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私達動物の息の仕方とその歴史

水中の動物たちの呼吸16

2023-02-07 17:44:10 | 日記
空気呼吸する魚たち-2
今回は幼生ではエラ呼吸ですが、成魚になると肺を使って空気呼吸をする魚の話題です。

はじめはハイギョ(肺魚)
約4億年前の古生代デボン紀に出現した魚類で、現在生きている種はオーストラリアハイギョ1種、ミナミアメリカハイギョ1種、アフリカハイギョ4種の、計6種。
硬い骨を持つ硬骨魚類は肉鰭類(にくきるい:分厚い肉質のヒレをもつ)と条鰭類(じょうきるい:線条の硬骨と膜でできたヒレを持つ)の2系統あり、ハイギョとシーラカンスは肉鰭類で、それ以外の現在のほとんどの魚は条鰭類です。陸生の4足動物は肉鰭類から進化したと考えられています。ハイギョは多くの魚と違って気道につながる鼻を持っています。

ハイギョの幼体は両生類と同様に外鰓(体の外に広がるエラ)を持ちエラ呼吸ですが、成長に伴って肺が発達します。成魚では酸素呼吸の90%を肺から採っているので数時間ごとに息継ぎのために水面に上がります。炭酸ガスの排出に使う器官は肺が30%、鰓が70%であり、主にエラで排出しています。
水が干れても地中で「夏眠」と呼ばれる休眠状態になりますが、これは代謝率を低下させてエネルギーと酸素消費量を制限するという冬眠とよく似た生理的状態です(英語版wikipedia)。

アフリカ肺魚の1種:プロトプテルス・ドロイとその解剖写真(Wikipedia)



図のハイギョの肺は胞状構造がよく発達して吸い込まれた空気から酸素を取り込む多くの毛細血管のために暗赤色のスポンジの様にみえています。

ハイギョの心臓は条鰭類と同じ1心房1心室ですが、心房と心室には不完全な中隔があって左右の血流が混合しないように調節されています。このため心房・心室の左側には肺からの酸素化された血液が流れ、右側には全身の組織から脱酸素化された血液が流れていて、2心房2心室に向かう進化の初期状態になっています。

この2つの血流は、心臓球から出るときもほぼ分離しています。
酸素化された血液の80~90%はエラのない動脈弓から大動脈を通り全身の組織へ酸素を供給した後に大静脈を通って静脈洞に流入しています。Johansen et al(1968)Bassi(2010)
一方、酸素の乏しい静脈血はエラを通って二酸化炭素を放出した後に肺動脈―肺―肺静脈と流れて酸素化された後に心房へ流入します。

このように血液循環は心臓→全身→心臓と一巡する回路のほかに心臓→えら→肺→心臓という回路もみられるので、陸生4足動物の呼吸循環系への萌芽の状態といえるのです。

次も空気呼吸する魚です

参考文献
福田芳生 ハイギョの進化古生物学 The chemical times 2006 no.3
Ishimatsu A. Evolution of the Cardiorespiratory System in Air-Breathing Fishes.
Aqua-BioScience Monographs, Vol. 5, No. 1, pp. 1–28 (2012)
Wikipedia:ハイギョ(日本語版と英語版)
コメント (1)
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