「人間って、死ぬもんなんだよね……」

私が明日、死ぬとわかったら「自分にも相手にも優しくなる」
人間は、いつ死ぬかわからないんだ…みんなに優しくしよう。

ーーー『美は世界を救う』とロロ-メイが答えた…第八章、創造的精神… 02

2013-04-03 19:19:28 | 「美は世界を救うか」『美は世界を救う』
(P.135~)

創造的な活動に たずさわっている人間の精神について探求してみたいと思います。

この創造する力ーーーすべての人間が もっているのですが、その もっている度合が違っていますーーーというものは、本質的にいえば、混沌のなかに フォーム (形式-かたち) を 見つける ちからであり、まったく かたちのないところに形式 (フォーム) を創りだす能力なのです。
そこから 美が導き出されます。
というのは、美とは そのフォーム(形式) なのですから。

美は 宇宙のなかに ひとつの形式(フォーム) を 作り出しますーーーケプラーの言葉を 借りるならば、軌道の調和 ですが。
それは、遊星の旋回のなかに存在する 形式(フォーム) なのです。
それは、私たち自身の からだの曲線と バランスのなかに存在する形式(フォーム) なのです。
そして とくにそれは、私たちの 世界を見る 見方のなかに存在しているものなのです。
というのは、私たちは、世界を知覚するという まさにその行為のなかで、世界に 形式(フォーム) を与え、その形式(フォーム) を 作り変えていくからです。
そのために必要な 想像力は、人間を 人間らしくする ひとつの要素なのです。

さて「形式(フォーム)」という言葉は、難しい言葉です。
難しい ひとつの理由は、人間が 現代社会において その言葉を、安っぽく使っているからなのです。
私たちは、形式(フォーム) が 私たちの生きることのなかで 最も重要な局面であることを忘れて、あるものを「単なる形式性」と呼んだりします。
また、興味深いものを「生命力」などと呼ぶ反面、」形式的にすぎないものといった、バカにした 言い方をします。
あるいは、「空虚な形式」よりも「実質」などとも言います。
こうしたことが すべて、とんでもない誤解を 生み出しているのです。

こうしたこととは反対に 私たちは、形式を「本質」(essence) として、私たちが 取り扱っているものの 自然の性質として 見なければならないのです。
ウェブスターの 辞書のなかの説明を見ると わかりやすくなるかもしれません。
「形式は 事物の 本質的な 性質で あり、それが 具体化 されている 物質とは 区別されます」と。

私たちは、プラトンが、本質についての観念を 天国に おいていたことを思い出します。
彼は それをまさに形式と呼んだのです。
形式は、さもなければ ただの混沌であるものに与えられた パターンであり、イメージであり、秩序なのです。
形式は、人間の生活の 非物質的な 構造であり、私たちは それを基盤にして 生きているのであり、私たち自身の 特定の性格も それを基盤にしているのです。

フランク-バロン (Frank Barron) は、とくに創造的な 人々について研究を すすめた人です。
バロン博士は、創造的な人びとと、その対照群としての、とくに創造的でない人びとに、自分の作ったカードーーーたくさんの さまざまな絵が 描かれているカードーーーを 見せて、そのなかから自分の 一番好きなカードを 選び出すように させました。
創造的でない人びとのグループは、規則正しい絵が描かれたカードを選びました。
彼らは、明確で、理解しやすく、混乱していない絵を 選んだのです。
しかし創造的な 人びとは、混沌としたカードを選びました。
創造的な人びとの 最も顕著な特徴は、この 混沌を好むということでした。

彼らは、まったく形式の見られないような 走り書きのようなものを 好むのです。
混乱のなかに チャレンジを見るのです。
そのなかから 形式を作り上げようとするのです。
ヘンリー-ミラー(Henry Miller, 1891-1980) の言葉を借りれば、「自分のまわりの混沌に、自分自身の秩序を作る」のです。
それが 彼らの生きる目的なのです。
とくに 才能に 恵まれていようといまいと、これが、あらゆる人間の 基本的な創造性の 局面なのです。

人間の想像力は、物事を 形式のなかに おさめようという、こうした努力のなかに あらわれてきますーーーそれは、ときには情熱であり、ときには ただの好奇心にすぎないかもしれませんが。
アインシュタイン(Albert Einstein,1879-1955) が、物質とエネルギーとの間の関係は、E=mc2 という公式で 示されると 主張したときに、彼は まさにこのことを やっていたのです。
人間の精神は、明らかに より少ない度合ですが、いつでも このことをやっているのです。


(つづく)


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