ミケマル的 本の虫な日々

『ありがとうヘンリー』


 『ありがとうヘンリー』 ヌエラ・ガードナー著 入江真佐子訳
   
 原題は『 A Fiend Like Henry』という本です。著者は自閉症の子どもを持つ母で、その子デールを育てる過程を書いているものです。生まれてから5歳になるまでの、困難な子育ての様子は、本当に自閉症の子どもを育てる大変さを切実に感じました。(まだ、自閉症の診断と教育方法がはっきりとしていなかったということもその一因だったようですが)

 そして5歳のある日に、この親子はゴールデン・レトリバーのヘンリーと出会い、ヘンリーによってデールが少しずつ外の世界に眼を向けるきっかけをつかむことができるのです。なぜ、いつも世話をしてくれる身近な人にも心を開かないデールが、犬のヘンリーには心を開いたのかは色々な説明があるのでしょうが、一つには、ことばを介さないコミュニケーションが成立したためなのではないでしょうか。

 うちの犬でも、その茶色の眼と見詰め合うと心穏やかになるのですから。(犬はただおやつが欲しいだけかもしれませんがね) このヘンリー君はとても賢く、穏やかなレトリバーではあるけれど、訓練されているわけでもない特別な犬というわけではないのですが、デールはヘンリーを通じて、まったく閉じこもっていた自分だけの世界から、自分以外の世界を見ることができたらしいのです。

 現在は、デールは20になり強いこだわりはあっても、ほとんど普通の生活を送れるようになっているようです。ヘンリーとデールの関係もすごいけれど、この著者である母親の冷静な判断力とたゆみない努力は、本当に頭が下がります。そして、自閉症の中にもいろいろなタイプがあるのでしょうが、このように成長していくこともできるのだなということに感動しました。

 以前読んだ、『ぼくには数字が風景に見える』という本でも、自閉症の一種といわれるサヴァン症候群である著者がその驚異的な数学と語学の才能を開花させるまでの自分と家族の苦労が語られていました。この本も、本人が書いているという点でもすごい本だなと思いました。

 自閉症とひとくくりにできない多様なタイプがあるようなので、この本のように犬と一緒に生活すれば良いというわけではないけれども、一つの方法ではあると思います。馬やイルカが最もこのような動物療法に向いているといわれているけれども、馬やイルカを飼うのは無理な人が多いので・・・。

 ちなみに、小さな子どもよりも受験期や思春期の子どもが犬や猫に癒されて、困難な時期を乗り切るということが多いような気がします。このくらいの子どもが居るご家庭は、犬や猫を飼うと良いのではないでしょうか。子どもが家を出てからは、親の愛情のよりどころにもなりますし、一石二鳥では?

 

 

 

 

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コメント一覧

ミケマル
うちの犬も・・・
うちの愛犬ジャックも、だれに似たのか(たぶん家族)スーパードライな犬なので、自分の用事や要求がある時だけ、近くに来ます。頭は悪くないけど、情が薄いというか・・・
 でも、うちの犬としては、ちょうど良いのかもしれません。でも、子どもたちは嫌がるジャックを撫で回して、勝手に癒されていましたよ。最近は、それもなくなったので、時々撫ぜて欲しい時だけ近寄ってくるという、ジャックにとっては平和は生活を送っています(太りやすいので、いつも腹ペコですが
 
coo
確かに犬や猫は家族が微妙にずれた時にとてもいいですね。
わが家の犬もそれなりに人間関係のクッションになってくれていますが、もっと賢くて気を使ってくれるだったらもっとよかったかも…と思うのは贅沢でしょうか
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