沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

チャイニーズ・ヒルビリー・エレジー(その3)     「大学卒業」=「失業」という意味だった

2024-08-30 22:38:29 | 日記
 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)8月28日(水曜日)
     通巻第8386号   
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 チャイニーズ・ヒルビリー・エレジー(その3)  
  「大学卒業」=「失業」という意味だった
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 北京でも上海でも、夜の人出がめっきり減ったが、逆に増えたのが屋台ビジネスへの新規参入という皮肉な現象。
その屋台も新卒が乗用車に機材を積んでくる即席ショップである。ゴミ拾い、空き缶集めも競争状態となった。アリババの配達員はつねに人員不足だが中国全土に1000万人!
正社員でもアルバイトでもない。随時契約で長時間労働、一件につき150円。20件配達できても(集中高率地区はベテランが抑えている)日銭3000円あるか、ないか。

 農村への赴任は募集しても応募者は少なく、都会の生活になれてしまった若者は人生設計に田舎暮らしなど感覚的に追いつかないのだ。日本はまったく逆で都会から田舎へ引っ越し機能する若者が目立つようになった。

一方、公務員を募集すると定員の30倍以上が常識の狭き門。女子学生にも募集がかかるが、家政婦のなり手はない。昔、あった美人達のパパカツもゼロに近い。
つまり「ゼロコロナ」から「ゼロ雇用」となった。

 8月26日、IBMは上海のR&Dセンターを縮小し、1000名を削減すると発表し、業界にショックを与えた。
IBMが中国から去る嚆矢となるのか。ほかの米国企業などはインドに移行しているから遅きに失した観もあるが、中国の若者で理工系の優秀な人材も、行き場がなくなっている。

 それでも余裕のある若者がいないわけではにない。ひとつの証左は新ビデオゲーム「悟空」が発売三日間で1000万コピィも売れたことだ。
テンセント系ゲームサイエンスが製作、中国では38ドル、米国では60ドル。三日間で4億5000万ドルを稼ぎ出した(『サウスチャイナ・モーニングポスト』、2024年8月27日)。 
 大失業時代にゲームをやっている暇人が、単純計算で1000万人もまだ居ることになる。


 ▼新生大学は雨後の竹の子のように

 それにしてもどうしてこんなことになったのか?
 第一に大學を創りすぎたことだ。90年代まで中国で「大學」と聞けば、エリートだった。2000年に中国全土に1100校、インスタントな駅弁大學ができた。それなりに「教授」も揃った。
 かねてから、即席大學の校舎建築、敷地確保なども問題だが、そうやって最新技術、再診の国際的レベルを知った上での知識を教える人材が、地面から湧いてくるように輩出したのか、不思議だった。

 まさに中国に於いて新説大学は雨後の竹の子のように、2024年には2800もの大學が出来て、ことしの新卒が1179万人。はじめから『大学は出たけれど、どうなるか}は分かっていた。
 「大学卒業」=「失業」という意味だった。

 公式発表による中国の若者の失業率は21・3%(おそらく真相は50%を超えている)。ちなみに日本の若者の失業は4・2%で、大概がニート、引きこもりである。アメリカは7・5%。フランスは昔から労組が強く、若者への職配分がすくなく、16・3%だ。

 貧窮生活の苦況と絶望を描いた中国映画「逆行生活」は中年のプログラマーが失業し家族を養うためにフード配達をするストーリ-。すでに500万人が見た。他人事ではないからだ。
正面玄関から配達しようとすると警備員から「通用門に廻れ」といわれ、エリート意識が瞬間的に奪われたことを実感する悲哀さ、中国人の感性もかわってきた。

しかしその一方で元気なのが中国の老人たち(前期高齢者)。上海の夜のカフェ。65歳以上のカップルがあつまった「新しい恋愛を語る『トワイライト・ラブ』が発展中だ」とニューヨークタイムズ(8月27日)が写真入りで報じた。

「胡耀邦趙紫陽記念財団」の創設者、著名な民主活動家がスパイだった ジョンルカレ、グラハム・グリーンのスパイ小説を地で行った

2024-08-30 22:29:39 | 日記
 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)8月27(火曜日)弐
     通巻第8385号   
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「胡耀邦趙紫陽記念財団」の創設者、著名な民主活動家がスパイだった
ジョンルカレ、グラハム・グリーンのスパイ小説を地で行った
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王淑俊(王書君とも言う)は著名な歴史家であり、かつNYクィーンズを舞台に「胡耀邦趙紫陽記念財団」の創設者としても知られた。在米の民主活動家を支援し、台湾独立を支持し、またウィグル、チベットの独立運動の支援者として、彼を知らないものはなかった。2003年にはダライラマ法王とも会見している。

 ところがビックリ。王は中国のスパイだった。王書君は1949年、山東省生まれ、青島社会科学学院の教授となって中国軍事史に関する著作を執筆した。1994年、ニューヨークに移り、市民権を獲た。コロンビア大学の客員研究員を務めつつ、胡耀邦・趙紫陽記念財団の創設者の一人となった。
 「かれはながく活動家を装って機密を集めていた。ジョンルカレ、グラハム・グリーンのスパイ小説を地で行った」(マシュー・オルセン司法次官補)。

スパイと認定され、2022年に逮捕。外国エージェント容疑で起訴された。他に4人の中国人も起訴されたが、逃亡した。王は民主活動家を装って在米などの活動家の詳細情報や組織の機密を中国政府に伝えていた。2024年8月、ニューヨークの陪審員裁判で王は外国政府の代理人として活動、或いは共謀した4件の罪で有罪判決を受けた。

 このケースではアメリカへきてからスパイを強要されたが、あるいは中国を出国するときから、条件だったのか、本当に活動家として活躍中にカネに困って転んだのか、そのプロセスには不明な点が多い。

 香港のヒロインだった周庭もカナダへ亡命後、日本のテレビ取材に応じて「(取り調べ中に)スパイになれと誘われた」と語っている。

この逮捕劇はおかしくないか。フランスの暴挙に抗議の輪    イーロン・マスク、タッカー・カールソン等が批判声明

2024-08-30 22:28:10 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)8月27(火曜日)
     通巻第8384号   <前日発行>
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 この逮捕劇はおかしくないか。フランスの暴挙に抗議の輪
   イーロン・マスク、タッカー・カールソン等が批判声明
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メッセージ送信の暗号アプリ「テレグラム」の共同創設者兼CEOのパベル・デュロフ(ロシア人なれどフランスとUAEの三重国籍)がフランスで突然逮捕され、国際的な波紋を巻き起こしている。

8月24日、デュロフはアゼルバイジャンのバクーから、パリで夕食の約束のため、プライベートジャットでパリ郊外の飛行場に到着した。フランス官憲は逮捕状なしの仮条例で彼を拘束した。容疑は暗号通信が麻薬取引に遣われたことを公開しなかったとか。

テレグラムは、暗号化メッセージングを提供し、ユーザーが「チャンネル」を設定してフォロワーに情報を素早く広められる。したがってデュラフが、テロ、麻薬密売、詐欺などさまざまな犯罪を助長したとフランスの国家詐欺対策局(ONAF)が拘留理由をあげた。

すぐさま抗議行動が起きたのはモスクワのフランス大使館前、ニュースを知ったモスクワ市民が「即時釈放」をもとめ、白い紙飛行機を仏大使館の生垣に落とした。つまり白(言論の自由)が墜落したという意味を込めている。
テレグラムはエンドツーエンドの暗号化を提供するため安全性が高く、このアプリが、ロシア軍だけでなく一般の人々の間でも広く使用されている。 

まっさきに声をあげ、釈放を要求したのはイーロン・マスクだった。すると「次の逮捕はイーロン・マスクだ」という予測がSNSの空間で駆け巡った。
次にタッカー・カールソンが抗議の声をあげた。カールソンは四月にデユロスを招いてインタビュー番組を作成しており「逮捕は政治駅理由でしかなく、危機の兆候だ。すぐさま釈放をもとめる」とした。

カールソンとのインタビューのなかで、デュロフはマスクと彼の言論の自由を支持する姿勢を称賛した。

デュロフはサンクトペテルブルク生まれのロシア人で、まだ39歳、世界の億万長者に仲間入り(個人資産は115億ドル)。テレグラムのユーザーが世界は9億5000万人。
2021年にUAEの国籍を取得し、先月にはフランスの市民権を得た。三重国籍である。

したがってロシア政府は自国民の安全のためにもフランスに抗議するのは当然だろうが、クレムリン関係者は「この逮捕劇の背後にアメリカがいる」と非難している。
デュロスはクレムリンを批判し、2014年にロシアを離れてドバイに移住した。テレグラム本社登記もドバイだ。

 ▼情報戦争の主力舞台はネットに移行している

 とはいうもののロシア国内ではインターネットで閲覧できるサイトは制限されており、旧ツイッター(現在のX)やフェイスブック、インスタグラム、一部のユーチューブなど多くのSNSや外国メディアなどのサイトへは通常繋がらない。中国も同様だが、そこは政府の規制をかいくぐる腕が冴えるのがロシア人、中国人共通である。テレグラムもロシアでは一時期禁止されていた。

ロシア政府はフランスに逮捕理由の説明を求めている。
またロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長(元ロシア大統領)は、「ドゥロフ氏がロシア人であるために標的にされた。彼はロシア人であり、それゆえ予測不可能で危険だ」とするメッセージをだした。

 ロシアネチズンは「言論の自由に対する取り締まり」「パベル・ドュロフ氏は政治犯、西側諸国による魔女狩りの犠牲者だ」「フランスでも言論の自由は死んだ」と書き込んでいるが、さて欧米の論調ときたら歯切れが悪いのだ。
 「言論の自由をめぐる議論となるだろう」(ニューヨ-クタイムズ)
「欧米と露西亜の緊張を高める」(ウォールストリートジャーナル)。

 ネット空間における検閲は米国でトランプの口座を永久追放したりやりたい放題である。映画、ラジオ、新聞、テレビの時代から情報操作の空間は、いまやネットが主舞台となっている。そして左翼が保守の意見を封じ込めている。

エヌビディアのハイテク半導体はこうして中国にわたった   クラウドサービスを利用して巧妙な入札が行われていた

2024-08-30 22:14:00 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)8月26(月曜日)弐
     通巻第8383号   
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 エヌビディアのハイテク半導体はこうして中国にわたった
  クラウドサービスを利用して巧妙な入札が行われていた
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ロイター(8月23日)が中国のハイテク入手にアマゾンのクラウドサービスが利用されていると報じた。
中国の公開入札文書を省察したところ、中国企業が、アマゾンなどのクラウドサービスを利用して、米国が禁輸措置としている米国製半導体や人工知能(AI)機能を入手していた。
ロイターは過去1年間に中国が公開した50件以上の入札書類を調査し、少なくとも11の中国企業が米国の技術やクラウドサービスの入手を狙っていたと報じた。

高度コンピューティング能力を獲得し、生成人工知能モデルを獲得するための中国企業による戦略の一環で、また、米国企業が自社の利益のために中国のコンピューティング能力を高める需要を利用している側面がある。

3月の入札書類によると、深セン大学はNvidia A100およびH100チップを搭載したクラウドサーバーにアクセスするため仲介業者であるYunda Technologyに28000ドルを支払った。NvidiaA100,H100は米国が対中輸出を禁止している。

 浙江研究所は、4月の入札書類で、AWS クラウド コンピューティング サービスを購入した。

 米連邦下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長は、「このようなアメリカの脆弱性は長年の懸念であり、諸外国がクラウドを介して米国の先端コンピューティング技術にリモートアクセスしている」とした。
米議会は4月、米国の技術への遠隔アクセスを規制する権限を米商務省に与える法案を提出したが、この法案が可決される見通しは立っていない。

4 月、四川大学は入札書類の中で、プロジェクトの実装をサポートするために生成型人工知能プラットフォームを構築し、4,000 万個の Microsoft Azure OpenAI トークンを購入した可能性がある。

中国科学技術大学蘇州高等研究院は、3月の入札書類の中で、それぞれが8個のNvidia A100チップを搭載した500台のクラウドサーバーをレンタルするとした。
5月、中国科学技術大学は、中国軍に役立つ可能性のある米国の量子コンピューティング技術を取得し、中国の核開発プロジェクトに参加したとして、米国の輸出規制「エンティティリスト」に登録された。つまりブラックリストに掲載された。
  なんでもありの中国だが、ネット入札にも目を光らせなければならない時代である。


プーチンの沈黙は不気味。ゼレンスキーは「これはゲームチェンジだ」 ウクライナの侵攻という語彙をもちいず、「挑発行為だ」としている

2024-08-30 22:06:06 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)8月26(月曜日)
     通巻第8382号   <前日発行>
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プーチンの沈黙は不気味。ゼレンスキーは「これはゲームチェンジだ」
ウクライナの侵攻という語彙をもちいず、「挑発行為だ」としている
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2024年8月6日早朝、ロシア領内にウクライナが侵攻した。このウクライナ軍の奇襲攻撃は二次世界大戦以来初の外国軍のロシア侵入だった。クルスク地区18万住民のうち、13万3000人が避難した。
厳密に言えば「地域紛争。限定戦争」の範囲から正式な「戦争」の段階に歩を進めたことになり、プーチンのいう「特別軍事作戦」の範疇を超えた。欧米もゼレンスキーの暴走を非難せずに、沈黙し続ける。

プーチンの沈黙は不気味である。
依然としてウクライナの侵攻という語彙をもちいず、「挑発行為だ」としている。この間にプーチンは13年ぶりにチェチェンを訪問し、カディロフと会見したくらいで、外交的にはオルバン、ルカシェンコ、李強、モディ等の来訪を承けたが、記者会見でもクルスク侵攻を語らず、避難民にはとりあえずひとり1万ルーブルを保障し、また捕虜となった住民115名をウクライナからの115名と「捕虜交換」した。

 ゼレンスキーは「これはゲームチェンジだ」と言った。プーチンを「赤の広場にいる病んだ老人」とも比喩した。
 意表を突かれた欧米はたじろいだ。ロシア領には戦線を広げないというのが欧米とウクライナの約束であり、その前提で武器供与を継続してきた。ウクライナがロシア領土を侵せば、戦争はエスカレートし、NATOが巻き込まれるから、下手をすれば第三次世界大戦につながりかねない。

 「間違いなくゲームチェンジの一部だ。しかしEUはゲームの主体ではないにもかかわらず将来の欧州の地政学の運命を決めるものだ」(ジョセフボリスEU外交委員会幹部。元スペイン外相)

 ゼレンスキーは前後してウクライナ領内のロシア正教会の教会すべての閉鎖を命じた。宗教はロシアならびに旧東欧諸国に於いて極めつきに重要な問題である。
 「歴史は神と直接に結ばれている」(ランケ)


ウクライナではカソリックは勢力を伸ばし、信者の獲得に余念がなく、そのうえゼレンスキーはユダヤ教からバイデンの侵攻するカソリックへ改宗した。改宗はユダヤ人にとっては明らかな裏切りである。

 ロシア領内に攻め込まれても、まだ反撃も出来ないプーチンは顔に泥を塗られた格好だが、いかなる反撃を想定しているのか。 

 「ウクライナは寒い冬を覚悟しなければなるまい」とドイツのエネルギー相が警告し、EUエネルギー委員会のカドリシムソンンは「ウクライナ電力は昨年の半分しか確保できず生存できるかの問題となる」と警告した。ゼレンスキー自身もウクライナ国内の80%の発電施設は破壊されたと認めている。
 一方でウクライナ軍はロシアの石油備蓄基地を爆撃し、8月18日から24日まで燃え続けた。

 思い出す人物が居る。
サンクトペテルブルクにあるエフゲニー・プリゴジンの墓。8月23日は、プリゴジンの「暗殺」から一周年。墓地は花束に埋め尽くされた。そのニケ月までにプリゴジン率いる「ワグナー軍団」はクレムリンへ進軍し、クーデターを試みた。プリゴジは「プーチンのシェフ(料理人)」とも呼ばれ、レストランやケータリング事業でプーチンの外国賓客をもてなし権力の側近に食い込んだ。

ウクライナ侵攻において、ワグネルの部隊はバフムートの戦いなどに参加。プリコジンは2023年5月には、弾薬補給の不足に不満を漏らし、セルゲイ・ショイグ国防大臣とロシア連邦軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長を公然と非難した。
23年6月23日にはロシア連邦政府に叛旗を翻し、首都モスクワへ進軍を開始した。プーチンはこれを「反逆」「裏切り」と非難。25日には、隣国ベラルーシの大統領アレクサンドル・ルカシェンコの仲介で矛を収めた。

2023年8月23日、モスクワ北西部のトヴェリ州で墜落したビジネスジェットの乗客名簿にプリゴジンの名前があり、乗客乗員10人は全員死亡が確認された。

プリゴジン氏の頻繁な暴言の主な標的の一人であったセルゲイ・ショイグ元国防相は安全保障理事会に異動となった。汚職捜査で数人の高官が逮捕され、起訴された。ロシアの新国防長官アンドレイ・ベロウソフはテクノクラートであり、数字分析は得意だが、プーチン大統領に政治的、軍事的脅威を与えるほどの経歴とカリスマ性に欠ける。

 軍上層部の移動による作戦立案の立ち遅れか、いやプーチンは計算できているのだろう。もし大規模に反撃すればNATOを刺激し、戦争は次の段階へ間違いなく進む。ロシアもNATOも、率直に言って、そうした事態にはそなえていないのだ。