あなたの…
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平成十一年七月十八日
米国401(k)調査備忘録
高野 義博
目 次
一 401(k)一見
二 訪問先個社マター
三 取り敢えずの401(k)論
*米国で入手した資料
一 401(k)一見
①視察団
平成十一年六月六日から十三日にかけて、民間研究所の企画・主催で「米国401(k)プラン視察ツアー」が行われ、私はニューヨーク、ボストン、サンフランシスコを廻り、一〇ヶ所の企業視察、事業視察、そして大学生協視察(?)に参加してきました。
視察団一行のメンバーは、厚生年金基金の理事長・常務理事・事務長等5名のDB(Defined Benefit)組と、他に大手企業の企画・人事畑の三〇歳台若手五名のDC(Defined Contribution)組、それに主催者・通訳の三名、加えて十三名の小集団でした。
ホテルが筆者と同室になった方は大手基金の常務理事で同じ昭和十六年生まれ。就任されて三ケ月目、片や筆者の方は1/4世紀。片や財務畑のゼネラリスト、片や基金のベテラン? もしくはスペシャリスト? 片や公費、片や自費。とは言え、理事長の理解を得て年休使用で事務所だけは休ませていただきました。基金連合会の一〇年来続いていた恒例の海外調査でさえ、応募者がなく中止になっている状況でありますから、これもまた象徴的であるにすぎません。
筆者にとってはこの度は二度目の海外調査となりました。最初は平成二年の上記基金連合会の調査旅行で、UK、オランダ、ベルギー、スイス、ドイツ、フランス、ギリシャの十五日間の公費資産運用調査でありました。このヨーロッパの資産運用調査では金融機関や年金基金の資産運用の伝統というか歴史の違いを認識させられた旅行でした。その後、UKで訪問した金融機関はそろって日本進出を果たし、グローバルな金融再編劇のすえに社名の消えてしまった金融機関もあります。幸いそのときの報告書の担当先は、今もエキセントリックな活動を展開している「ドイツ銀行」でありました。
②三大都市の印象
この度の401(k)調査のアメリカ旅行で、廻ってきた三大都市の各々二日間の印象は、「三つのE」でまとめることが出来ます。すなわち、ニューヨークは〈エネルギッシュ〉、ボストンは〈エレガント〉、サンフランシスコは〈エフィシェント〉(効率の良い)でありました。
〈エネルギッシュ〉というのは、ウォール街目指してヒルトン・ホテルからタクシーを飛ばしたところ、N.Y.の事務所の一斉の引け時にぶつかり、半島のため溢れ出た車が一線に集まり渋滞で身動き出来ず、Uターンして次のスケジュールのためにお上りさんの〈ウォール街詣で〉がはたせなかったことによります。
〈エレガント〉というのは、双発の超小型プロペラ機で、日が雲海の遥か彼方に沈んだばかりの午後八時半の薄暮の中、視野一面に街の明かりが木々の合間にさんざめき散在するボストン市街から新宿程度の高層ビルの一角目指して、高度をグイグイ下げてプロペラ機特有の身体に直に感じられる飛行体験をしつつ、川をまたいだと思ったら横揺れ・落下・浮遊・失速しつつ飛行場に滑り込んでいました。そこは、まさにフットライトの降り注ぐ〈ステージ〉そのもの。小さな感動が走りました。何のステージ? 人、様々でしょうが、筆者にとっては何やら〈死後の目〉のポジション成立か。この度の旅行全体を自分が〈飛天〉になって飛び回ったような気がする。少々、禿げてきました、太り気味の、落下しそうな〈飛天〉ではありますが。
最後に〈エフィシェント〉というのは、市電のターンに機械を使わず、二人の赤髭の大男の人力で方向転換することに代表されているように、街全体が人間的なレベルで企画されていることを指しています。あえて言えば、人生の過ごし方の点で街全体が効率市場を形成しているようでした。きらびやかな人生の華とでも言うべき。そう言えば、街の中心のユニオン・スクエア(ビルの谷間の一角の小公園、我々のホテルは対面のセントフランシス)には、偶々画家たちの絵がたくさん展覧されていました。その公園には、エーゲ海のように湿気のまったくない陽光が燦々と降り注ぎ、人に容赦のない風そのものとも言うべき湿気のまったくない風が吹いていました。見回っているうちにオーク樹を描いた大きなエッチングが目に止まりしばし佇みました。傍らに同じ絵の絵葉書カードを見つけたので、ドル紙幣をポケットから引っ張り出したところ、「Oho,No No! 」と言われ、片腕を引っ張られ公園のエリアを出て歩道まで案内されてしまいました。そこで商い成立。そこで始めて了解成立。公園内で商いはご法度になっているのでした。
③ツアー企画の背景
さて、このツアー企画の背景には以下のような「ネンキン・タイタニック」な状況があると主催者からお聞きしました。
日本経済の一〇年に及ぶ超低金利のもと、確定給付型の厚生年金基金の積立不足、国際会計基準の導入等に伴う企業負担の増大を背景に規制緩和・公的年金等の改善の議論が沸き起こっていました。平成九年三月の自民党行革本部を端初に、平成一〇年三月規制緩和推進計画が閣議決定され、以後、自民党労働部会・勤労者拠出型年金等小委員会、年金審議会、自民党年金制度調査会・私的年金等小委員会、税制調査会等の審議を経て平成十一年一月の関係四省(大蔵、厚生、通産および労働)による「確定拠出型年金制度準備会議」の設置を受け、この六月には具体的な制度設計が示されることになっていました。
偶々、ボストンに移動するためのジョン・F・ケネディ空港に向かうバスの中で、六月九日付けの読売新聞国際版の自民党年金制度調査会・私的年金等小委員会(八日開催)において示された政府・自民党案「確定拠出型年金制度案」の記事のコピーが配られました。
この間、民間でも平成一〇年九月の経団連「確定拠出型企業年金制度の導入を求める」というレポートが出て、確定給付型、公的年金を含めて多方面に議論が巻き起こり、マスコミにも取り上げられセミナーも多数開催され、関係書籍も多数出版されていました。情報過多のような状況でしたが、マイナス思考の考え方が圧倒的に多く、日本にいては視野が限定されていて今一つ分からない部分があり、〈現場に行こう〉ということになったとのことでありました。
④訪問先
そこで、ピックアップされたのが、米国企業の年金プランスポンサー四社、従業員教育の情報技術企業二社、投資運用技術会社二社、それに日本で四回目の年金セミナーを開催しようとしている「プランスポンサー」誌、日本経済新聞社米州編集総局の年金担当記者による現地401(k)セミナー等一〇ヶ所の今もっともヴイヴイッドな訪問先となりました。
事前に主催者が質問を準備して、プランスポンサーには十八項目(プランの説明の中には投資教育も含まれますか。楽しく、簡単でプレッシャーを感じさせない教育プログラムにするために大切なことは何ですか。ライフスタイルファンドは各世代にどのようなファンドを提供していますか、また、年齢別のリスク許容度は何を基準にしていますか等々)、プロバイダーには三項目(貴社が提供しました加入者コミュニケーションおよび教育プログラム(バンドル、アンバンドルどちらでも可)で加入率向上にもっとも効果があった事例についてご紹介下さい等)のクエッションを投げ付けたこともあって活発な議論・質疑が遣り取りされ、時間が足りないぐらいでした。
JOHNSON & JOHNSONの自社株投資、SONY USのマッチング、HewlettーPackard Companyのストック・オプション奨励策、APL社のミリオネーラ等のプランスポンサーの自信に溢れた役員・マネージャー達、Scudder University の従業員教育コミュニケーションのアカデミックな専門家、Fidelity Investments のコールセンターの役員、コミュニケーションマネージャー達、それにマールボロの丘の林の中に隔離されたコンピュターセンターの気象・地震のウォッチャー達、Atlantic Financial 社、SpeechWorks 社等のMITやハーバード大学出たてのベンチャー・エンジニアー達、それに「プランスポンサー」誌の若き女性編集長と日本での「プランスポンサー」誌の年金セミナーをコーディネートした松前氏(このあとお二人には帰国後の六月十六日、十七日に開催されましたアーバンネット大手町ビルでの年金セミナーですぐ再会しました。また、編集長とは、帰国した翌日、Eメールで海を越えて挨拶状の交換もしました。)、加えてアメリカの年金事情を日本に発信している日本経済新聞社の越中記者、大和證券USの大井会長からはヨーロッパ・アメリカの最先端金融事情をお聞き出来ました。
寡黙な日本人からすれば自己主張の強いアメリカ人の意見陳述は時にはうっとうしい場合もありましたが、多民族共存の競争社会でこその一時も気をゆるめられない緊張感が心地良かった場合もあり、彼等に自信に溢れた熱意のある懇切丁寧なプレゼンテーションをして頂き、ツアー参加者の熱心な質問も数多く出て、さらにJTBの高橋氏の臨機応変な切れの良い名通訳も双方のコミュニケーションの実を上げ、401(k)を介在に日米の文化の溝を越えてディスカッションが盛り上がりました。
⑤幾つかのトピックス
シリコンバレーでは、スタンフォード大学校内の広大な敷地の中の生協に立ち寄りましたが、「スタンフォード・ブックストア」の金融関係の棚で驚愕! その書籍数の多いこと、アメリカの奥の深さ・ふところの広大さを思い知らされました。二冊購入し、その一冊が “『THE 401(k) MILLIONAIRE』。
校庭を歩きながら主催者とは、
「三〇歳若かったら、スタンフォード大学に入って勉強し直したいですねェ」
「高野さん、それよりも経済学の本書いて、教授で来ればいいじゃない」
「とんでもない! でも、経済学の本ねェ? ……経済学ねェ!」
と、冗談とも本気ともつかない言葉を交わすほど我々のテンションは高まりました。更に、米国最後の日の団長主催の晩餐会では、DC組の若い人達に大企業を去って起業しようと余計なことまで申し上げてしまいました。
そう言えば、もう一つエピソードを思いだしました。それはボストン最後の晩、ギリシャ人の経営するロブスターのレストランを出て、店の前でタクシーを待っているとき、我々の会話を聞き付け振り向いて日本語で話しかけてきた細身の長身の黒人青年がいました。彼によると、明日ハーバードの卒業式があり、今晩は両親を招いて会食をした由、卒業式が済んだら日本に行って会社を起こすのだそうです。皆、唖然として二の句が継げないうちに、三人はタクシーに身を屈めて乗り込んでいってしまいました。日本の大学ではサラリーマンをせっせと作りだしていますが、アメリカでは経営者なのです!
更にもう一つ、このことに関係することを帰国便のユナイテッドの機内誌に発見。「シリコンバレーに見る日本産業復活の鍵」という藤井清孝氏の一文、
〈九〇年代前半まで、コンピューターに代表されるエレクトロニクス企業は、 開発、設計、製造、販売をすべて抱え込む垂直統合型の経営が主流でした。その後、製造を外部に委託するいわゆるファブレス企業、製造のみを行うファンドリー、マイクロソフトのようにソフトウェアに特化する企業、デルのように販売方法で差別化する企業が出現し、世界的規模で水平分業が進展し、新しい業界、企業が生まれてきました。〉
〈イノベーションはシリコンバレーの鍵です。これを可能にしているのはアメリカン・ドリーム(富)の実現欲、産学協同、ベンチャー・キャピタル等ですが、私は何よりも徹底した実力主義と人材の多様性にあると感じています。〉
〈シリコンバレーではほとんどの従業員が、ストック・オプションを持っていますがゆえに自社の株価に敏感です。また、多くの企業が銀行借入ではなく、株式資本によって資金調達をしているので、経営者としては株価対策が大変重要な課題です。〉
〈またトップはすでにかなり富裕な人が多いゆえに、サラリーマンとは違った大胆な決断ができる環境にあると言えるでしょう。 エクイティー・メンタリティーとは直訳すると、「株主のメンタリティー」ですが、「会社のオーナー(所有者)としての振る舞い」と言ったほうが良いかと思います。〉
〈即ち、株式資本が主体か、銀行融資が主体かによって企業の経営スタイルに大きな違いが出てきます。前者では将来へのメッセージ、良いリスクテイキング、 経営陣のビジョン、そして業績が大事なのに対し、日本企業の多い後者では、積極的にリスクをとりイノベーションを推進していくことは困難になりがちです。〉
要するに、アメリカでは〈アメリカン・スピリッツ〉の成就に向けて、社会的インフラを〈エフィシェント〉に組成するためにあらゆる場面でインセンティブが仕掛けられている(たとえば、米国で買ったタバコの銘柄名でもあるアメリカン・スピリッツというタバコは四ドル二五セント、凡そ五一〇円、日本人からすればべらぼうな値段です。これも禁煙促進策の仕掛け?)ということでしょう。
少々理屈っぽくなりますが、ここに言う〈アメリカン・スピリッツ〉とは、アテネのソクラテスから始まる西欧の個性の自由な発展という思考様式の伝統のうえに華開きました、キリスト教の神の意志の展開である人間一人一人の〈自己の十全な開花〉を義とする「自由」の概念のアメリカ版でしょう。社会を形成する国民一人一人の個人能力の最大限の発揮、即ちそこに、神の意志があるという宗教的コンセンサスが国民一般の慣習として確立しているのでしょう。
というのも、今を去ること一四〇年前の一八五九年、イギリスでは、中世から連綿と続く血塗れの専制的な宗教の軛を脱して、ジョン・スチュアート・ミルが『自由論』を論述している英国古典派経済学(一七七六年A.スミス『諸国民の富』、一八一六年D.リカード『経済的にして安全な通貨のための諸提案』、一八四八年J.S.ミル『経済学原理』等)の伝統が、アメリカ社会の背景に連綿としてあるからです。
さてまた、このような文脈のうえで、日本の多くのゼネラリスト、ならびにサラリーマン経営者は次のようなミルの文章をどう読むのでしょうか。
自分の生活の計画を[自ら選ばず]、世間または自分の属する世間の一部に選んでもらう者は、猿のような模倣の能力以外にはいかなる能力も必要としない。自分の計画を自ら選択する者こそ、彼のすべての能力を活用するのである。
ジョン・スチュアート・ミル『自由論』
幸福の諸要素の一つとしての個性について
ことによると、ミルは一四〇年後の日本の状況を予言していたのか、そんなことはありませんでしょう。ただ単に当時、教会の専制(ツアーリズム)のもとに窒息していたロンドンっ子に向けての発言でしたのですから。それは別にしても、現代の日本の文脈の上でこれを読むと示唆するところ大ではないでしょうか。
日本の戦後社会は、「猿のような模倣の能力」しか産み出してこなかったのではないのか?「彼のすべての能力」を活用するどころか、統制・計画経済下、撲殺してきたのではないのか? 敗戦の痛手は易きに流れ、リスクに挑む心を失ってしまったのではないのか? 自分なりのスタイルを確立することを、反社会的行為と考え違いしてきたのではないのか? 思考停止ばかりで、時代時代で真っ当に哲学をしてきたのでしょうか?
我々日本人は何処かでいつの間にかボタンの掛け違いを仕出かしてしまったのでしょう。生き方の点で、〈一億総猿化〉の状況をもたらしてしまったのです。それが窒息状態の閉塞感をもたらし、人々から行動を奪い人々を金縛りにして、厭世的マイナス思考を処世訓、生きざまの智恵ですと考え違いさせてしまい、人物の矮小化を実現してしまったのでしょう。
ばかなことを言わせません、突飛なことが許されません、夢を喋らさない、大言壮語を忌み嫌う等々、ちまちましました神経のか細い国民にしてしまったのです。全てルールに取りおさえられてしまっているのです。
ともかく、非常に悩ましい一文ではあります。今こそ、現代日本独特の或る種のツアーリズム(何と命名したらよいのか)を打破していくために〈哲学する〉ことが求められているのでしょう。取っ掛かりは、ジョン・スチュアート・ミル『自由論』あたりからか。或いはアテネのソクラテスを訪ねるか、弥陀の本願を考究するか……。
(以下略)
これらはいかがですか?
終章 Q&A確定拠出年金
⒈ はじまり
Q ひとつお聞きしたいのですが、最近始まった確定拠出年金って何ですか?
A それは、政府が、平成十三年(2001)確定拠出年金法、平成十四年(2002)確定給付企業年金法を制定し、新しく確定拠出年金(DC Defined Contribution)を導入したものです。これには、企業型と個人型がありますけど、時代のニーズに応えたものでしょう。働き方が多様化していますので。
Q 時代のニーズ、要請ですか?
A ええ、バブル崩壊後の日本経済の落ち込みはご承知でしょ。生き残りのために旧秩序の見直しがされていますよね、護送船団方式とか成果主義とか代行返上とか、お聞きになったことありますよね。
Q ええ、世の中混沌としていますものねぇ!
A 乱れているってことは、末は明るいのですよね。
Q そうですね。明るくするには、どうしたらいいんでしょう?
A まずは旧秩序の検証でしょう。それと時代の変化を読み取ることでしょうか。
Q 検証……ですか。
A 戦後日本人は貧しかったので、政府や官僚や会社がしてくれることを唯々諾々と受けていたきらいがありますでしょ。
Q といわれてもねぇ、他になすすべもなかったんでしょう。雇われないなんて難しかったんでしょ。
A そうではあったのですが、一歩下がって、それを考えると受け身であったことにはちがいありませんでしょ。
Q そうですね、青臭い話ではなくても。
A 日本の年金は、上(政府)から下(国民)へ提供されていたので、年金はもらうものでしたものねぇ。企業年金だって会社から、もらうものでしたもの。つまり、受け身だったんですよ!
Q そうですねぇ、……先輩たちを見ていると。
A 新しい確定拠出年金の枠組みは、そこが違うんです。
Q そこって、
A つまり、もらうだけでよかったのが、かちとるに切り替わったということです。自分で老後資金を勝ち取る仕組みなんですよ。政府や会社は仕組みを用意するだけで、中身は自分で作るわけです。
Q そお、……。それって何かいいことありますか?
A メリットですね。ええ、今までにない最大のメリットは〈個人勘定〉だということでしょう。
Q なんですか、それは?
A 日本の年金はこれまで全て政府の一括管理、つまりどんぶり勘定だったんです。例えば、「厚生年金勘定」はあっても、その中の自分の年金は幾らというのが不透明だったのです。つまり、国の会計は、単式簿記の小遣い帳方式なんです。
Q 国の会計が単式簿記なんですか!
A ええ、国だけではなく、県や市町村もです。
Q そういえば、前に新聞で藤沢市が複式簿記にしたとかいうのを見たことがありました。
A そうでした。ところで、〈アフリカ諸国・北朝鮮・日本〉で、なにを想像しますか。……実は、これは国の会計制度が単式簿記の国々です。未開国なんですよ、日本のインフラは。国民として恥ずかしい限りです。
Q へえっ、ビックリしたなぁ。それが現実なんですか!
A そこへ風穴を開けるのが確定拠出年金の個人勘定です。これを端緒のひとつに日本もおいおい複式簿記になっていくのでしょう。国際会計基準も入ってくるし。でも、一言付け加えれば、筆者の経験では、健康保険組合は単式簿記でしたが、厚生年金基金は制度発足(昭和41年)以来複式簿記でした。それも、時価会計採用(平成8年)は企業会計より先行しました。
Q そうなんだ、知らなかったなあ! 皆、知っているのかな?
A 知る人ぞ知るでしょうね。国の根幹をなす複式簿記の導入をどんな政策提言よりも最優先課題とすべきでしょう。政府予算の使い切りという仕組みを変えなけりゃならないんです。あえて言えば、現在の日本の諸問題、〈失われた二〇年〉の根本原因は単式簿記だと考えられます。今の日本の諸悪の根源になっています。損を認識できないので延命可能な単式簿記、〈借金は収入〉のカラクリ、これを複式簿記にしなければ、〈失われた三〇年〉のままです。
Q そうなんですか!……僕もそう思います、あれはひどいですよね、年度末の道路工事!……で、確定拠出年金の個人勘定というのは僕にとってどういいんですか?
A 今、会社で働いていて厚生年金加入ですね。企業年金はありますか?
Q いいえ、ありません。
A そうですか、それでは個人型の確定拠出年金に加入できますね、自営業者のように。個人勘定というのは、丸ごと自分の勘定ということです。全部自分が采配できるのです。転職したときや独立したときなど続けて持ち運びも自由です。それに、今までの年金のように、政治家や官僚、経営者の恣意でむしりとられることがありません。〈受給権保護と受託者責任〉でガードされています。何より、国家の統制計画経済の埒外のインフラです。
Q ふぅ~ん、……。
A 建前はそうなんですが、大企業の看板を使ってあくどいことをする運用業者もいるし、怪しげな投資信託は後を絶ちません。無能なサラリーマン運用者がプロを騙っていたりして、殿様商売・恫喝営業の業界ですし、他人の金を自分の金にすり替え、人様のお金意識のない運用のプロまがいが多いのが現実です。
Q そうなんですか、……。
A ということは、自分が理解できないものには投資しないことが大事ですね。カタカナだとか数値データを振りかざす業者は避けたほうがいいですよ。シンプルがいいですね。
Q 他には
A 企業型と個人型があって、会社に確定拠出年金がある場合でも、転職して無くなったら個人型に切り替えられます。つまり、就労スタイルが変わっても対応できます。
Q そうですか。それは何よりですね。
A それに、税金の優遇もあります。企業型の場合、企業の拠出した掛け金は全額損金扱いですし、個人型の場合も個人が払った掛け金は全額所得控除されて、その分所得税や住民税が安くなります。
Q 住民税も安くなるんですか。
A 運用時も、通常、預金利息は二〇%、株式の売却益は一〇%が源泉徴収されますが、確定拠出年金で運用して得た利益は非課税です。というのも特別法人税(1.173%)が毎年課税されるのですが、現在は課税凍結中ですので、実質的に非課税になります。この優遇策は大きいですよ。これを使わない手はないです。
Q そうなんだ、そんなに優遇しているんですか!
A 優遇というより、確定拠出年金の振興を目指す呼び水でしょう。年金を受けるときも、控除があって納税額が抑えられます。それに、確定拠出年金の給付には、「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の三種類があり、「老齢給付金」は年金または一時金として受取ることができるのです。
Q でも、いいことばかりじゃないでしょ。
A ええ、一番の難点は、運用の失敗のリスクがあることでしょうか。日本人は貯蓄家ではあっても、投資家の経験は少ないですからねぇ。みなさん、困るでしょうね。
Q 勉強、勉強ということですか。
A 当面はそうなりますかねぇ。ともかく経験しなけりゃ、始まりませんものねぇ。
Q ところで、個人型の場合、どこに申し込むんですか?
A そうでした、企業型の場合は会社でいいのですけど、個人型の場合は国民年金基金連合会です。Webで一度は検索をかけてご覧になってください。いろいろ制約もありますから、ご自分で確認してください。
Q わかりました。他に問題はありますか?
A 問題ですか、……掛け金拠出額の枠の拡大とか、企業型での加入者拠出(マッチング拠出)の採用とか、手数料の低減化とか、投資教育の充実とか、……規制過多なところは従来制度とあまり変わりませんね。
Q やはりですか。
A でも、一点、従来なかった〈受給権保護と受託者責任〉が規定されました。でも、その効果が現れるには時間がかかるでしょうね。
Q そお、なかなかなんですか。
出所:JOHNSON & JOHNSON 1995(米国の場合は事業主拠出のマッチング)
Q&Aで「もらうもの」だった年金が「かちとるもの」に変わっている事態を明らかにしつつ、多様な働き方の時代にフィットした「かちとる」年金の確定拠出年金をご案内します。
この入門で、非正規社員等のみなさんの年金のあらましが分かります。
さあ、お出かけください。逆境の人優遇されます。 無料配布キャンぺーンで50DL頂きました。
[目次]
プロ野球選手よ!
あらまし
目次
はじめに
序章 暖簾分け
第一章 「もらうもの」になったわけ
1.官僚の観念論 2.経済の「三種の神器」 3.公的年金の賦課方式・世代間扶養 4.厚生年金基金 5.税制適格退職年金(適年) 6.退職金 7.要するに
第二章 「もらうもの」のゆらぎ
1.統制計画経済から自由主義経済へ移行 2.官僚の立ちすくみ 3.職場環境の激変 4.終身雇用制年金から成果主義年金へ 5.企業年金の変容 6.受給権保護と受託者責任 7.要するに
第三章 「かちとる」てだて
1.自分年金ツリー 2.無年金の恐れ 3.ねんきん定期便のチェックと保存 4.年金履歴書 5.就業形態別年金 6.目を光らす! 7.要するに
終章 確定拠出年金はじめのはじまり
1.はじめのはじまり 2.浪費家・貯蓄家・投資家 3.年代別資産配分 4.目標設定 5.投資商品の選択と運用 6.資産配分チェック 7.勝手格付けゲーム
おわりに
付録
米国401(k)調査記録
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おすすめ本
著者
プロ野球選手よ!
少年野球、中学野球、高校野球、そしてプロ野球とふるい落としの階段を駆け上がり、最盛期の二十代を華やかに活躍してきて、気が付くと三十代、人生下り坂最高! と叫べない現実にぶち当たり、当惑にからめとられるプロ野球選手の人生無手勝流。
野球機構のいままでの年金は二〇一一年に清算され、選手は放り出されることになりました。今の時代、無年金のまったくの裸で生きるのはハイリスクに過ぎます。
高額年俸にもコーチや解説者にも無縁であれば、引退後の長い人生がのしかかってきますし、食う心配のほかに老後生活の不安も極端に増大します。
働き方が多様になったとはいえ、誰もがフリーランスで成功というわけにはいかないでしょう。
雇用や経営が不安定なのが今の時代。非正規社員、契約社員、派遣、パート、フリーランス、おひとりさま等の老後はどうなるのでしょう。こうした時代にマッチした年金が「確定拠出年金」です。
まずは、年金実務三〇年経験の年金カウンセラーがおすすめする以下のご案内をお読みいただいて、プロ野球選手よ! 頼りにならない機構等から独立して、長い人生のスキルのひとつとして「確定拠出年金」を使って人生のハイリスクに挑戦してみましょう。
はじめに
年金は「もらうもの」ですか?
たった今は、「もらうもの」というのが世間一般の通り相場のようです。現在のメディア、つまり本、新聞、TV、インターネット等でも、もらうとか、もらえないとか、もらいたいとか、つまり「年金はもらうもの」と言ったり書いたりしていますので、そう思われるのもいたしかたありません。
しかし、あなたが本心そう思われているのでしたら、そこには大きな落とし穴がありますよ。メディアというものは遅れがちなものですし、現在ではとんでもない考え違いとなります。ここは、メディアは二の次にして、あなたの考え方を全面的にひっくり返さなければならないところです。
それとも、もう、年金はもらえないとおもっているのですか。
又は、もう、もらわないとあきらめていますか。
さらには、もう、国を頼らないですか。
時代をさかのぼれば、大正・昭和一ケタ生まれの人は、「年金はいただくもの」という観念が一般的でした。それは、軍人恩給だったり役人の共済だったりしたのですから、国家から<賜る金子>という意味合いが強かったのです。
それが、昭和二ケタ以降生まれの人になると、厚生年金や国民年金等が始まり、「年金はもらうもの」というふうに変わってきました。国民は保険料負担をしているのに「年金はもらうもの」という言い方が長いこと続き、今も引き継がれているのです。
ここには、恩給時代の遺風ばかりではなく、経済が三種の神器(終身雇用・年功序列・企業別組合)によって右肩上がりを続けていた平和ボケが災いしました。年金は国家や企業に任せておけば足りましたので、もらうだけだったのです。逆に言えば、一人一人は国家や企業に絡め取られていました。夕方、マージャン牌を転がし、立ち飲みで一杯引っかけ、愚痴っていればよかったのです。
確定拠出年金が始まった現在の年金は、国の年金も企業の年金も先行きどうなるか不透明ですし、年金不信も極まっています。さらに、国の年金の先細りが懸念されています。
これから年金のあなたは、国の年金は政治家と官僚による年金加入記録問題等で国家は頼りにならないことを叩き込まれました。更に、職場環境が「三種の神器」の崩壊によってがらりと変わり、スキルアップや成果主義の嵐が吹き荒れています。就業のスタイルも多様になってきました。そんな中、企業年金は会社都合によって気軽に投げ捨てられるのも経験してきました。
そこで、今後、あなたに必要になってくるのは、公的年金も確定拠出年金も含めて年金を賢く逞しく自分でかちとるという考え方です(自分年金の誕生!)。
国や企業等が提供する年金フレームワーク(例えば、不明年金記録等)に対しては、最低限ご自分の年金はもらうのではなく、ご自分で確保するという考え方になります。国や企業に依存する姿勢をかなぐり捨てることが不可欠です。ぶらさがりのぶざまさはご法度です。
「国がなにをしてくれるかを問うな、あなたが国に対してなにができるかを問え」(ケネディ大統領就任演説)という問題です。
つまり、これから年金のあなたは、国や企業に何かを期待するのではなく、ましてや国や企業にぶらさがるのではなく、ひとり立ちして「年金はかちとるもの」になるでしょう。
これらを総じて考えると、年金は時代の社会状況から生み出される日本人の民意開明度合いによって推移していくようです。
今更、年金は「いただく」でも「もらう」でもなく、時代は「かちとる」になっています。
さあ、あなたはどうされますか? 弱者のままでいいわけありませんよね!
平成二十四年四月
年金カウンセラー 高野 義博
(以下略)
クリックして お出かけください。
年金カウンセラー 高野 義博
以下の図表をご覧いただいて、ヒント、ひらめき、インスパイア等ありましたら幸いです。
出所:企業年金連合会「企業年金に関する基礎資料」平成二十一年十二月
*「Q&A確定拠出年金入門」本文をご覧になりたい方、ここをクリックして下さい。
*年金カウンセラーの年金電子書籍 http://goo.gl/UHgQJD
2016.02.01
年金カウンセラー 高野 義博
新書出版社の皆さま、ご多用中、恐縮ですが、ご一覧ください。
併せて、御社で出版の可否をご検討賜りますようお願い申し上げます。
◆企画
Q&Aで「もらうもの」だった年金が「かちとるもの」に変わっている事態を明らかにしつつ、多様な働き方の時代にフィットした「かちとる」年金の確定拠出年金をご案内して、非正規社員等の応援を図る。
◆目次
プロ野球選手よ!
あらまし
目次
はじめに
序章 暖簾分け
第一章 「もらうもの」になったわけ
1.官僚の観念論 2.経済の「三種の神器」 3.公的年金の賦課方式・世代間扶養 4.厚生年金基金 5.税制適格退職年金(適年) 6.退職金 7.要するに
第二章 「もらうもの」のゆらぎ
1.統制計画経済から自由主義経済へ移行 2.官僚の立ちすくみ 3.職場環境の激変 4.終身雇用制年金から成果主義年金へ 5.企業年金の変容 6.受給権保護と受託者責任 7.要するに
第三章 「かちとる」てだて
1.自分年金ツリー 2.無年金の恐れ 3.ねんきん定期便のチェックと保存 4.年金履歴書 5.就業形態別年金 6.目を光らす! 7.要するに
終章 確定拠出年金はじめのはじまり
1.はじめのはじまり 2.浪費家・貯蓄家・投資家 3.年代別資産配分 4.目標設定 5.投資商品の選択と運用 6.資産配分チェック 7.勝手格付けゲーム
おわりに
付録
米国401(k)調査記録
Web
おすすめ本
著者
◆著者
年金カウンセラー 高野 義博(たかの よしひろ)
○1941年千葉市生まれ。1967年東洋大学哲学科卒業。ABC厚生年金基金に25年勤務。続いて社会保険事務所で年金相談員を5年。2001年OPM研究会設立。
○1990年欧州7ヶ国企業年金調査。1998年企業年金連合会の受託者責任研究会WGに参加。1999年米国401(k)調査。
○著作に、1995年『情緒の力業』近代文藝社。他に、電子書籍「人様のお金」、「誰も知らない厚生年金基金」等15冊。雑誌記事「年金履歴書の作成による請求もれ年金発見の仕方」(B5×13枚)日本法令ビジネスガイド掲載2007年「企業年金の記録漏れ問題・不払い問題 具体的解決策は何か?」(B5×5枚)日本法令ビジネスガイド掲載2008年
○年金カウンセラーとして2007/6/2東京新聞朝刊「こちら特報部」「1年で照合は選挙対策」、2007/9/23週刊「サンデー毎日」「不安拡大! もらい損ね「企業年金」の重大欠陥」等の取材を受ける。
◆原稿
ワ-ド(B5・縦書き・183ペ-ジ・63,202文字)
◆お問い合わせは下記までお願いいたします。
年金カウンセラー 高野 義博
連絡先メール:hitosamano@gmail.com
ブログ:http://blog.goo.ne.jp/hitosamano
電子書籍:http://goo.gl/yWTfn7
ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました。
ワ-ド原稿をご希望でしたら、メー.ルでご連絡ください。早速、お送り申し上げます。
3月末まで、ご連絡お待ちいたします。
以上
長いこと 行方不明であったこの資料をひょんなことから発見。
それは1999年米国訪問時に、確かフィデリティのプレゼンテ-ションで配布されたブリーフです。
手のひらに乗る小さなブリーフ(サイズ縦10.8×横7.0cm×16枚・24.9×21.5cm両面刷り八折一枚)で、イリノイ州立大学退職プランを網羅的に解説した資料です。なんでもビックなアメリカにしては真逆な代物です。
その資料を三つほどご覧ください。
(以下略)
このブリ-フは、団体運営者のフィデュシャリ-に基づく受託者責任達成の一環としての活動と思われます。(参考:樋口範雄『フィデュシャリ-[信認]の時代』有斐閣1999年)
全16ぺ-ジをご覧になりたい方、ご連絡ください。ワ-ド(9ペ-ジ)をメ-ルでお送りいたします。
<iframe class="embed-card embed-webcard" title="Amazon.co.jp: Q&A確定拠出年金入門: プロ野球選手よ! 年金はもらうもの? 確定拠出年金シリーズ3/3 電子書籍: 年金カウンセラー 高野 義博: Kindleストア" src="http://hatenablog-parts.com/embed?url=http%3A%2F%2Fgoo.gl%2FYniHyA" frameborder="0" scrolling="no"></iframe>goo.gl
A そお、それなら、三人で〈勝手格付けゲーム〉をしたらどうですか!
Q1 投資をゲームにするの?
A ひとりで投資をやっていると、ひとりよがりになりますから、三人で競い合うのですよ。
Q3 面白そうだね!
Q2 勝手格付けというのは……。
A ええ、英国の資産運用経験と米国の金融理論の成果をミックスしたものです。そのポイントは英国風定性評価を厚く、米国風定量評価を薄くしたものです。
Q1 どう使うの?
A まず始めに、ご自分の投資先業者名と商品名を入れます。次いで、その投資商品についてA~Fまでの評価項目について、1(悪い)~5(良い)点を付けます。勝手にね。とは言え、前項6.のような資産配分状況表に基づいてですが。その上で、
評価項目ごとのウェイトを乗じます。(例えば、評価項目A定性的要素の四〇%を乗じます)
Q1 面白い!
A その計をGに求めます。Gを5点で割って期待達成率とします。その期待達成率を上の表の勝手格付けにランク付けします。
Q3 お見事!
A これで、勝手格付けは終わりです。かなり、主観的でしょ。ポイントは如何に客観性を確保できるかです。でも、確定拠出年金では全てが自分の世界のことですから、自分が使うだけですから、これでいいのかもしれません。独りよがりの危険は残りますけど……。
Q1 私、やって見るわ!
Q3 そういえば、前に新聞で藤沢市が複式簿記にしたとかいうのを見たことがありました。他にも、実験的に取り組んでいるところがあるようですね。
A そうでした。ところで、〈アフリカ諸国・北朝鮮・日本〉で、なにを想像しますか。
Q3 えっ、なんだろう、核保有じゃないし、飢餓国……でもないし、なんだろう。
A ……実は、これは国の会計制度が単式簿記の国々です。未開国なんですよ、日本のインフラは。国民として恥ずかしい限りです。
Q3 ほほっ、ビックリしたなぁ。それが現実なんですか!
A そこへ風穴を開けるのが確定拠出年金の個人勘定です。これを端緒のひとつに日本の公会計もおいおい複式簿記になっていくのでしょう。国際会計基準も入ってくるし。でも、一言付け加えれば、私の経験では、健康保険組合は単式簿記でしたが、厚生年金基金は制度発足(昭和四十一年)以来複式簿記でした。それも、時価会計採用(平成八年)は企業会計より先行しました。
A 新しい確定拠出年金の枠組みは、そこが違うんです。
Q3 そこって、
A つまり、もらうだけでよかったのが、つくるに切り替わったということです。自分で老後資金をつくる仕組みなんですよ。政府や会社は仕組みを用意するだけで、中身は自分で作るわけです。
Q3 そお、……。それって何かいいことありますか?
A メリットですね。ええ、今までにない最大のメリットは〈個人勘定〉だということでしょう。
Q3 なんですか、それは? どんぶり勘定と言うのは聞いたことありますけど。
A そうですね、日本の年金はこれまで全て政府の一括管理、つまりどんぶり勘定だったんです。例えば、「厚生年金勘定」はあっても、その中の自分の年金は幾らというのが不透明な仕組みだったのです。それもこれも、背景に国の会計が単式簿記の小遣い帳方式をベースにしているため、不透明になってしまうのです。
Q3 国の会計が単式簿記なんですか!
A ええ、国だけではなく、県や市町村もです。
Q2 統制経済というのは聞いたことあるけど。
A その統治の仕掛けの数ある中のひとつは、国の会計制度・公会計(税金の使い道を明らかにするため昭和二十二年に法律化された財政法並びに会計法による会計)を、単式簿記(経済的取引を現金出納帳等を用いて記載することで、期中の収支と現時点の残高を簡単に把握できる会計方式。資金の収支重視で、財産・債務は二次的になる。)で行うというものでした。官僚の使い勝手が良い仕組みで、だぶつきや先送りが許容されました。例えば、〈借入れ〉が〈収入〉扱いされる類のものでした。そのような国家統制計画経済(計画を統制する国家運営)の仕掛けによって、復興に取り掛かりました。
Q2 戦後混乱期の緊急措置だったんですかねぇ。緊急が永続化したみたいですけど……。
A その判定は、歴史の審判に任せましょう。国家統制計画経済は経済界の三種の神器と右肩上がり経済と相まって、急速に日本経済を復興させました。一〇年後の昭和三十一年(1956)には「もはや戦後ではない」と言われ、日本型資本主義が成功しました。
Q2 そうでしたか。