ある家の耐震診断の報告後、区役所に完了の届を出してきた。
耐震診断後、耐震補強の工事をすると、区から補助金が出るのだけど、工事後、構造評点が「1.0」を超えないと、補助金が出ない。そのハードルはとても高い。
たいがいの家は、構造評点「1.0」を下回る。
(*「1.0」とは、「一応倒壊しない」というレベル)
改修して「1.0」以上にするには、それなりに金額がかかる。「1.0」以下であればあるほど、その金額は大きくなる。そうすると、そこまで予算をかけるなら、建て替えたほうがいいかも、となってしまう。だから、住宅レベルで補助金をもらって耐震改修をするという状況も進展しないのだと思う。
耐震補強は、建物全体を行わなければ意味がない。
それはそうなのだけど・・・・
でも、部分的にやったとしても、それはやらないよりはいい。大地震の時、瞬間的につぶれてしまうのと、多少でも時間かせぎができるのとでは、人の命が助かる確率は確実に違ってくるはず。
行政が耐震改修に補助金を出すのは、「つぶれない家」にするためだという。
では、現在作られている家がすべてつぶれないかというと、必ずしもそうではない。間口の狭い土地の建売に多くにみられる、1階の道路側に車庫のある家、のどれだけがつぶれないのか、はなはだ疑問を感じる。
自治体によっては、構造評点「1.0」にならなくても、補助金を出すところが出てきている。
本来、それが正しいと思う。やらないよりやったほうがいいのだから。。。
古い家の場合、間取りや「明るいほうがいいから」と、壁少なく窓だらけの家、が多い。
構造評点は確実に低い。それを構造評点「1.0」にするように直すなら建て替えたほうがいいとなるかもしれない。けれど、それはお金があり、またローンが組めるなら、できる。そうでない場合、、、うやむやになってしまう。
でも、「1.0」にならなくても、全部やらなくても、、いくつかの壁を増やすことができれば、それは「倒壊しない」方向に向かうのだ。
大地震で、中途半端に家が残っても・・・、また別の問題があるのだけど、、、、
命がなくなってしまっては、、、何もない。。
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耐震改修という名の「家を直す」という行為は、なんだか気分が重く、顔をしかめてしまうが、、本来「家を直す」ということは、もっと楽しい事であって欲しい。たとえ、キッチンを直すでも、風呂を直すでも、そこには夢がある。そのついでに幾つかの壁も直す、と考えてもらえばいいと思う。
やっただけ、家はよくなる。。。
それは、家の構造とともに、暮しも楽しくなり、、、、家族の笑顔も増えるから。。
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最初の写真は世田谷区役所。
もうずいぶんと年季の入った庁舎だけど、あちこち補修や耐震改修がされ、使い続けられている。きっと、設計者が見たら怒ってしまうかもしれないけど、でも建物が存続する事は、大きくなったケヤキとともに作られた時間と空間が存続する事になる。ぎょっとする耐震補強がされているけれど、それもまた、将来、もっと違う考え方がでてくるかもしれない。。
今、ここをなくさない。。建物の寿命が来るまで。。。
そんな事でいいと思う。。
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壁を増やす・・・・
これは、窓が壁になればいい、というわけではありません。
構造として、きちんと力を持つものにならくてはいけないのです。
できれば、耐震改修をしっかりできる業者さんなり、設計事務所に、相談される事をお勧めします。