今回は、高速走行時のステアリング(ハンドル)や車体に発生する振動と、
走行速度の関係に付いてお話ししたいと思います。
その前に、タイヤ編(2)に於いて、高速ユニフォーミティでのタイヤ速度の単位がkm/hで、
低速ユニフォーミティでのタイヤ回転数の単位がr/minでは、比較が難しいと思われた方への説明です。
タイヤ回転数の単位はr/min(Revolutions per minute)ですから、1分間当たりの回転数と言う事になります。
タイヤ速度(km/h)は、タイヤの直径(mm)を基に1回転に相当する周長(mm)を求め、
タイヤ回転数(r/min)を掛け、単位換算をして速度(km/h)を求めます。
中学の理科か、高校の物理の授業でこんな式を習ったと思います。
V (m/min) = π x D (mm) x N (r/min) / 1000 ・・・①
但し、速度 = V (m/min)
円周率 = π 円の周長 / 円直径 = 3.14159
円直径 = D (mm)
回転数 = N (r/min)
分母の1000は円直径(mm)の単位をメートル(m)に換算する
実際のタイヤ仕様に当てはめて、タイヤ回転数60(r/min)が速度(km/h)になるか求めてみましょう。
ここでは、タイヤ直径=D (mm) = 2 x r (mm)とします。 r = タイヤの動的負荷半径
動的負荷半径とは、実際の走行距離から算出したタイヤの有効半径を言い、
タイヤ1回転当たりの走行距離を2πで割って求めます。
走行距離をLとすると、
タイヤ1回転当たりの走行距離は L = π x D = π x 2 x r ・・・②ですから、動的負荷半径は r = L / 2π となります。
何故、動的負荷半径で計算するのかと言うと、
ユニフォーミティ測定機は、タイヤを走行時と同じ状態に近づけて測定するからです。
タイヤは車の重量によって路面との接触面は撓み、
見かけのタイヤ半径(静的負荷半径)はタイヤサイズにも寄りますが、
無負荷時のタイヤ半径に比べ5~8%程度小さくなります。
又、走行距離からみたタイヤ有効半径(動的負荷半径)はタイヤサイズにも寄りますが、
静的負荷半径より4~6%程度大きくなります。
一般ユーザーが動的負荷半径を求めるのは大変ですから、
一般社団法人 日本自動車タイヤ協会が発行する「JATMA YEAR BOOK 」を参考にします。
*「JATMA YEAR BOOK 」は一般社団法人 日本自動車タイヤ協会から購入する必要があります。
例えば、タイヤサイズが215/45R17の場合ですと、
静的負荷半径は基準寸法が290(mm)、許容差±5(mm)で、動的負荷半径は304(mm)と記載されています。
では①、②の式を参考に速度を求めてみます。
V (m/min) = π x D (mm) x N (r/min) / 1000
= π x 2 x r (mm) x N (r/min) /1000
= 2π x 304 (mm) x 60 (r/min) /1000
= 114.6053 (m/min)
速度Vの単位をm/minからkm/hに換算します。
V (km/h) = 114.6053 (m/min) x 60/1000 =6.8763 (km/h) ≒ 7 (km/h) になります。
人の歩く速度が凡そ5km/hだと言われていますから、それよりも若干早い速度であり、
低速ユニフォーミティ測定では、アンバランスによる影響が抑えられると言う訳です。
但し、タイヤの使われ方としては、一般道路では40~60km/hで、高速道路では80~100km/hで走行します。
追い越しともなれは120km/h程度は出しますから、低速走行時に比べてユニフォーミティは高くなります。
又、高速走行時の方がタイヤの表面温度は上昇し変形し易い状態ですから、ピーク値と位相も変わってしまいます。
この様に、高速ユニフォーミティは、低速ユニフォーミティとは全く異なるものとなってしまうのです。
タイヤ編(1)でも紹介した様に、高速ユニフォーミティは測定時間が長くなり、生産ラインでは難しい面があります。
タイヤメーカーでは、同一のタイヤを生産ロット毎に100~200本程度選定して、低速から高速までのユニフォーミティを測定します。
その測定したデータを基に、アンバランス量と位相、RRO等の振れも加味しながら運動方程式や統計手法を用い、
高速ユニフォーミティを予測する方法を取り入れています。
高速ユニフォーミティの予測に対する相関係数は、
RFVが0.85~0.95、TFVが0.65~0.75、LFVが0.80~0.90程度と記憶しています。
・・・現在はもう少し精度が向上しているかも知れません。
・・・其々、相関係数が異なるのは、
RFV(上下方向力)は、路面(測定機ではドラム等)で一定の拘束を受けるのに対して、
TFV(前後方向力)は、路面(測定機ではドラム等回転接線方向)に対して平行に加振力が作用するため拘束が効き難い状態で、
LFV(車軸方向力)は、タイヤ・ホイールを固定するスピンドル(回転軸)をベアリング(軸受)で支えます。
そのベアリング(軸受)の剛性や予圧に影響され易い面があり、RFVより相関係数が若干低下する傾向にあります。
*あくまで測定機開発で得た個人的な意見です。
特に剛性に付いては、スピンドル(回転軸)、軸受台や取付ベースも関係します。
この様な結果から見ると正確な予測値を求める事は難しく、
辛うじて予測したRFV値が実測値に近い傾向にあると判断できる程度で、
実測値に近い予測値を求めるならば、公差幅を見込んでも相関係数は0.985以上必要かと思います。
国内外の主要タイヤメーカーでは、高速ユニフォーミティの予測に関する特許を幾つも保有しています。
特に相関係数が強いRFVに関する予測システムは、特許を見る限り製造設備に搭載されていると思われます。
・・・工場見学では予測システムに付いての説明は無く,実際に設備を稼働させているかは判りませんでした。
・・・最近は海外メーカーの出願が多い傾向にありますが、
国内メーカーでは10年以上前に出願・登録が多く、やや出し尽くした感が有ります。
高速ユニフォーミティの予測に付いては、国内メーカーでは東洋ゴム、ブリヂストン、横浜ゴム、住友ダンロップ、
海外メーカーではミシュランが力を入れていました。
では、今回の本題に入ります。
ステアリング(ハンドル)や車体に発生する振動は凡そ4種類に分ける事ができます。
①シミー(Shimmy)・・・走行中にハンドルが回転方向に振動する現象で、車速依存が強い振動で低速シミーと高速シミーに分けられます。
低速シミー(Low Speed Shimmy) 別名:ウォッブル(Wobble)は、速度40~70km/h(6~10Hz)で発生します。
路面の凹凸、タイヤ・ホイールのアンバランスやアライメントの狂い、ステアリング系のがた等により、
キングピン周辺のばね下質量の自励振動が発生要因になります。
高速シミー(Hight Speed Shimmy) 別名:フラッター(Flutter)は、速度90~140km/h(13~20Hz)で発生します。
タイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティによる加振力に起因する強制振動が発生要因になります。
強制振動の場合、サスペンションからステアリングまでの伝達系ごとの固有振動数により、
車速と伝達系の固有振動数が合致すると共振となり振動は大きく、固有振動数から外れると振動は小さくなります。
②シェイク(Shake)・・・車体全体が振動することにより、ステアリングが振動する現象です。
速度50~120km/h(7~17Hz)で発生します。
路面の凹凸、タイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティによる加振力が発生要因で、
シミーとは違い、前輪と後輪で振動が発生します。
③ステアリング上下振動(Steering Vertical Vibration)・・・ステアリングが上下方向に振動する現象です。
速度100~180km/h(14~25Hz)以上で発生します。
速度上昇に伴い振動が強くなる傾向があり、タイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティによる
加振力などが発生要因です。車体の曲げ剛性やハンガー部の共振周波数に影響されます。
④ステアリング微振動(Steering Micro Vibration)・・・ステアリングが「ビィー」と高周波音と共に微振動する現象です。
速度100~160km/h(14~23Hz)で発生します。
シミーやステアリング上下振動に高周波振動が付加されて発生します。
ユニフォーミティや車体剛性の高周波成分が影響します。
*上記に挙げた車速度は参考値で、車体剛性やタイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティなどに
よってばらつきがあります。
これらの振動対策は非常に難しく、タイヤ・ホイールのバランス修正や、ユニフォーミティ修正の為に
タイヤとホイールの位相合わせを行い、それでも修正出来ない場合はタイヤ又はホイールの交換を行います。
又、共振が影響する場合は、車体を含む駆動装置のねじの増し締めや補強対策が必要となるからです。
*この辺りの話しは自動車整備の業務をされている方が詳しいと思います。
差支え無ければご教示をお願い致します。
次回は、ユニフォーミティ測定機の機構部に付いてのお話しです。
*多分、今回の補足から始まる様な気がします。
走行速度の関係に付いてお話ししたいと思います。
その前に、タイヤ編(2)に於いて、高速ユニフォーミティでのタイヤ速度の単位がkm/hで、
低速ユニフォーミティでのタイヤ回転数の単位がr/minでは、比較が難しいと思われた方への説明です。
タイヤ回転数の単位はr/min(Revolutions per minute)ですから、1分間当たりの回転数と言う事になります。
タイヤ速度(km/h)は、タイヤの直径(mm)を基に1回転に相当する周長(mm)を求め、
タイヤ回転数(r/min)を掛け、単位換算をして速度(km/h)を求めます。
中学の理科か、高校の物理の授業でこんな式を習ったと思います。
V (m/min) = π x D (mm) x N (r/min) / 1000 ・・・①
但し、速度 = V (m/min)
円周率 = π 円の周長 / 円直径 = 3.14159
円直径 = D (mm)
回転数 = N (r/min)
分母の1000は円直径(mm)の単位をメートル(m)に換算する
実際のタイヤ仕様に当てはめて、タイヤ回転数60(r/min)が速度(km/h)になるか求めてみましょう。
ここでは、タイヤ直径=D (mm) = 2 x r (mm)とします。 r = タイヤの動的負荷半径
動的負荷半径とは、実際の走行距離から算出したタイヤの有効半径を言い、
タイヤ1回転当たりの走行距離を2πで割って求めます。
走行距離をLとすると、
タイヤ1回転当たりの走行距離は L = π x D = π x 2 x r ・・・②ですから、動的負荷半径は r = L / 2π となります。
何故、動的負荷半径で計算するのかと言うと、
ユニフォーミティ測定機は、タイヤを走行時と同じ状態に近づけて測定するからです。
タイヤは車の重量によって路面との接触面は撓み、
見かけのタイヤ半径(静的負荷半径)はタイヤサイズにも寄りますが、
無負荷時のタイヤ半径に比べ5~8%程度小さくなります。
又、走行距離からみたタイヤ有効半径(動的負荷半径)はタイヤサイズにも寄りますが、
静的負荷半径より4~6%程度大きくなります。
一般ユーザーが動的負荷半径を求めるのは大変ですから、
一般社団法人 日本自動車タイヤ協会が発行する「JATMA YEAR BOOK 」を参考にします。
*「JATMA YEAR BOOK 」は一般社団法人 日本自動車タイヤ協会から購入する必要があります。
例えば、タイヤサイズが215/45R17の場合ですと、
静的負荷半径は基準寸法が290(mm)、許容差±5(mm)で、動的負荷半径は304(mm)と記載されています。
では①、②の式を参考に速度を求めてみます。
V (m/min) = π x D (mm) x N (r/min) / 1000
= π x 2 x r (mm) x N (r/min) /1000
= 2π x 304 (mm) x 60 (r/min) /1000
= 114.6053 (m/min)
速度Vの単位をm/minからkm/hに換算します。
V (km/h) = 114.6053 (m/min) x 60/1000 =6.8763 (km/h) ≒ 7 (km/h) になります。
人の歩く速度が凡そ5km/hだと言われていますから、それよりも若干早い速度であり、
低速ユニフォーミティ測定では、アンバランスによる影響が抑えられると言う訳です。
但し、タイヤの使われ方としては、一般道路では40~60km/hで、高速道路では80~100km/hで走行します。
追い越しともなれは120km/h程度は出しますから、低速走行時に比べてユニフォーミティは高くなります。
又、高速走行時の方がタイヤの表面温度は上昇し変形し易い状態ですから、ピーク値と位相も変わってしまいます。
この様に、高速ユニフォーミティは、低速ユニフォーミティとは全く異なるものとなってしまうのです。
タイヤ編(1)でも紹介した様に、高速ユニフォーミティは測定時間が長くなり、生産ラインでは難しい面があります。
タイヤメーカーでは、同一のタイヤを生産ロット毎に100~200本程度選定して、低速から高速までのユニフォーミティを測定します。
その測定したデータを基に、アンバランス量と位相、RRO等の振れも加味しながら運動方程式や統計手法を用い、
高速ユニフォーミティを予測する方法を取り入れています。
高速ユニフォーミティの予測に対する相関係数は、
RFVが0.85~0.95、TFVが0.65~0.75、LFVが0.80~0.90程度と記憶しています。
・・・現在はもう少し精度が向上しているかも知れません。
・・・其々、相関係数が異なるのは、
RFV(上下方向力)は、路面(測定機ではドラム等)で一定の拘束を受けるのに対して、
TFV(前後方向力)は、路面(測定機ではドラム等回転接線方向)に対して平行に加振力が作用するため拘束が効き難い状態で、
LFV(車軸方向力)は、タイヤ・ホイールを固定するスピンドル(回転軸)をベアリング(軸受)で支えます。
そのベアリング(軸受)の剛性や予圧に影響され易い面があり、RFVより相関係数が若干低下する傾向にあります。
*あくまで測定機開発で得た個人的な意見です。
特に剛性に付いては、スピンドル(回転軸)、軸受台や取付ベースも関係します。
この様な結果から見ると正確な予測値を求める事は難しく、
辛うじて予測したRFV値が実測値に近い傾向にあると判断できる程度で、
実測値に近い予測値を求めるならば、公差幅を見込んでも相関係数は0.985以上必要かと思います。
国内外の主要タイヤメーカーでは、高速ユニフォーミティの予測に関する特許を幾つも保有しています。
特に相関係数が強いRFVに関する予測システムは、特許を見る限り製造設備に搭載されていると思われます。
・・・工場見学では予測システムに付いての説明は無く,実際に設備を稼働させているかは判りませんでした。
・・・最近は海外メーカーの出願が多い傾向にありますが、
国内メーカーでは10年以上前に出願・登録が多く、やや出し尽くした感が有ります。
高速ユニフォーミティの予測に付いては、国内メーカーでは東洋ゴム、ブリヂストン、横浜ゴム、住友ダンロップ、
海外メーカーではミシュランが力を入れていました。
では、今回の本題に入ります。
ステアリング(ハンドル)や車体に発生する振動は凡そ4種類に分ける事ができます。
①シミー(Shimmy)・・・走行中にハンドルが回転方向に振動する現象で、車速依存が強い振動で低速シミーと高速シミーに分けられます。
低速シミー(Low Speed Shimmy) 別名:ウォッブル(Wobble)は、速度40~70km/h(6~10Hz)で発生します。
路面の凹凸、タイヤ・ホイールのアンバランスやアライメントの狂い、ステアリング系のがた等により、
キングピン周辺のばね下質量の自励振動が発生要因になります。
高速シミー(Hight Speed Shimmy) 別名:フラッター(Flutter)は、速度90~140km/h(13~20Hz)で発生します。
タイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティによる加振力に起因する強制振動が発生要因になります。
強制振動の場合、サスペンションからステアリングまでの伝達系ごとの固有振動数により、
車速と伝達系の固有振動数が合致すると共振となり振動は大きく、固有振動数から外れると振動は小さくなります。
②シェイク(Shake)・・・車体全体が振動することにより、ステアリングが振動する現象です。
速度50~120km/h(7~17Hz)で発生します。
路面の凹凸、タイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティによる加振力が発生要因で、
シミーとは違い、前輪と後輪で振動が発生します。
③ステアリング上下振動(Steering Vertical Vibration)・・・ステアリングが上下方向に振動する現象です。
速度100~180km/h(14~25Hz)以上で発生します。
速度上昇に伴い振動が強くなる傾向があり、タイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティによる
加振力などが発生要因です。車体の曲げ剛性やハンガー部の共振周波数に影響されます。
④ステアリング微振動(Steering Micro Vibration)・・・ステアリングが「ビィー」と高周波音と共に微振動する現象です。
速度100~160km/h(14~23Hz)で発生します。
シミーやステアリング上下振動に高周波振動が付加されて発生します。
ユニフォーミティや車体剛性の高周波成分が影響します。
*上記に挙げた車速度は参考値で、車体剛性やタイヤ・ホイールのアンバランスやユニフォーミティなどに
よってばらつきがあります。
これらの振動対策は非常に難しく、タイヤ・ホイールのバランス修正や、ユニフォーミティ修正の為に
タイヤとホイールの位相合わせを行い、それでも修正出来ない場合はタイヤ又はホイールの交換を行います。
又、共振が影響する場合は、車体を含む駆動装置のねじの増し締めや補強対策が必要となるからです。
*この辺りの話しは自動車整備の業務をされている方が詳しいと思います。
差支え無ければご教示をお願い致します。
次回は、ユニフォーミティ測定機の機構部に付いてのお話しです。
*多分、今回の補足から始まる様な気がします。
大変参考になります。
貴重な情報ありがとうございます。
アフターマーケットでタイヤユニフォミティに拘り
組み付けしております。
ユーザーや販売店にユニフォミティの概念を広げようと啓蒙活動しております。