十一月のある日のこと、リーグ戦も終わりその日は練習が自主練で、オレ(福井真一郎)はのんびりとシューティングをしていた。
四年生も引退し小野先輩や吉原先輩(笑)もいなくなったので、いよいよオレのスタメンPGの座も安泰だ、そう考えるとニヤニヤが止まらない。
オレは自主練を早めに切り上げて、コートのわきでおしゃべりに興じていた。今日は自主練に来る人も少なく、ただ一人、大洋クンがモクモクとスリーを打っていた。黙々と立ち上がる白い湯気、かれこれもう二時間は打ちっぱなしだ。だが、無情にも大半のシュートはリングに嫌われる。
てかなんであんなに打ってるのにシュートはいんねえんだよ?大洋くん恐竜みたいだし、付いてるの手じゃなくて前足なんじゃねえの?
などと考えていると...
大洋くんが近づいてきた。
「なあ、あのさー、今日の夜なんだけど野球見にいかね?」
「いや、いかねーし」
即答した
だいたい何で大して仲良くもない奴と興味ない野球見に行かねーといけないんだよ
「昇平誘えよ、昇平」
「いや昇平君さ、家の近くの公園で野宿したせいで風邪ひいたってさ」
......呆れて何も言えない、やっぱり釣り舟のやつらはガイジばっかりだ
「あと始球式にいくちゃん来るらしいぜ」
ん??
な、なんですと―‼
オレの中の乃木オタの血が騒ぎだす
こ、これは望遠鏡を持っていって、じっくり生いくちゃんを拡大で堪能するしかないですぞ。!!お、お、お、俺の嫁,オレの嫁,いくたえりかさあ~んwwwwww
おっと危ない
興奮しているところを大洋くんに気付かれるわけにはいかない。
舐められないためにも、あくまでも弱みを見せるわけにはいかないのだ
「まあ、別に暇だったしチケットあるなら行ってやってもいいけど?」
ということで、オレと大洋くんの二人で野球を見に行くことになったのだ。
後で聞いたところによると、大洋くんが熱烈に応援している地元球団の広島東洋カープが東京ドームで巨人とクライマックスステージを戦うらしく、今日がその初戦なのだそうだ。大洋ホエールズはサイゼの女の子を誘おうと思っていたらしいのだが、どうやら親が出産するからと断られてしまったらしい。
国立駅から中央線に乗り水道橋へと向かった
しかし、普段全く会話をすることがなく、接点がないので、特に話すことがない
仕方がないので
なんで大洋くんってそんなガリガリなの?胸板薄すぎじゃね?
と、テキトーにいじってみると
一瞬嫌そうな顔をする大洋くん。そして、
「そんなこと言ったら、福井くんの中身のほうが薄っぺらいんじゃね。」
と、予想のつかない鋭いカウンターがかえってきた。
へぇ、ディスられても不思議と嫌な気持ちはしない。それどころかちょっと楽しい。こんなふうにやりあったのは初めてだったので、新鮮な気持ちがした。益留と水上もこんなふうにやりあってたっけ、ふと面倒のかかる後輩のことを思い出した。
そうこうしているうちに球場についた。
そして始まりました始球式
結論
いくちゃんは神 QED.
アァぁ~ かわいいわ~
オレが自分の世界に没していると、大洋くんが話しかけてきた。
「福井くんはさ生田絵梨花みたいに胸の大きい子がタイプなわけ?」
「胸とかじゃなくて、いくちゃんはそのものがオレの理想なんだよ!大洋くんもいくちゃん好きでしょ?」
生いくちゃんを見られてテンションが上がっていたせいか、普段なら絶対言わないようことも言ってしまう
「オレはねえ、どっちかというとキレイ系の女の子の肩だしオフショルに興奮するわ~肩にしゃぶりつきたいっていわ~。あとね、お姉さん系のバニーコスもたまらんわ。要するにね、オレは肌の露出が......(以下略)」
聞いてもいないことをぺらぺらとしゃべる大洋くん。自分の意見をひとに押し付けるのは相変わらずだったが、不思議と嫌な気持ちはしない、誰にも話したことのないことを初めて打ち明けたためか、いつの間にかオレは大洋くんに親近感を抱いていたようだ。オレたち、意外といい友達になれるのかな。そんなことを考えながら、大洋くんと好きな女性のタイプについての会話を続けていた。
すると、すぐそばの通路に見知った顔が通りかかった。開くんとその彼女の優奈ちゃんだ。
オレら二人を見て不思議そうな顔をする開くん。
「ん?なんで二人でここにいんの?」
そして、意地の悪そうな笑みを浮かべ
「え、もしかしてお前ら仲良しだったの?」
と聞いてきた。大洋くんと二人で見に来たことを知られればきっと馬鹿にされる。
「いやいや、あんなきもい奴と一緒に来るわけないじゃん。アハハ 」
咄嗟に、口にしたのは本心とは逆の言葉だった
見ると大洋くんは悲しげな眼をしてこっちを見ていた。オレは逃げるようにして席を立ち、トイレへと向かった。頭の中でさっき自分が言った言葉がぐるぐると渦巻いている。どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。せっかく仲良くなれそうだったのに
席に戻っても気まずくて、言葉を交わしたりできなかった。ただ、カープの勝利を願って一心不乱に応援する大洋くんの姿を横目で見ていると、いじらしい。そんな言葉が頭の中に浮かんできた。
オレがぼんやりしていると、菊池の打ったファールボールがオレのいるほうへ飛んできた
避けようとしたら運悪く飲み物の入っていたコップに肘が当たってコップが倒れ、隣に座っていた怖そうなお兄さんの白いジャケットにかかってしまった。
あーやっちまったよ、と思い、どう言い訳しよっかなーと考えていると
「何してくれとんじゃわれ、責任取れんのか?」
と大声で恫喝され、オレはびびってしまいフリーズしてしまった。
すると、オレの隣で大洋君が目にもとまらぬ速さで土下座をし、
「悪気があったわけではねえんで、ゆるしてもらえないでしょうか」
「おまえもしかして広島のもんか?」
「はいそうです」
「同郷か、ならええ
おまんのその土下座にめんじてゆるしてやっちゃるわい」
怖いお兄さんはオレに一瞥をくれるとどこかへ去ってしまった。
オレは大洋くんに助けてもらったのだ。
「どうしてさっきあんなにひどいことを言ったのに、助けてくれたんだよ?」
「そんなの当たり前だろ?だっってオレたち友達じゃないか。」
と、も、だ、ち
この言葉が上手く自分の中にはいってこない。
いつからか、人を損得勘定でしか見れなくなってしまっていた自分がいた。うわべで取り繕うことばかりうまくなっていて、企業のエントリーシートにも嘘ばかり並べていた。でも大洋くんは自分とは違っていたのだ。さっきも、人に飲み物をぶっかけておいて言い訳をして逃れようとしとしたオレとは違って、大洋くんは相手に心から謝ろうとしていたんだ。あいつは裏表のない性格で、とてもやさしい奴だったんだ。自分に一番欠けているところを大洋くんは持っていたんだ。
・・・・・。ごめん
オレは小さくそうつぶやいた。
何て?
「さっきはひどいこと言ってごめん。それと、今まできつく当たってきてごめん。
オレこれからは......」
「なんでっ、なんでお前がそんなこと言うんだよ。謝らなくちゃいけないことはオレのほうが多いから」
「わかった、じゃあ仲直りさせてくれよ」
「そしてオレたちはお互いうなずきあい、握手を交わした。」
ちょうどその時、バックスクリーンに観客席が映った。ほんの一秒か二秒オレたちの姿も映っていた。ふたりはとてもいい笑顔だった。
国立へ帰ると、駅の近くで、西村くんと美優ちゃんが手をつないで二人で歩いてるのに出くわした。
「えっ、二人って仲良かったの?」
びっくりとした顔をする二人
さっきは言えなかったけど、今ならはっきりといえる
「そうだよ、オレたちは友達だよ」
って
見上げると夜空には満天の星が輝いていた。明日がどうなるのかは誰にもわからない。それでもかまわない、だってオレたちは今十分幸せなのだから。
自己紹介
福井信一郎
四年 PG
攻玉社高校出身
好きなアイドル 生田絵梨花
好きなアニメ 鬼滅の刃
取得した呼吸 肺の呼吸 壱の型 「慢性呼吸不全」
引退まであと少しですが四年としての名に恥じないように精一杯頑張りますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
文責 水上
四年生も引退し小野先輩や吉原先輩(笑)もいなくなったので、いよいよオレのスタメンPGの座も安泰だ、そう考えるとニヤニヤが止まらない。
オレは自主練を早めに切り上げて、コートのわきでおしゃべりに興じていた。今日は自主練に来る人も少なく、ただ一人、大洋クンがモクモクとスリーを打っていた。黙々と立ち上がる白い湯気、かれこれもう二時間は打ちっぱなしだ。だが、無情にも大半のシュートはリングに嫌われる。
てかなんであんなに打ってるのにシュートはいんねえんだよ?大洋くん恐竜みたいだし、付いてるの手じゃなくて前足なんじゃねえの?
などと考えていると...
大洋くんが近づいてきた。
「なあ、あのさー、今日の夜なんだけど野球見にいかね?」
「いや、いかねーし」
即答した
だいたい何で大して仲良くもない奴と興味ない野球見に行かねーといけないんだよ
「昇平誘えよ、昇平」
「いや昇平君さ、家の近くの公園で野宿したせいで風邪ひいたってさ」
......呆れて何も言えない、やっぱり釣り舟のやつらはガイジばっかりだ
「あと始球式にいくちゃん来るらしいぜ」
ん??
な、なんですと―‼
オレの中の乃木オタの血が騒ぎだす
こ、これは望遠鏡を持っていって、じっくり生いくちゃんを拡大で堪能するしかないですぞ。!!お、お、お、俺の嫁,オレの嫁,いくたえりかさあ~んwwwwww
おっと危ない
興奮しているところを大洋くんに気付かれるわけにはいかない。
舐められないためにも、あくまでも弱みを見せるわけにはいかないのだ
「まあ、別に暇だったしチケットあるなら行ってやってもいいけど?」
ということで、オレと大洋くんの二人で野球を見に行くことになったのだ。
後で聞いたところによると、大洋くんが熱烈に応援している地元球団の広島東洋カープが東京ドームで巨人とクライマックスステージを戦うらしく、今日がその初戦なのだそうだ。大洋ホエールズはサイゼの女の子を誘おうと思っていたらしいのだが、どうやら親が出産するからと断られてしまったらしい。
国立駅から中央線に乗り水道橋へと向かった
しかし、普段全く会話をすることがなく、接点がないので、特に話すことがない
仕方がないので
なんで大洋くんってそんなガリガリなの?胸板薄すぎじゃね?
と、テキトーにいじってみると
一瞬嫌そうな顔をする大洋くん。そして、
「そんなこと言ったら、福井くんの中身のほうが薄っぺらいんじゃね。」
と、予想のつかない鋭いカウンターがかえってきた。
へぇ、ディスられても不思議と嫌な気持ちはしない。それどころかちょっと楽しい。こんなふうにやりあったのは初めてだったので、新鮮な気持ちがした。益留と水上もこんなふうにやりあってたっけ、ふと面倒のかかる後輩のことを思い出した。
そうこうしているうちに球場についた。
そして始まりました始球式
結論
いくちゃんは神 QED.
アァぁ~ かわいいわ~
オレが自分の世界に没していると、大洋くんが話しかけてきた。
「福井くんはさ生田絵梨花みたいに胸の大きい子がタイプなわけ?」
「胸とかじゃなくて、いくちゃんはそのものがオレの理想なんだよ!大洋くんもいくちゃん好きでしょ?」
生いくちゃんを見られてテンションが上がっていたせいか、普段なら絶対言わないようことも言ってしまう
「オレはねえ、どっちかというとキレイ系の女の子の肩だしオフショルに興奮するわ~肩にしゃぶりつきたいっていわ~。あとね、お姉さん系のバニーコスもたまらんわ。要するにね、オレは肌の露出が......(以下略)」
聞いてもいないことをぺらぺらとしゃべる大洋くん。自分の意見をひとに押し付けるのは相変わらずだったが、不思議と嫌な気持ちはしない、誰にも話したことのないことを初めて打ち明けたためか、いつの間にかオレは大洋くんに親近感を抱いていたようだ。オレたち、意外といい友達になれるのかな。そんなことを考えながら、大洋くんと好きな女性のタイプについての会話を続けていた。
すると、すぐそばの通路に見知った顔が通りかかった。開くんとその彼女の優奈ちゃんだ。
オレら二人を見て不思議そうな顔をする開くん。
「ん?なんで二人でここにいんの?」
そして、意地の悪そうな笑みを浮かべ
「え、もしかしてお前ら仲良しだったの?」
と聞いてきた。大洋くんと二人で見に来たことを知られればきっと馬鹿にされる。
「いやいや、あんなきもい奴と一緒に来るわけないじゃん。アハハ 」
咄嗟に、口にしたのは本心とは逆の言葉だった
見ると大洋くんは悲しげな眼をしてこっちを見ていた。オレは逃げるようにして席を立ち、トイレへと向かった。頭の中でさっき自分が言った言葉がぐるぐると渦巻いている。どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。せっかく仲良くなれそうだったのに
席に戻っても気まずくて、言葉を交わしたりできなかった。ただ、カープの勝利を願って一心不乱に応援する大洋くんの姿を横目で見ていると、いじらしい。そんな言葉が頭の中に浮かんできた。
オレがぼんやりしていると、菊池の打ったファールボールがオレのいるほうへ飛んできた
避けようとしたら運悪く飲み物の入っていたコップに肘が当たってコップが倒れ、隣に座っていた怖そうなお兄さんの白いジャケットにかかってしまった。
あーやっちまったよ、と思い、どう言い訳しよっかなーと考えていると
「何してくれとんじゃわれ、責任取れんのか?」
と大声で恫喝され、オレはびびってしまいフリーズしてしまった。
すると、オレの隣で大洋君が目にもとまらぬ速さで土下座をし、
「悪気があったわけではねえんで、ゆるしてもらえないでしょうか」
「おまえもしかして広島のもんか?」
「はいそうです」
「同郷か、ならええ
おまんのその土下座にめんじてゆるしてやっちゃるわい」
怖いお兄さんはオレに一瞥をくれるとどこかへ去ってしまった。
オレは大洋くんに助けてもらったのだ。
「どうしてさっきあんなにひどいことを言ったのに、助けてくれたんだよ?」
「そんなの当たり前だろ?だっってオレたち友達じゃないか。」
と、も、だ、ち
この言葉が上手く自分の中にはいってこない。
いつからか、人を損得勘定でしか見れなくなってしまっていた自分がいた。うわべで取り繕うことばかりうまくなっていて、企業のエントリーシートにも嘘ばかり並べていた。でも大洋くんは自分とは違っていたのだ。さっきも、人に飲み物をぶっかけておいて言い訳をして逃れようとしとしたオレとは違って、大洋くんは相手に心から謝ろうとしていたんだ。あいつは裏表のない性格で、とてもやさしい奴だったんだ。自分に一番欠けているところを大洋くんは持っていたんだ。
・・・・・。ごめん
オレは小さくそうつぶやいた。
何て?
「さっきはひどいこと言ってごめん。それと、今まできつく当たってきてごめん。
オレこれからは......」
「なんでっ、なんでお前がそんなこと言うんだよ。謝らなくちゃいけないことはオレのほうが多いから」
「わかった、じゃあ仲直りさせてくれよ」
「そしてオレたちはお互いうなずきあい、握手を交わした。」
ちょうどその時、バックスクリーンに観客席が映った。ほんの一秒か二秒オレたちの姿も映っていた。ふたりはとてもいい笑顔だった。
国立へ帰ると、駅の近くで、西村くんと美優ちゃんが手をつないで二人で歩いてるのに出くわした。
「えっ、二人って仲良かったの?」
びっくりとした顔をする二人
さっきは言えなかったけど、今ならはっきりといえる
「そうだよ、オレたちは友達だよ」
って
見上げると夜空には満天の星が輝いていた。明日がどうなるのかは誰にもわからない。それでもかまわない、だってオレたちは今十分幸せなのだから。
自己紹介
福井信一郎
四年 PG
攻玉社高校出身
好きなアイドル 生田絵梨花
好きなアニメ 鬼滅の刃
取得した呼吸 肺の呼吸 壱の型 「慢性呼吸不全」
引退まであと少しですが四年としての名に恥じないように精一杯頑張りますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
文責 水上
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます