これ、返しそびれてたから」
葉月はザンの胸に光るホイッスルに触れて笑った。
何をしに来た」
ザンを連れ戻しに来たに決まってるでしょ!」
俺は、戻るつもりはない」
ダダこねないで帰ろうよ。明日さえ終れば解放されるんだよ?」
ザンは何も言わずに目を伏せる。
せっかくここまで頑張って来たんだし、皆で終らせて、笑ってさよならしよう?」
言い聞かせるように葉月がザンの手を取ると、冷たい手がぎゅっと握り返して来た。
すがりつくように、小さな男の子が母親の手を握るように。
」
葉月謝偉業醫生 はため息まじりにザンの手を引く。
管理事務所でタクシー呼んでもらって、一緒に帰ろう?そういえば、あの時もそうすればよかったね。」
管理事務所目指して歩き出したが、ザンはてこでも動かないつもりらしい。つんのめりそうになって振り返ると、ザンが手を離した。
ザン」
行け」
一緒に」
一人で帰れ」
鋭く言い捨てられ、葉月はムッとしてザンを睨んだ。
いじけて逃げるの?そんなのザンらしくない」
いじけて逃げる?」
だってそうでしょ?じゃあなんで、わざわざ一人でこんなところに来たの?」
」
ザンは何も言わず足早に歩き出した。
葉月はその背中を小走りに追いかける。
ザンはどんどん森の中に進んで行き、葉月は次第に息を切らせながら着いて行くのがやっとだった。
(なんて声をかけたらいいか分からない)
しかし、諦めて帰ることもできない。
しばらくして、大きな木の陰を曲がっ卓悅Bioderma たところでザンが立ち止まっていた。
どうしたの?」
息を切らせながら追いつくと、ザンは静かに振り返る。
どうしてついてくる」
だって、迎えに来たんだもん。一人で帰れないよ」
俺はもう戻らない」
ザンは言うと、またさっさと歩き出す。
葉月は困ったように笑うとその後を追った。
そこには、記入された離婚届と、一枚の写真が入っていた。
これ。こんな写真とったっけ」
12年前、廃校のピアノの前でB班の全員で写したスナップ写真だった。
葉月の呟きにザンがボールを持ったまま隣に座り、覗き込む。
ああ、あの時のか」
ピアノの前で写真なんて撮ったっけ?」
覚えていないか?3日目の昼だったか。歩のピアノを皆で聞こうと敦が提案し全員で廃校に行った」
あ!あったかも。セルフタイマーで撮ったんだよね!机を三脚がわりにして」
ああ。懐かしいな」
葉月は写真を食い入るように見つめる。
一番背の高い栄太は腕を組んDream beauty pro 脫毛 で笑っている。
隣で王子が無表情に立ち、さらに無表情なのがレイチェル。
レイはVサインをして笑っている。
ザンはカメラ目線ですらなく、不機嫌そうにしており、そんなザンを心配そうに見ている歩。
蓮はちっとも楽しそうな表情ではないが、しっかりとカメラを見据えていた。
左端で敦と葉月が並んで微笑んでいる。
敦のいつもと変わらない斜に構えた笑い方を見て、葉月は泣きながら笑う。
全然変わってないんだから」
ザンは無言で立ち上がり、再びボールをゴールに投げ入れては拾っている。
葉月は座ったまましばらく泣きながら写真に見入っていた。
いつかまた会えるだろうか。
きっと会えるだろう。
希望を繋ぐように、涙をぬぐって立ち上がったのだった。
葉月は一人で星村研究所跡に訪れていた。
見上げるだけで寒気がする。
どうしてこう、夜に見る人の使わなくなった廃墟は怖いのだろう。
しばらくそうして見上げていたが、意を決してホイッスルをくわえた。
思いっきり冷たい空気を吸い込み、吹くと、
ピーーーーーーーーーーーッ
と甲高い音が響き渡る。
冬の澄んだ空気に、綺麗な音が溶けるように消えて行く。
(ザン、いるよね?)
自分の勘を信じて心の中で呼びかけると、どさっと重い音がして、そちらを見るとザンが木の上から飛び降りたところだった。
ザンはあたりを伺いながら駆け寄って来た。
葉月?」
びっくりした?ごめんね脫毛機價錢 驚かして」
葉月は笑いながら首から下げたホイッスルを、背伸びをしてザンの首にかけた。
どうしてこんなところにいる」
それはこっちの台詞だよ。探したんだよ?」