建築士だからわかる〇〇教えます

夏のカビ対策

夏に多い相談のひとつがカビの相談です。

基本的にカビはどこにでも存在し、種類も多く、これをすれば大丈夫、というカビ対策はありません。空気中にもカビ菌は浮遊しておりますので、なかなか対処方法は難しいと言えます。
しかしカビにつきましても正しい情報を得るとともに正しく怖がる、正しく対処することが大切です。

■まずカビに対する基本情報をお伝えします。
 カビが繁殖するには4つの要素があると言われています。

・まずひとつめは湿度です。湿度が60%以上になるとカビは繁殖しやすくなると言われています。

・次に温度ですが、カビの多くは0℃〜45℃くらいの温度を好むカビが多く、温度が0℃〜45℃の間の温度帯がカビの繁殖しやすい温度と言えます。しかしカビの種類によりましては45℃以上でも繁殖するカビはおります。

・次に栄養素ですが、カビは家の中にあるほとんどのものを栄養素として繁殖してしまいます。やっかいですね。

・最後に空気(酸素)ですが、カビは好気性と言われており、空気(酸素)があることでどこでも繁殖します。反対に言えば、真空であればほとんどのカビは発生しないということですね。

※つまり、地球上に住んでいる限り空気をなくす(真空にする)ことはできませんし、家の中には栄養素ばかりで、温度も日本の四季を考えますと繁殖しやすい温度帯に我々は生活していると言えます。

そこで、カビを繁殖させないための方策としましては、【湿度を60%以下に抑える】ことが肝要となります。


ここまでがカビの基本的なお話しでした。

私の設計では、壁表面だけでなく、通常は見えなくなる壁内や押し入れ内などの湿度も低く抑えるような設計提案をしております。

既存建物のカビ対策や湿度対策のご相談をいただいた場合は、壁内などの対策はできませんが、室内や押し入れ内の対策として、湿度を上げる要素を極力少なくする、空気の流れをつくりカビが定着・増殖することを避けることを提案させていただきます。

湿度をあげる要素を少なくするとは、押入れ内に生渇きや汗を吸収した状態の布団などを入れない、湯沸かしやお風呂からの水蒸気を換気して外部に逃すなどは基本的なことですがとても大切なことです。空気の流れをつくるために、押入れ内などでは壁と布団との間に隙間をつくったり、スノコを敷いて空気が流れるように工夫する、押入れの扉は両サイドを少し開けた状態にして扇風機などで風を送るなどのご提案をさせていただきます。もちろんリフォームの際は、押入れ内を杉の無垢板で製作したり、中段をスノコ状にする、押入れの建具の上下にスリットを入れて空気の流れを確保するなども可能です。


そのような中で本日は実際に相談を受けた具体的な事例からひとつお話しさせていただきます。
その方はマンションにお住まいの方で、浴室内のカビにお困りでした。

その方のお住まいのマンションには浴室に窓はなく、換気扇は24時間つけているとのことでした。
それなのになぜ浴室の
蓋やコーキング部分にカビが生えてくるのか??とのことでした。


この方の失敗例は、マンションの給気口を開けていなかった、ということです。

特にマンションは気密性が高い建物ですので、窓を閉め切った状態+給気口も閉じた状態でいくら換気扇を回しても空気が外に逃げて行ってくれない状態になります。


単純に部屋に北側と南側に窓がある場合、北側だけ窓を開けていても、空気はあまり入ってきませんね。北側と南側の窓を開けることにより、空気は流れやすくなります。空気が入ってくるところと出ていくところを確保することが大切です。
もちろん窓の場合は上下にある程度の高さがありますので、上下の温度差で空気は入れ替わりますが。
機械換気の場合は、窓の代わりにプロペラで強制的に空気を外に吸いだそうと動いています。しかし空気が入ってくるところがないと、プロペラだけが廻っている状態で空気の流れは発生していない状況になります。
特に夏場の暑い時期ですと、部屋を閉め切りエアコンをつけているご家庭も多いと思います。
そのような状況で、例え小さな給気口と言えども開けておきますと外の熱気が入ってきてしまいます。
ですので給気口も閉め切ったまま換気扇をご使用していた状況でした。

実はこれ、マンションではよくあるお話しなんです。
気密性の高いマンションの場合、窓を少し開けたり、給気口を開けておかないと空気が流れませんので、いくら換気扇を回しても空気が流れず、湿度が高い状態が続きカビが発生してしまう。

私は給気口を開けることとともに、扇風機を浴室前(洗面所)に設置して、浴室内の空気を循環させることをおススメしました。
もちろんその前にカビの胞子が飛び散ってしまっては大変ですので、まずはカビを掃除してなるべく落とし、オレンジシトラールなど自然系の殺菌作用のあるものでカビを減滅させ、その上で、給気口を開けて換気扇を回し、扇風機で浴室内に風を入れる、という流れでご提案させていただきました。

その後、その方のお家の浴室ではカビの発生は比較的抑えられているようです。

ちなみに給気口を開けることにより、夏場の暑い熱気が入り込むことを避けたい場合は、熱交換型の給気システムなどもございます。

カビはアレルゲンでもあります。しかし一方でカビは納豆やお酒などに必要な存在です。
カビのことをよく知り、カビと上手に付き合って参りましょう。

ひと・すまい・くらし
 新井 伸宏


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