作業ってなあに?

作業療法士のこと、作業のことなどについて知ってもらいたいと思い書いてみます

作業と社会参加

2022-06-14 18:59:00 | 日記
先日「歌声喫茶」を開催しました。

毎月「夕食会」というイベントを開催しており、それに参加されたデイサービスの利用者さんからの提案で企画しました。


そもそも何故「夕食会」を開催しているかというと、理由は2つあります。
一つは、夕食を1人で食べる高齢者が多いのではと思ったこと。もう一つは、デイサービスでお友達になった人とデイサービス以外の場所で食事をする機会があればいいのにと思ったからです。

そんな夕食会の参加者から「歌声喫茶をやりたい」との声が出たことはとても嬉しく、ぜひ実現したいと思いました。
提案してくれた方が選曲や進行の仕方を考えてくれました。さらに若い頃ギターを弾いていたとのことで、演奏もかって出てくれました。ピアノ演奏の方とコードを合わせたり楽譜を探したり、音合わせをしたりと主体的に動いてくれました。

当日、デイサービスの利用者さんが5人も参加してくれました。皆さんとても楽しそうに活き活きと大きな声で歌ってくれました。

今回の歌声喫茶は送迎サービスをつけなかったため、普段デイサービスを利用されている方にとって移動手段は大きな挑戦となりました。巡回バスやタクシーの利用、家族に送り迎えをお願いするなど、それぞれの手段を駆使して参加してくれました。

今回、歌声喫茶というイベントを企画して感じたこと。「歌を歌う」という作業を通して、人と人とのつながりや、地域とのつながりにまで広げることが出来る。人に楽しんでもらうために自分の出来ることを一生懸命やることの楽しさ。人の役に立つことのできる幸せ。

デイサービスの利用者さんが社会参加できる場をもっと作っていくことが作業療法士の役割なのかな、と思いました。

作業と平等な作業機会

2022-05-15 21:29:00 | 日記
作業をする権利は誰もが平等に持つことが望ましいとされています。しかし、良い生活を送るために必要な作業は人それぞれ違います。

  私は、本を読んだり車で自然を見に行くことが大事な作業です。そのために車は必要な財です。お洒落にはあまり興味がないため洋服や鞄、化粧品などは必要最低限あればよいです。

  昔はテレビ、洗濯機、冷蔵庫が三種の神器と言われ、それらを手に入れることが多くの人にとって憧れであり目標でした。理想の生活という形がある程度決まっていたのです。
  しかし今、理想の生活は人それぞれです。手に入れたい物も、目に見える財だけではなく、サービスと言われる目に見えない物を大事にしたい人も多くいます。
 
  どのような作業をすることが、その人にとって良い生活なのか。そのために必要な物(目に見える物だけではなく見えない物も)を全ての人に平等に与える機会を得ることができるようにすることが作業療法士の役割だと思います。



作業と自己効力感

2022-04-29 10:13:30 | 日記
高齢や病気によりやりた作業をあきらめてしまうことがある。
デイサービスに通っている方にも「こんな体になったらもう畑はできない」「娘に外に出ることを禁止されている」「若いころあちこち行ったからもう旅行はいい」など、作業をあきらめていると思われる発言が多く聞かれる。

作業をあきらめてしまう要因には、自信の喪失や失敗体験、自己効力感の低下などがあるのではないだろうか。私たちが「できるのでは」と思うことでも本人が「できない」と思えば、作業を実行することは難しい。私たちが「うまくできているのに」と思っても、本人が「できていない。思う仕上がりと違う」と思えば、その作業の満足度は低くなってしまう。

では、どうしたら「できる」という気持ちを引き出すことができるのだろうか。
その人にとって大切な作業であること、明確な目標があること、自分の役割であると自分が期待していることなどが挙げられる。これらを対話の中で明らかにすることで「できる」という気持ちを高めることができるのです。

「できる」という実感を持って作業を行えば、自己効力感も高まり自分らしい生活を送ることができるようになるのではないでしょうか



認知症と作業

2022-04-17 21:47:00 | 日記
認知症になると「怒りっぽくなる」「自分で決めることは出来ない」「色々なことがわからなくなる」という認識がありませんか?好きなこと、やりたいことがあっても「危ないからやめておいた方がいい」と説得するのではないでしょうか。

今日、認知症の方の話を聞く機会がありました。認知症になると本人に話を聞いてくれる人は少なくなり、家族や支援者に話しを聞く。普通の会話はしてもらえず「体調はどうですか?」「ご飯は食べれていますか?」「今日は何月何日ですか?」と尋問ばかりされる。

認知症になっても好きなことはしたいし、やりたいことは自分で選びたい。出来ることもある。確かにその通りですよね。

自分らしい生活を送る権利は、例え認知症であっても守られて当たり前だと思います。好きな作業をして、出来ることは自分でする。どう生活するのか自分で選ぶ。
出来ないことは助けてもらったり、工夫したりしてやる。自分で伝えたり、どう工夫したらいいのか分からない、何が困っているのか分からない。そういう方たちと対話を通して自分らしい生活ができるよう支援する。作業療法士はサポーターではなくパートナーでありたい。そう思いました。

役割と居場所

2022-04-08 20:30:00 | 日記
デイサービスに通い始めばかりの方は「家に帰りたい」「今日は休みたい」と言われる方が多くいらっしゃいます。
何をしたらいいのか分からず、何となく落ち着かなかったりするのです。そんな方には、故郷のこと、家族のこと、仕事のこと、趣味、日課などをお聞きします。
そこから、その方の意味ある作業を探っていきます。

昔と同じようにできなくても、全部できなくても、一人でできなくてもいいのです。やり方を変えたり、誰かと一緒にやったり、その作業をやっている人のそばで見ているだけでもいいと思います。

そこから少しずつその方のことが分かってきます。自分のやりたいことや、好きな作業に関われる時間があればデイサービスで過ごす時間が少しずつ楽しいものになっていきます。すると「帰りたい」「休みたい」という気持ちは減ってくるのではないでしょうか?
役割、やることがあると、そこが居場所になるのです。