ジャズボーカルやフィギュアシーズンやその他もろもろにかまけて読書進まず状態ですが、その中で県立図書館で借りた本を2冊読みました。
一つは『世界最悪の旅』
アプスレイ・チェリー=ガラード著 加納一郎訳
1976年に出版された世界探検全集の復刻版だそうで、今年から順に発刊されるそうです。
私は図書館の新刊コーナーで何気なく借りて、知らずに読んでびっくり。
新しい本と思って読み始めたら、なんか違うと思い、よく見たら100年くらいまえの著書でした。
南極点への初到達を争ったイギリスのスコット隊とノルウェーのアムンゼン隊の話は有名です。
1912年、アムンゼンが最初に南極点に到達し、スコット隊は遅れて到着。
さらにスコット隊はその帰途に悪天候に阻まれて遭難死してしまうという悲劇の結末だったのです。
スコットが最終的に南極点に向かった時のメンバーは5人でしたが、それ以外に基地を守ったり他の仕事をしたりというメンバーもいて、その一人がこの本の著者です。
スコット隊が極点に向かう最後までをサポートしていたメンバーで、スコット隊の最後を見届けた一人でもある著者の記録は臨場感がすごかった!
しかし、この題名でもある世界最悪の旅はスコット隊の遭難を示しているだけでなく、著者自身がペンギンの観察のために別働隊としてその前に行った観察の旅でもあるのです。
当時はまだよく知られていなかったペンギンの生態を知るために生息地まで行き、その観察と卵の採取という使命のために南極大陸を進むのですが、これがまた死と隣り合わせの旅。
100年以上前の装備でマイナス30℃〜60℃とかの地でソリを自分で引きながら進む困難が書かれていて、もう本当に本当に大変です。
装備できる食べ物も今と違って限られていて、北極用のパンとペミカンと言われる肉の缶詰とバターなどの脂。ビタミン不足になるのを防ぐビタミン剤もない。
懐中電灯さえまだない時代、燃料も限られ、衣服はすぐに凍ってしまう。
凍傷と壊血病との戦い。
読んでいて苦しくなるほどの大変で絶望的な旅です。
しかし、その必死の旅の途中でも客観的な記録を残している使命感がすごい。
著者ももちろんですが、遭難死したスコットの残した記録も捜索隊がそのまま見つけたことにより、写真も含め多くの大切な資料となった。
スコットはただ極点に行くという目標だけでなく、どちらかというと科学的調査を目的にしていたようです。
スコットの最後の手記や遺書となった手紙などの一部が引用されているのですが、それを読むとスコット隊の最後まで冷静でそれぞれが思いやっている立派な人間性にとても感動すると同時にその絶望感が苦しかった。
探検家は限界に挑戦し、無謀とも思われることを成し遂げようとして成功すれば賞賛され、失敗すれば時に非難される。
しかし、この本の最後にある言葉「探検とは知的情熱の肉体的表現である」は今でも探検や冒険や未知なるものに挑戦する人々への最大のエールだと思いました。
南極点に最初に到達したアムンゼンもその後北極海で遭難した探検家の救助に向かって帰らぬ人になったそうです。
この世界探検全集、他にも色々と古典的な物も含め面白そうな本が多いので、また図書館にあったら借りて読みたいなと思います。
もう1冊読んだのは『東アジア古代の車社会史』という本
これについては明日書こうと思います。