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脱走シマウマは天王寺動物園のバロンだった

2016年05月12日 23時28分03秒 | 事件
バロンの模様がわかりやすい写真付きの詳しい記事をもう一つ貼って置きたいと思う。

朝日新聞デジタル
脱走シマウマ、麻酔で倒れ池でおぼれたのが死因
2016年3月23日22時31分


ゴルフ場で獣医師(左)から吹き矢で麻酔薬を打たれたシマウマ=岐阜県土岐市妻木町、中垣理さん撮影







 「愛知県瀬戸市の乗馬クラブから22日夜に脱走したオスのシマウマが23日、約3・5キロ離れた岐阜県土岐市のゴルフ場で捕まった。岐阜県警の捕獲作戦は数時間に及び、シマウマは直後に死んだ。現場にいた獣医師によると、麻酔で倒れて池でおぼれたのが死因という。

脱走シマウマ、ゴルフ場へ 各ホール逃げ回る
 多治見署によると、23日早朝、シマウマが国道にいるとの通報でパトカーが向かうと、午前7時ごろ土岐市妻木町のゴルフ場に逃げ込んだ。30組の予約が入っていたが臨時休業とし、約15人で捕獲を始めた。
 グリーン上やバンカー内を歩き回り、5番ホール付近に。中垣理さん(60)ら獣医師が、約3ミリリットルの麻酔薬が入った注射器を吹き矢で発射した。中垣さんは「皮膚が厚いためか、なかなかうまくいかなかった」と言い、11本のうち数本が体内に入った。
 午後0時40分ごろ、ようやく麻酔が効き、倒れ込んだのが場内の池の中。引き揚げたときには体が冷たく、心臓マッサージをしたが助からなかった。
 「人になれていない動物を捕獲するのは難しい」と中垣さん。署は「蹴られたらけがをする恐れもある。麻酔で倒れたところを捕まえる方針だった」と説明。乗馬クラブの管理者(37)は「とにかくお騒がせして申し訳なかった」と平謝りだった。
 シマウマは、移動動物園を経営する愛知県尾張旭市の男性から乗馬クラブに預けられようとしていたが、パニックになって脱走したとみられている。」
http://www.asahi.com/articles/ASJ3R5SXLJ3ROIPE02Q.html

グラントシマウマとはサバンナの草原に群れで生息するサバンナシマウマの一種で、縞模様がはっきりしていてとても美しいせいか動物園で好んで飼育されているようだ。全部で9種類のシマウマの中では、体高1.1メートル前後、体重220~270キロととても小柄である。シマウマは縞模様が指紋のように一頭一頭微妙に違っているので、個体の区別がつきやすい。

シマウマはウマ科なのだが、ウマというよりもロバに近いことはその鳴き声からもうかがい知ることができる。しかし、ロバよりも気性が荒く人間になつきにくく、飼育下では病気にかかりやすいため騎乗や運搬用に馴致することが困難だという。

シマウマが馴致や調教が困難だとしてもふれあい動物園で飼育されて立派に勤めを果たしているシマウマや引馬で子供を乗せているシマウマをネットで見つけることができたので、おそらく生まれて間もないころに親から離して人間に育てられれば、家畜のロバのように育つこともあるのではないかと思われる。

では、バロンはどのように生れ育ってきたのだろうか。調べてみた。

【グラントシマウマのバロン♂】
2014年6月19日
大阪市天王寺動物園で父ヒデヨシと母ナデシコとの間に生まれた
スタッフブログ↓にはそのころのバロンの様子が記されている
http://blog.zaq.ne.jp/zoo_tennoji4/category/11/
http://blog.zaq.ne.jp/zoo_tennoji5/category/12/

(ブログで紹介されている動画)
おっぱいを飲む↓
https://www.youtube.com/watch?v=7q8CXijawjY&feature=youtu.be
元気に走り回る↓
https://www.youtube.com/watch?v=t9Urbf5F6X4&feature=youtu.be
サバンナゾーンのサブグランドを走る↓
https://www.youtube.com/watch?v=eazQMds2uO0&feature=youtu.be
サバンナゾーンにデビューしたとき(2014.9.1)↓
https://www.youtube.com/watch?v=WbalGmBRUNA&feature=youtu.be
同じ日のバロンのアップ↓
https://www.youtube.com/watch?v=zxewun3g43w&feature=youtu.be


(youtubeで見つけた動画)

天王寺動物園アフリカサバンナゾーンで母馬ナデシコとじゃれ合うバロン(2015.11.29)
http://doubutuen.xyz/archives/2790

写真や映像からはゴルフ場で死んだシマウマと天王寺動物園のバロンの縞模様は完全に一致していることがわかる。バロンは両後ろ肢の付け根部分に、二本フォークの模様がついているのでわかりやすかった。体重200キロ、体高1・2メートルとは年の割には大柄な方なのだろうか。シマウマの寿命は25~30歳なので1歳9ヶ月と言えば、まだまだ母親に甘えたいばかりの仔馬だとも言える。生きているのが楽しくてしょうがないとでも言うように駆け回る幼いバロンが確かにそこにいた。

天王寺動物園ではサバンナで生きるキリンやシマウマをアフリカサバンナゾーンという大きな放飼場で半野性的に放しながら、必要に応じて区分けや時間別にして展示していたようだ。とは言っても、飼育員がその中に入り、乾草を撒いたり掃除したりしてすぐそばを通ったりしても全く平気で、人間には慣れている様子がブログなどから知ることができた。

天王寺動物園がいつ頃バロンを手放し譲渡することを決めたのかわからないがシマウマの性成熟するのが2歳ごろなので、計画的ではあるようだ。移動の前に「バロンは3月22日で天王寺動物園を卒業します 長い間可愛がってくれてありがとうございます」という張り紙を貼ってあったとどこかで読んだことがあるので、この日付も一致している。あるブログには前日の3月21日も母ナデシコと一緒に展示されていたという目撃情報もあるようだ。

多くのメディアがアフリカから来た動物と言うようなニュアンスで報道していたが、驚くことに、バロンは日本の動物園で生まれ育ったシマウマだったのだ。ファンもいたに違いない。それなのに、動物を都合よく使い、いらなくなったらぞんざいに扱うところが動物園というところなのだろうか。頼り切っていた母親と突然離され、ひとりぼっちで知らない場所に連れていかれたバロン。

自由を楽しんで幸せそうに走り回っていたとは能天気な人の勝手な感想で、群れる草食動物の心は孤独と不安と恐怖でパニック状態だったろう。夜は山や国道を彷徨い、翌朝には母や仲間をを求めて天王寺動物園のサバンナゾーンに似たゴルフ場へと入り込んでいくのである。