皆さんこんにちは、福田です。
受験生のみなさんセンター試験お疲れ様でした!!
福田も毎年新聞に掲載される問題を見るようにはしているんですが、
今年は英語のリスニングの最初からなかなかクセの強いキャラクターが登場してましたね笑
さて、今回は息抜きもかねて一年生の巻田が浪人しているときに書いたという短編小説をここで紹介したいと思います。
受験期の希望や不安といった様々な気持ちを繊細なタッチで描いた彼の自伝的小説。所詮後輩が趣味で書いた文章、と思い軽い気持ちで読んでみた所、就活を目前にした福田もなかなか考えさせられてしまう作品でした。
この作品をきっかけに二次試験の国語の点数が大幅アップするかもしれませんし、きっと今後の人生のプラスになるでしょう。是非受験生の皆さんもそうでない方も一度読んでみてください。
「モラトリアムの色」
○プロローグ○
黄色いユリが枯れた日、名も無き蝶が羽化した。蝶は昔いたこの世界に見覚えはあるのだろうか。蝶は姿形が変わっても心はあのイモムシなのだろうか。あのイモムシはどうして蝶になっただろうか。今になっては誰にもわからない。そして、蝶は羽ばたいていった。自分のいたサナギに目もくれず。
1
「ピンポーン、信号が青になりました。」
都会の交差点で信号を変わるのを眺めていると時間はあっと言う間に過ぎていってしまう。青から赤、また青へと変わっていくこの何のへんてつもない光を見ながら考え事をする、それが僕、マキタナオヤの最近の日課。
内容は様々。数学についてだったり、りんごについてだったり。
今日はある言葉が頭の中にあった。グレコローマンスタイル。僕はなんだかこの言葉の響きが昔から好きだ。レスリングが特に好きという訳でもなく、これといった特別な思い出もない。ただなんとなく好きなだけだ。
思い返せば、僕の人生はなんとなくの繰り返しだった。親に勧められてなんとなく有名な進学校に入った。なんとなくまわりがみんな目指すから東京大学を目指そうと思った。ダメだったからなんとなく浪人して、なんとなく今も勉強している。
でも僕はこれでもそこそこ幸せにやっているつもりだ。自分について明確なビジョンを持っている人なんてそういるもんじゃないだろう。なんとなくでこれからも幸せに生きていけるなら、それでいいじゃないか。
グレコローマンスタイル。こういう感覚をこれからも大切にしていこう、僕は軽くそう誓ってみた。
その時、一瞬自分の足元が光ったかと思うと、僕は湿った暗闇に立っていた。
「おまえ、嘘つきだな。」
と声がした。顔をあげるとそこにいたのは小さな妖精。そう、ヨーロッパの絵本にでも出てきそうな手のひらサイズの妖精。
「君は誰だ?」
「愚問だな。おいらはおまえを知っている。」
妖精はまるですべてをお見通しかのような目でこちらを見てくる。
「わからないから聞いてるんじゃないか。」
「まぁ、そんなことはどうでもいい。おまえは嘘つきだ。」
「なんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ。」
「おまえは人生を自分で歩むことから避けている。」
そんなことない、と言い返したかったが言葉に詰まってしまった。心がボンレスハムのように締め付けられている気がした。
「まあ、おまえが変わる気があるかどうかは、おいらの知ったことじゃないけどね。」
「変わる気ってなんだよ。」
「おいらの言うことがわからないなら、おいらに会うことは二度とないぞ。じゃあなマキタ。」
彼はウィンクをすると、消えてしまった。そして、そこにはいつもの信号が立っていた。その周りにはいつも通りの景色にいつも通りの人々。あの妖精は何のために僕の前に現れたのだろうか。僕には全然わからなかった。
ただ、微かにだが、青信号がいつもより緑色に見えた。
●エピローグ●
「おい、巻田!今から牛丼食べに行こうよ。」
「中谷さんすいません、今日は忙しくて。」
「おまえ、嘘つきじゃな。」
僕は耳を疑った。中谷さんの目を見ると、あの時の妖精と同じだった。こっちの考えは全て見透かされているかのような目。
ついにこの時が来たのか。
でも、今なら自信を持って答えられる。僕はあの時とは違う。変わることができたんだ。
「はい。本当は先輩といくのはちょっとめんどくさかったので。」
これが正解だ。自分のなんとなくなんかには惑わされず、つきたくもない嘘もついていない。僕は中谷さんの目を見て、下手くそなウィンクをした。
「巻田、おまえ先輩に向かってその態度はおかしいやろ。」
どうやら彼ではなかったようだ。
僕はやらかしてしまったようだ。
fin.
文責:福田
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