父が怒り心頭の時、幼い時分は怖かったが、ちょっと大きくなってからは、いささかその大人気なさに呆れていた。
その父が、私たち子どもが幼い時から、いつも言っていた言葉。
「返事より、先に立て」
「食べたあと、損したあと、糞をしたあとに、いつまでもいるな」
「心はテレビじゃない。言葉で言え」
「新聞は角と角とピタリと合わせて、折りたため」
「アル中と女遊びと賭け事好きは、治らない」(父は男の人を見る重要視点として娘たちに暗示にかけるが如く、こう言い続けた。これは役に立ったかもね。)
私の母は、整理整頓、掃除が異常に好きだった。
その母の言葉。
「手から雑巾を離してはならない」
「食卓に座るとき、台所に洗い物を残してはならない」
「外出するとき、洗濯物を下着一枚、手ぬぐい一枚、残してはならない」
「敷居、畳のへり、座布団を、踏んではならない」
「文字が書いてあるものを、跨いではならない。
それで、父が私を評して言ったことば。
「お前は、背中に背負ったおにぎりを下ろすのが面倒くさいと言って、餓死するようなやつだ」
そして、こうも言われた。
「お前は、海に大木を流して、流木を拾っているようなものだ」
さすが親だ。
何十年も前に言われた言葉だが、まさに、その通りだと、思う。
父も母も、とっくに亡くなったが、あれやこれや、ふと思い出す。
あちらで、元気で、仲良くやってくれているといいな〜と、思う。
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