2017.04.05
抗がん剤治療開始後すぐに無菌室に入れられたのだが、病室から出るのは
許可されていた。
シャワー室が部屋の外にあり、他の患者さんと共同で予約制になって
いて、看護師さんがいつも予約を取ってくれていた。
カテーテルを挿入している箇所に保護シートを貼り、水の侵入を防ぐ。
抗がん剤治療中は24時間投与し通しの為、一旦流れを停止しカテーテル
からチューブを外すことは出来ないが、抗がん剤投与が終了し
抗生物質、生理食塩液の投与中に関しては、それが可能であった。
シャワーの時間が限られているのでその時間内に終わらせないといけない
為ゆっくりとは出来ない。
それでもやはり気持ちがよくサッパリとした気分で部屋へ戻れる。
トイレは部屋の中にあるのだが、決まりは無く病棟中央にある共用の
トイレを使用することもできる。
白血球の数値がほぼ "0" に近いところまで来た時、部屋から出るのが
禁止になった。
本来、病棟の廊下からナースステーションに至るまで、普通に歩いて
いても空気中の雑菌、細菌などが目に見えない範囲で100万個以上は
浮遊しているため、そこを通るにはまさに命がけである。
言うまでもなく、部屋からでた瞬間に感染してしまう。
無菌室は、100%の無菌状態(菌が”0”の状態)を作り出すことは不可能
だがそれに極力近い状態まで持っていく事は可能である。
アイソレーターシステムといい、特殊なフィルターで濾過した空気を
部屋の天井から床に近い壁面のフィルターへ流すことにより、部屋の
中の空気の循環を一定方向にし、より無菌に近い状態を作り出す。
それでも部屋中の空気中に浮遊する雑菌、細菌は100~1000個は存在する
という。
トイレについては部屋のを使用できるが、シャワー室へ行けない。
部屋の中に洗面台はあるが、当然のことながら体は洗えない。
清拭と言い看護師さんが熱いおしぼりを4~5本持ってきてくれ、
それで体を拭いていく。
自分で出来る状態だったので、いつもおしぼりを貰い拭いていた。
最初は慣れない為か、1か所ごとに息を切らせて体全部を拭き終わる
頃には、放心状態だった。
その日から部屋から一歩も出れなくなり、孤独、無音、虚無感が
襲ってくる。
備え付けのテレビは見るが課金制で、見放題という訳にはいかない。
他に楽しみと言えば、持参してきたタブレットぐらい。
本、雑誌などは外から持ち込まれる為禁止。
紙に付着した雑菌もいっしょに持ち込まれ、何らかの原因で、
白血球 ”0” の無防備な体に入り込み障害を引き起こすのである。
限られた空間、限られた娯楽、人と接することと言えば早朝の採血、
1日に2~3回の検温、血圧測定で看護師さんと2、3言の会話。
1週間はこの状態が続く。
果たして自分はいまのこの状態に耐えられ、部屋を出ることが
できるのだろうか。
言いようのない不安を感じた。
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