズ海峡は日本のエネルギー供給にとって重要であると認識している。もし輸入ができなくなった場合、過去の石油危機の対応などを踏まえて、国民に対する省エネ要請など適切な需要抑制策を講じる」
 これは2年前、ホルムズ海峡が封鎖された場合の政府の対応方針を示した政府答弁の内容だ。海峡封鎖で燃料輸入が途絶する事態になっても、石油危機時に実施した省エネ程度しか打つ手がないことを認めたものといえる。
 日本はいま、平時でも電力需給が逼迫(ひっぱく)している状態にある。原発の再稼働が遅れる中で、今年は「原発ゼロ」で迎える初めての夏になりそうだ。そうしたときに万一、有事が起きればどうなるのか。政府は暮らしと経済を守るためにも、エネルギー安全保障から目を背けてはならない。

「原発停止」で高まる海外依存

 その国が必要とするエネルギーを自国でどれだけ賄えるかを示す1次エネルギー自給率をみると、現在の日本のエネルギー安全保障が極めて脆弱であることが分かる。
 OECD諸国の1次エネルギー自給率の比較によると、日本の自給率は、2012(平成24年)でわずか6%。
 「先進国クラブ」とも呼ばれる経済協力開発機構(OECD)に加盟する世界34カ国中、2番目に低い水準となっている。
 急落した最大の理由は、原発の稼働停止だ。国際エネルギー機関(IEA)では、石炭や原油、天然ガスなど自然界に存在するエネルギー源を1次エネルギーと分類し、原子力もこれに含まれると定義している。日本は、東日本大震災前の10年には原発の15%、再生可能エネルギー2・7%などを合わせて19・9%の自給率を確保していたが、11年に11・2%(原発5・8%)、12年は6%(同0・6%)に落ち込んだ。
 経済産業省は「日本は海外の資源に大きく依存しており、エネルギー供給に根本的な脆弱性を抱えている」と指摘する。
 OECD諸国で自給率が最も高いのが、北海油田を抱えるノルウェーで677%を確保。次いで豪州の235%、カナダの166%などと資源国が上位を占める。
 先進7カ国(G7)では自国で原油やガスを産出する米国が85%、海外に多くの油田権益を持つ英国が61%、原発比率が高いフランスが53%などとなっている。

米国産シェールガス供給合意 大幅な工事遅れ・・・輸入にはパナマ運河の壁


中部電力と大阪ガスが参画するシェールガスの輸出基地=テキサス州フリーポート(中部電力提供)

 日本のエネルギー調達をめぐり、期待が高まっているのが米国産のシェールガスだ。日米間では2017(平成29)年から米国のシェールガスを日本に供給することで合意し、前倒し案も浮上している。戦略物資の天然ガスを最大の同盟国・米国から調達できるようになり、わが国のエネルギー戦略上も大きな意味を持つ。
 しかし、米国産ガスの輸入にあたって今後、最大のネックになると懸念されているのがパナマ運河の拡張工事の遅れだ。太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河を通ることができなければ、輸送日数が最大で2倍以上も余分にかかる。輸送料金も最短ルートに比べて7割程度高くなるという。
 米国ではシェールガスの輸出基地は東海岸に集中しており、パナマ運河を経由すれば日本までの輸送日数は20日程度。だが、運河は幅32メートルまでの船舶しか航行できず、40メートル以上ある現在の標準的な液化天然ガス(LNG)運搬船は通れない。
 このため、パナマ政府は07年から海外援助などを受けて拡張工事を進めており、当初は運河開通100周年にあたる今年中に完了する計画だった。だが、作業員のストなどが響いて工事は大幅に遅れており、完成時期は早くても16年春になるという。
 日本政府もパナマ政府に資金援助してきた。政府の経協インフラ戦略会議(議長・菅義偉(すがよしひで)官房長官)では、早期の工事完了を促すためにパナマ政府に追加支援することを決定し、通航料金の抑制も求める方針だ。
 一方、同じ太平洋ルートで日本が輸入を予定している計画には、カナダのLNGプラントもある。だが、このLNG輸入計画では、天然ガスを液化する設備だけでなく、港までのパイプライン工事なども必要となる。すでに液化設備などが整備されている米国の輸出基地と比べ余分な費用がかかるため、その具体化を懸念する声も上がっている。
 こうした海外からの燃料調達は、電力やガス会社が中心となっている。ただ、原発停止に伴う深刻な電力不足の中で「資源国から足元を見られ、割高な価格で買わされている」とも指摘されている。原発の長期にわたる稼働停止は、日本の対外的な価格交渉力にも暗い影を落としている。

ホルムズ海峡

 ペルシャ湾とアラビア海を結ぶ海峡。北はイラン、南はオマーンの飛び地に挟まれた場所に位置し、世界中で海上輸送される原油の4割が通過する。世界最高ランクのチョークポイント(重要な交通路)とされ、日本が輸入する原油の85%は、この海峡を航行するタンカーで運んでいる。
 海峡の最も狭い部分は幅33キロ。水深も最大100メートルと浅く、船舶の航行レーンは出船用と入船用の2つしかない。イランの核開発疑惑とそれに対するイスラエルの強硬姿勢など、中東地域の政治的な緊張は今も続いている。このため、米海軍はペルシャ湾岸のバーレーンに第5艦隊を常駐させ、海峡の警備などにあたっている。

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