沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

「世紀のペテン師」マドフの獄中死から教訓とするべきは何か    倒産寸前だった恒大集団、EVで株価十倍の奇跡。これをどう読むか

2021-05-03 23:23:30 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)4月20日(火曜日)弐
   通巻第6872号
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 「世紀のペテン師」マドフの獄中死から教訓とするべきは何か
   倒産寸前だった恒大集団、EVで株価十倍の奇跡。これをどう読むか
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 まずはハーバード・マドフの想い出。世紀の詐欺師はポンジ・スキーム(ネズミ講)の原理を応用してウォール街でのし上がった。
 ご先祖は東欧から移民してきたユダヤ人で、最初はユダヤ人コミュニテイィで信用を確立し、NASDAQ会長という輝かしい肩書きもあった。

その彼がセレブの集まりで、そっと囁くのだ。
「じつは内緒のもうけ口がある。年利10%だ」。
 ころりと騙されて、「マドフ投資会」に大金を預けたセレブたちのなかには、有名スポーツ選手、GM金融子会社の大幹部、あのスピルバーグ監督。日本の金融会社数社も被害にあった。

 搾取したお金は空前の650億ドル。逮捕・起訴され、150年の禁錮刑で収監され、4月14日に獄死した。この世紀のペテン師の人生は「嘘の天才」というタイトルで映画化された。主演はロバート・デニーロだった。

 さて場所は上海。おりから開催されているのは「上海自動車ショー」。中国最大の自動車ショーだが、ことしは参加が1000社、トヨタもEVモデルなど三点を展示、数十万人が訪れる予定で、4月28日まで。しかし、このショーで話題を浚ったのはトヨタでもテスラでもなかった。
 天下の名門BMWの隣のブースは、初耳のEV自動車「NEV」(恒駆)が並んだ。
この会社はエバーグランデ(恒大集団)。香港の株価、過去12ヶ月で十倍。時価総額はなんと870億ドル。
 おっと、この新車NEVは一台も売れた実績がない。

イーロン・マスクのEV「テスラ」は、一応、50万台を売って、トヨタの二十分の一の売り上げ、ただしマスクのEV時価総額は、トヨタの四倍。トヨダEVの昨年度の売り上げは、たったの3300台!
 なんとも不思議なことがあるなぁ、と感心している場合ではない。

 NEWの親会社は「恒大集団」(英語名がエバーグランデ)。率いるのは許家印。2017年フォーブスの富豪ランキングでは中国の一位だったこともある。

 ところで、名前が酷似しているが、許家屯と許家印(恒大集団CEO)の関係はまったくない。
専門家の樋泉克夫氏の分析では「両人が「家」の文字を使っていますが、基本的に同じ文字は一族の同世代が使うものですから、たとえば李一族で「澤」を使うのは李嘉誠の息子の世代で、李澤楷と李澤鉅。父と息子の間では同じ漢字は使われないはずです。許家屯の元の名前は許元文。許家屯はたしか江蘇省の産で、許家印は河南出身。以上から考えて、両人の間には特段の血縁関係は」ない、という。
許家屯は元新華社香港支社長、天安門事件では趙紫陽と親しかったため粛清を懼れて、1990年に米国へ亡命し、2017年頃、百歳で死去した。

しかし農村出身の許家印がよく、まぁ、ここまで出世できたものですね。
樋泉教授の分析を続けると「なんせ匪賊や馬賊でも、度胸と時の勢いで共産党幹部として栄耀栄華の生活を満喫できる国である。おそらく日中戦争末期から国共内戦期、文革、それに野蛮強欲市場経済・・・その都度、社会がシャッフルされる。時の勢いに乗ったやつが勝ち。チャンスがてんこ盛りなんでしょうか」。

 さて恒大集団である。中国最大のデベロッパー、全土に高層マンションをおったてて、大半は空室。空恐ろしや、借財は13兆円。倒産寸前といわれ、ドル建て社債は14%、つまりジャンク債だった。

 その恒大集団がEV製造に乗り出した。最初はバッテリーの生産、そして欧米五社のエンジニアリング会社と契約し、大工場を建てて、「恒馳」ブランドのEVカーを宣伝、そのデビュが上海の自動車ショーだったのである。

 EV参入発表からIPO(株式公開)。株価はEVブームに載って鰻登りとなった。時価総額は870億ドル!
 このニュースに接したとき、咄嗟にマドフのことを思い出したのだ。

米露はいつまで制裁合戦をやっているのか   オルガリヒの在米資産凍結はかなりのブローだがプーチンは何故かケロリとしている

2021-05-03 23:22:31 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)4月19日(月曜日)弐
   通巻第6870号
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 米露はいつまで制裁合戦をやっているのか
  オルガリヒの在米資産凍結はかなりのブローだがプーチンは何故かケロリとしている
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 報復合戦が続く。
 アメリカはウクライナ問題でロシアの富豪を制裁してきたが、トランプ政権の2019年1月、オレグ・ウラジーミロヴィッチ・デリパスカへの制裁を解除した。
デリパスカはユダヤ人で、ガス企業「ルサル」の社長だった。プーチン政権下で利権をむさぼった新興財閥群は、ほかにアブルモヴィッチ(石油王)やユコスのホドルフスキーらがいた。

彼らは政権から離れ、資産を海外へ移るなどの行為を見とがめられ、次第にプーチンとは距離をいた。ホドルフスキーは逮捕され、十年の服役後、欧州へ逃れた。

 アブルモヴィッチは2008年には洞爺湖サミットに出席するほどの政治銘柄でもあったし、フォーブスの世界富豪ランキングでは、十位をつけた。資産280ドル。自家用飛行機も所有するほどだったが、現在は落剥しているという。

 バイデン政権になって制裁が復活した。
 4月2日にナワリヌイ毒殺未遂に関与したとして、ロシアFSB局長のボルトニコフら七名を制裁リストに加えた、とした。

 4月15日に、米国は「2016年の大統領選挙へサイバー戦術で介入した」としてロシアへの制裁を追加し、25のロシア企業と25人のオルガリヒ(ロシアの大富豪たち)の在米資産を凍結した。EU、英国、カナダ、豪も同様な措置を講じた。
その金額たるや1兆ドルと見積もられる。

米国マサチューセッツ州にあるケンブリッジ国家経済研究所によれば1兆400億ドル。アメリカが講じた経済制裁はロシアにとって強烈な武器となっている、筈だ。
ところが、それほどの悲惨さをロシアは顔に出しておらず、制裁の噂が流れる直前に米国から1200億ドルがごっそりと引き出され、ロシアに環流した事実も一方で判明している。

ゲンナジー・ティムチェンコは対露制裁リストのトップに載っている。
スイスのテクノロジー企業「エリコン」の40%株主、スイスの機械メーカー「Sulzer」の57%株主である。資産は160億ドル内外。

 ヴェクセリベルクはロシア版シリコンバレー「スコルコヴォ」の総裁。プーチンの親友としてしられる。

 ヴァチェスラーヴ・プロコフィエフもプーチン大統領の友人。投資会社「ヴォルガグループ」の創業者。エネルギー、輸送、インフラに重点を置くビジネス展開で知られる。

 過去にもアメリカはロシア大富豪を狙い撃ちして在米資産凍結にでたが、直前にかれらは口座移動などで対応していた。

 ▲個人への制裁はどれほどの影響があったのか?

 中国への適用例が参考になる。
 2019年に香港大乱の責任者を制裁したことがある。直前に共産党幹部の秘書や身内がNYへ飛んで口座を緊急に移し替えた。

 しかし市場は荒れた。ロシア国債は外国人投資が20%急減する一方で、赤字国債の増発は40%増。これでは株も通貨も暴落する。ルーブルは紙くずに近い。この二年間でロシアルーブルの対米為替レートは65から75へと14%近い下落ぶりである。

 しかもバイデン政権は追加制裁を予定している。
燻る続けるウクライナ東部の情勢だが、国境にロシア兵が数万終結している。
もし、ウクライナへの介入があれば、バイデン政権は追加報復にでるとしているが、クレムリンは「バイデンはプーチン大統領を人殺し呼ばわりした。米国は平和を希求しているとは思えない。これでは一歩前進二歩後退ではないか」と不満やるかたなく、報復に米国へ制裁を発表した。

ところがロシアの制裁の中味はと言えば、ガートランド国連大使、スーザン・ライス(元大統領補佐官)、クリス・レイFBI長官らの「ロシアへの入国禁止」(これって、制裁に該当するのかなぁ)。

 チェコも18人のロシア外交官退去を命じ、ロシアは報復でモスクワ駐在チェコ大使館員20名を「スパイ容疑」で国外退去を命じた。

戦場はサイバー空間(インターネット、ツィッター、FB)に移行した   米軍幹部「認識戦争」を台湾は「認識域戦争」と命名している

2021-05-03 23:21:43 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)4月19日(月曜日)
   通巻第6869号
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 戦場はサイバー空間(インターネット、ツィッター、FB)に移行した
  米軍幹部「認識戦争」を台湾は「認識域戦争」と命名している
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 中国のサイバー軍の詳細を西側は掴みきれていない。作戦方法も複雑多岐に亘り、詳細を極める調査は、CIA、NSAが行っただろうが、公表されていない。
 従来、上海にある12階建ての妖しいビルに数千人のサイバー専門家がつどう事実が特定され、中国人民解放軍総参謀部所属の61398部隊、ハッカー要員はおよそ五万名と推定されてきた。

 指令に基づいた書き込みを下請けするハッカー要員はアルバイト学生、退役軍人らおよそ二百万人。これらは「五毛幇」と呼ばれることは広く知れ渡っている。

 しかし福建省にあると推定される別のサイバー部隊は人民解放軍の311基地所属の「61716部隊」と推定されているのだが詳細が不明。これは総政治部所属(現在の戦略支援組)で対台湾向けの心理戦、宣伝戦を仕掛ける拠点とされる。この存在が台湾の情報機関によって明らかにされた。

 2016年の大統領選挙でロシアはハイブリッド作戦を展開し、SNS、ツィッター、フェイズブックを駆使し、巧妙な意見を書き込むなり、嘘ニュースを流して米国選挙を攪乱した。狙いはヒラリー当選を阻止することにあった(廣瀬陽子『プーチンのハイブリッド戦争』、講談社)。

 米国情報筋は中国、露西亜のSNS浸透作戦による相手国のマインド・コントロールを「認知作戦」(COGNITIVE OPERATION)と呼称しはじめた。
 台湾は「認知域作戦」(COGNITIVE DOMAIN OPERATION)と、もうすこし細かな議論に発展させている。

 この61716部隊が台湾選挙に介入したのである。
ロシアのやり方を教訓としたのかどうかは定かではないが、2018年の台湾五大市長選挙、そして2020年の総統選挙に、偽情報の流布、デマ放送、これらをSNSネットワークを通じて大量に流した。くわえて中国華芸広播公司はテレビ、ラジオによる宣伝戦の尖兵となった。狙いは台湾国民の心理陽動、攪乱情報のみならず、高等で高尚な意見を装ってオピニオン・リーダーの意見を変えさせようとしたのだ。

 つまり「概念を構築する方法を変える」のが究極の目的であり、「違う概念をそれとなく植え付ける」のである。それによって大衆世論を誘導し、それがオピニオン・リーダーに影響を与えるようにしむけるという手の込んだ作戦だ。まわりくどいが、狙いは政策決定に大きな影響力をもつオピニオン・リーダーの概念構築(認識能力に影響を与える)のである。

 典型の成功例は日本を見れば分かるではないか。GHQの強制が基軸となったが、そこに悪のりして東京裁判史観で自虐的になった日本のオピニオン・リーダーに中国は巨大な認識の変更を工作した。すなわち大東亜戦争は太平洋戦争、南京大虐殺はあった。疫病対策の731部隊は生体実験をした。日支事変は日中戦争(十五年戦争)等々。
こうして日本の政官界、ジャーナリズムからアカデミズムの指導層、財界に「贖罪意識」をまんまと植え付け、心理戦で日本人を圧倒して、中国への賠償に匹敵する援助を引き出し6兆円を収奪し、あまつさえ日本企業の大量進出を促した。
 この基本的なやり方を「サイバー空間「」に移行したということである。


 ▲オピニオン・リーダーの概念構築を変える高等戦術、さすが孫子の末裔

 外に向かってがなり立てる政治宣伝より、内部の議論に違う概念を植え付ける認識域への浸透作戦ではアウトプットよりインプット重視になる。
 既存のメディアより、台湾ではSNS空間に情報が飛び交っている。米国も韓国も、いや日本の若者たちもそうだ。驚くなかれミャンマーもそうなった。既存のメディア報道を信じない大衆が増えれば増えるほどに、SNSを通じた作戦のほうが効果的であり、とくに台湾へは統一問題、両岸関係をいかに発展させるかを、政府の方針とは気付かないうちに乖離させるわけだ。

一見迂回路をたどるように見えるが台湾政府の台湾独立路線は鮮明に大きく後退している事実は何を物語るか。

そして2018年、民進党の牙城だった高雄で国民党の韓国諭が当選するという逆転劇は、この「認識機作戦」の成功を物語る。

2020年の総統選挙に中国は韓国諭を充てるように国民党トップに示唆したのも、同じ方法で勝てると踏んだからだ。事実、2019年初夏まで、蔡英文の再選は難しいと予測されていた。
ところが台湾総統選は直前までの香港の民主運動弾圧を目撃し、大衆もすっかり冷めて、中国が全体主義の怖ろしい国家だったことに改めて気がついた。中国は自ら撒いた種で、台湾での作戦は失敗した。

 さしあたって次の標的は年内に予定される日本の総選挙、2018年の台湾中間選挙。同年秋のアメリカ中間選挙である。

日米共同声明に「台湾」を銘記したと大騒ぎをしているが   ウイグル、香港はあっても、チベットと南モンゴルは看過された

2021-05-03 23:20:36 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)4月18日(日曜日)弐
   通巻第6868号
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 日米共同声明に「台湾」を銘記したと大騒ぎをしているが
  ウイグル、香港はあっても、チベットと南モンゴルは看過された
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 2021年4月16日、ワシントン。日米首脳会談が開かれ、バイデン大統領と管首相はサシの会談も含めて長時間はなしあった。終了後に発表された日米共同声明は意外の長さ、かなり詳しい政策協調と外交方針が述べられている。

 仔細に読むと「インド太平洋」というタームが頻度激しく出てくる上、後半はパンデミック、気候変動、サプライチェーン、東京五輪である。ミャンマー制裁は付け足しだ。

 なによりも、「中国が唯一の(脅威)競合相手」と米国は記者会見をしているが、共同声明にはその表現はなく、尖閣諸島防衛に「安保条約第五条」が適用されることが再確認された。しかし、これはオバマ政権のときからの決まり文句、とくに新しい一歩ではないのではないか。

また次世代通信技術の6G開発に日米共同が明確に謳われ、52年ぶりに「台湾」の項目が挿入されて、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」との文言が入った。日本のメディアは、これらのことで大騒ぎをした。

 「中国からの挑戦にともに対応し、21世紀も民主主義国が競争に勝つことを証明する」。そのため「核を含む」との前置詞があって「あらゆる手段で日本を防衛する」。これに対応して日本は防衛力の増強を約束した。

 また北朝鮮の核兵器への言及はあるが、南モンゴル、チベット問題はスルーされており、「ロシア」の軍事的脅威への言及がない。ロシアの「ロ」の字もないのである。レーガン、ブッシュ時代は「ソ連の脅威」が前面だったから、状況はホントに激変した。

 台湾外交部は日米共同声明で「台湾周辺の安全保障に関心を寄せていることを悦ばしく思う」と歓迎声明、一方の中国は「強く不満を表明し、断固として反対する」とし、「香港、ウイグルは中国の内政問題であり、東シナ海、南シナ海は「中国の主権に関わる」と反発を繰り返した。

 米国のメディアは驚くほど小さな扱いで保守系ワシントンタイムズですら「会議は一貫して全員がマスク」、日米同盟の重要性が確認された」程度の小さな記事。
欧州も小さな記事しかなく、フィリップ殿下の葬儀がトップニュースだ。シンガポールなども通信社電を転用しているのみ。

 しかし台湾『自由時報』系のTAIPEI TIMESの社説を読むと、尖閣諸島は台湾領であると示唆し、日米共同声明への不満が柔らかく述べられている。


「トランプより対中国政策は強硬だ」とバイデン政権の作為的な演出    中国IT規制許可制は「大きな政府」の好きな民主党のジェスチャーか

2021-05-03 23:20:02 | 日記
宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)4月18日(日曜日)
   通巻第6867号  <前日発行>
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 「トランプより対中国政策は強硬だ」とバイデン政権の作為的な演出
   中国IT規制許可制は「大きな政府」の好きな民主党のジェスチャーか
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 米国の世論調査をみると、中国は敵、もしくは友好国に非ずとして「経済的裨益を犠牲にしても中国には制裁を課せ」とする回答が90%を超えている。世論がワシントンの政策決定に与える影響力は甚大なものがある。

 バイデンは親中派のチャンピオンだったが、アメリカ国民の世論の硬化を前にして中国と以前のズブズブ関係には戻れない。だからこそ、ジョン・ケリー気象担当特使を上海に派遣する一方で、台湾に非公式にアーミティジ元国務副長官らを派遣してバランスを取ることに腐心する。

 バイデン政権は「情報漏れ阻止」を目的に、こんどは中国製のIT利用を許可制にするんだとか。最大450万社が規制の対象となるが、さすがに「大きな政府」が好きな人たちが思いつきそうな政策である。
 そんな暇があったら、すでにバイデンになって国境警備を緩和したために米国に不法入国した18万人の不法移民をどうするのか。こちらのほうは人権優先だから、人種差別はあってはならないという綺麗事か。

 具体的に米国はIT関連でファーウェイ、ZTE、ハイクビジョンなど五社の製品の政府調達を禁止してきた。また軍直結もしくは中国軍と関連の深い中国企業との取引を禁止してきた。商務省はそのために85社をブラックリストに掲載してきた。
 これらトランプ前政権の対中強行策を上塗りするかたちで、中国製ITを利用するには、許可が必要という、およそ実現不可能なことを言い出した。
 対象が450万社におよぶ。5G関連、カメラ、ドローン、パソコンなど米企業の多くはすでに中国製を使用している。
 ソフトウエアやクラウドにも規制をかける。このために必要とされる費用は100億ドル(1兆900億円)。しょせん、絵に描いた餅に終わるだろう。


▲中国を締め上げるにもっとも効果的な方法は金融制裁である。

中国は真っ青になるだろうが、これをやられると相当ていどに困るのがウォール街である。
しかもウォール街は民主党への献金が巨額であり、GAFAと連携して株価高騰を愉しんでいるわけだから、バイデンは金融制裁に打って出られず、そこで、中国製IT利用許可制などと途方もなく些末なアイディアを思いついたのだろう。許可制とすれば、アメリカ人の家庭では多くが中国製のパソコンを使用しているのだから、実際に効果はゼロに近く、かえってマイナスにならないか。

 中国の社債、株式に投棄している米欧系ファンドは数知れない。
およそ57兆円が中国の金融市場に注ぎ込まれ、これが破産寸前の中国経済を延命されている。くわえてペテン的な中国企業がウォール街に上場しており、この斡旋は米国証券会社が主幹事である。
 したがって金融市場へ強い規制をかけることが、中国を干し挙げる最有力な最強手段なのである。

 直近でも韓国や中国のペテンにやられた被害が続出している。
 クレディスイス5000億円、野村證券2200億円、JPモルガン1000億円の被害は「アルケゴス」という韓国人経営の資産運用会社の投資失敗による。
アルケゴスに出資してきた欧米日のファンドが被った損害である。小誌でも問題にした「華融資産管理」のペテン同様に悪質だが、強欲資本主義の引き起こした自己責任の問題でもある。

 そもそもアルケゴスなる不思議なファンド運用企業は3月24日にバイアコムCBS増資に反発しておきた株価急落に端を発しており、アルケゴスは追い証が出来ないことになって悲鳴を挙げたのだ。

 緊急の電話会議ではJPモルガン、クレディスイス、UBS、野村證券にゴールドマンサックスが討議し、協調的対応が合意された。
ところがゴールドマンサックスが「裏切り」。関連株を売却していた。中国の事情に通じるゴールドマンサックスは、ウォール街の親中派の代表格である。