それぞれ、テキストを載せておきます。末尾に結末を追記。
平成25年12月4日
愛媛県議会議長
竹田祥一 様
伊方原発環境安全管理委員会と同・原子力安全専門部会の傍聴者に対し身分証明書を提示させることを止めさせるよう県知事に申し入れることを求める請願
原発さよなら四国ネットワーク
住所
事務局 小倉 正
紹介議員 阿部悦子
【請願内容】
私たち原発さよなら四国ネットワークは、伊方原発の存在に不安を抱き、その再稼働はさせてはならないと考えており、メンバーは、毎回の標記委員会の傍聴を欠かさぬよう可能な限り傍聴をしております。
さて、標記専門部会は11月19日に実施された委員会の前の回からか、傍聴者への身分証明書の提示を求めるようになっています。
しかし、これは傍聴への条件を増やすことで傍聴への敷居を上げ、県民の知る権利を阻害するものです。また、身分証明書を持たない県民は傍聴できないということになります。何をもって身分証明書とするかは職員によって違っていました。
前回の委員会で、私たちの会のメンバー3名は身分証明書の提示を拒否し、県職員によって会場への入室を阻止されました。
この時私たちは身分証明書の提示を求める理由を尋ねましたが、理由としては1.申し込み者と来場者の一致の確認のため、2.議事の円滑な進行のため、とのことでした。実際にはfax申込用紙の原紙やメールでのやりとりをプリントアウトしたものを持参すれば、1.の目的は果たすことができます。2.については「身分証明書」は議事の円滑な進行を保証するものではありません。
また身分証明書の提示を求める法的根拠についても尋ねましたが回答はありませんでした。
伊方原発への新規制基準の審査が進行している現在、多くの国民がその再稼働について不安を持っています。このような状況下で、県の立場でその安全性について審議する委員会の県民傍聴は、最大限開かれたものにすべきだと私たちは考えます。
よって以下を請願いたします。
【請願事項】
伊方原発環境安全管理委員会と同・原子力安全専門部会への傍聴に際し、身分証明書の提示を求めることを止めさせるよう、県知事に申し入れてください。
平成25年12月4日
愛媛県議会議長
竹田祥一 様
伊方原発の再稼働に慎重な審議を求める請願(その1)
原発さよなら四国ネットワーク
住所
事務局 小倉 正
紹介議員 阿部 悦子
佐々木 泉
【請願内容】
さきの12月1日には全国から主催者発表8000人もの人々が「No NUKES(ノーニュークス)えひめ」の集会に集まり、雨の中デモを行いました。全国の人々の目は伊方原発を初めとする各地の原発の再稼働に集中しています。
また、最近自民党の小泉元総理が「即時脱原発」を提唱している中で語っているとおり、脱原発へ舵を切るかどうかの政治決断をするのなら、全原発が止まっている今こそが判断に最良な時期です。
その、国の基本方針が定まっていない現状で、技術的な安全性のみの評価に基づいて先陣を切って再稼働を始めたならば、事故の際には(その事故がどの原発で起ころうと)悔いを末末代まで残すことになります。
【請願事項】
伊方原発を全国の原発再稼働の一番乗りとしないよう、県議会での慎重な審議を求めます。
平成25年12月4日
愛媛県議会議長
竹田祥一 様
伊方原発の再稼働に慎重な審議を求める請願(その2)
原発さよなら四国ネットワーク
住所
事務局 小倉 正
紹介議員 阿部 悦子
佐々木 泉
【請願内容】
伊方原発は原子力規制委員会において、技術的な難点が少なく、審査が早く終わり再稼働の一番手になりそうだ、と新聞では書かれています。
しかし実際には在野の研究者から今回の新規制基準それ自身の問題点として多くの項目が挙げられています。すでに国の原子力規制委員会は批判には答えずに審査を始めているのですから、今後これらの批判に対応することは期待できません。
そこで、下記の5項目に詳しい内外の研究者、専門家を1名以上、参考人として県議会の委員会(あるいは県の専門部会)に招致し、議論を尽くすことで、県民の生命財産を守るという県議会としての役割を果たしてください。
1.同じ敷地前面活断層が起こす地震の想定が、津波の評価用と耐震性の評価用では5倍近く異なっている問題(この問題を指摘した元大阪府大の小山英之氏)
伊方原発で想定している最大規模の津波の源となる活断層と、耐震性評価で想定している活断層は全く同じものですが、採用している断層モデルの近似式が異なることから、地震モーメントには4.7倍もの食い違いができています。 規制委員会の委員もこれは2つの想定になんらかの整合性を取る必要がある、と発言しています。津波想定は今回の新しい評価で出来たものであるため、耐震性評価を見直すことにすれば、地震モーメントに比例して基準地震動の加速度も4.7倍程度になり、570ガルという現行の基準値が約2700ガルへと増えてしまい、現行機器が基準を満たすことはありえません。
2.過酷事故が起こるに任せた方が冷却しやすいとの対処方針でよいのか?(元GE/国会事故調の佐藤曉氏)
関西電力と原子力規制委員会の間で論争が続いていますが、全電源喪失になるなどの際には、積極的に圧力容器内部の冷却で頑張らず、炉心が早目に溶融するに任せて、融けた炉心を格納容器最下部で水中冷却するという対処方針が提示されています。実は四国電力も同じメーカーの提案に基づいて同じ方針を採っており、操作の状況によっては水蒸気爆発を起こすリスクすらあると思われます。
3.ベントは現行設備で行うの?行えなくするの?(原発の再稼働にベント設備は不可欠との論を張っていた奈良林直専門部会委員)
フィルター付きベント設備はPWR型原発では必須ではないとして5年間の設置猶予期間が与えられていますが、実は今ある設備でもベントが可能であることも猶予の理由に挙げられています。2年後に四国電力が作る予定の設備の審査は今できなくても、この既存設備を用いてベントを操作できるのであればその操作可能性、手順、マニュアルについて審議が必要です。
4.新規制基準は安全性を担保していない(旧原子力安全委員会事務局の滝谷紘一氏)
3.に関連して、フィルター付きベント設備が使われる際には、「立地審査指針」における敷地境界での安全基準を守れないレベルの汚染となるため、新規制基準ではこの過去の「立地審査指針」が棚上げにされたという問題です。新規制基準は「安全」基準ではない、と泉田新潟県知事が力説する所以です。
5.過酷事故に対処する汚染水タンク群の敷地が、設備評価から漏れている(福島原発のタンク問題に詳しい山崎久隆氏)
過酷事故の発生を想定すれば、福島原発で行った水冷方針以外の対処法はありませんが、その水冷の結果出てくる汚染水を保管するタンクを設置する空き地が、狭い伊方原発敷地や周辺にはありません。タンク置き場がなくなりそうな福島原発の現在の問題に、もっとずっと早い時期に直面して、汚染水を瀬戸内海に流す決断を迫られますから、過酷事故に対応するためには発生時の汚染水タンク置き場は不可欠な資源でありこのような設備の有無は過酷事故を想定した今回の新規制基準で扱わなければならないのにそうしていません。
【請願事項】
新規制基準に基づく伊方原発の審査に係わる(上記の)各問題の専門家をそれぞれ参考人として県議会の委員会(あるいは県の伊方原発環境安全管理委員会・原子力安全専門部会)に招致し、議論を行わせることで慎重審議を行い、県民の生命財産を守る県議会としての役割を果たしてください。
後日追記:
12月10日には,請願を担当する県議会内の環境保健福祉委員会で、また県議会最終日の12月13日には、本会議でそれぞれあっさり否決されました。
(無所属市民派の阿部悦子県議に、不採択への反対討論をしていただきました。)
このことの意味について。
慎重な審議を求める請願その2は、県議会に対し、原発の安全性を左右する新規制基準が抱える問題・国でも議論が尽くされていない諸問題について議論することを求めるものでしたが、具体的な5項目の論点については県の原子力安全推進監は委員会で一言も言及できませんでした。(傍聴時に確認すみ、委員である佐々木議員が、一つでも反論のようなものを準備しているのかと思ったがないんですか、と確認したのに対して、伊藤伊方原発安全推進監は、ポリポリと頭をかいているだけでした。)
慎重な審議を求める請願その1では、請願事項には「再稼働一番乗りにならないよう」慎重審議を、という文言しかありませんからここを是認できなかったための委員会否決でした。
今、この2つの請願を併せて否決したことで、愛媛県議会議員たちは「自分たちは安全性の各論には無頓着だ、なので再稼働一番乗りを目指したい」という意志表示になってしまいました。
ヤレヤレだぜー。