鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2022年3月9日号)
*インド太平洋戦略の行方
ウクライナ問題の本質はロシアの失敗ではない。米国の失敗である。昨年8月のアフガニスタンからの米国の無様な撤退を見たプーチンは、ロシアがウクライナに侵攻しても、米国はウクライナに派兵しないと見切って軍事作戦を開始したのである。
昨年5月の段階で、米国はアフガニスタンに2500人の米兵を駐留させていた。バイデン大統領は、この2500人を米本土に戻し、中国の台湾侵攻に備えようとして、昨年8月にアフガン撤退を強行したのである。
だがこの2月にロシア軍がウクライナに侵攻したので、バイデンは米兵7000人を東欧に派兵した。ウクライナを守るためではなく、ウクライナに侵攻したロシア軍がさらに東欧に侵攻するのを阻止するためである。
結局、この7000人派兵のおかげで台湾防衛のための2500人は雲散霧消してしまった。もはや米本土に台湾を防衛するための陸上兵力は存在しない。3月1日にバイデンは米議会で一般教書演説を行った。
ウクライナへのリップサービスに議場は沸いたが、バイデンはインド太平洋戦略にも台湾防衛にも全く触れなかった。翌2日に国連特別臨時総会でロシアのウクライナ侵攻を非難する決議が賛成141、反対5、棄権35で採択された。
中国とインドが棄権したのをバイデンは非難したが、この場合、非難の重点はインドにある。中国の棄権は、ロシアとの同盟関係から当然と考えられていたからである。インドはインド太平洋戦略の中核をなすクアッド(日米豪印)会合の一員なのである。
3日にクアッド首脳会合がテレビ会議形式で行われたが、共同発表に対露非難は盛り込まれなかった。インドが反対したのである。国連総会で採択された対露非難がクアッドで採択されないということは事実上、日米が推進してきたインド太平洋戦略の崩壊としか捉えようがない。
バイデンの無気力な眼差しは、そのことをよく物語っている。
(2022年3月9日号)
*インド太平洋戦略の行方
ウクライナ問題の本質はロシアの失敗ではない。米国の失敗である。昨年8月のアフガニスタンからの米国の無様な撤退を見たプーチンは、ロシアがウクライナに侵攻しても、米国はウクライナに派兵しないと見切って軍事作戦を開始したのである。
昨年5月の段階で、米国はアフガニスタンに2500人の米兵を駐留させていた。バイデン大統領は、この2500人を米本土に戻し、中国の台湾侵攻に備えようとして、昨年8月にアフガン撤退を強行したのである。
だがこの2月にロシア軍がウクライナに侵攻したので、バイデンは米兵7000人を東欧に派兵した。ウクライナを守るためではなく、ウクライナに侵攻したロシア軍がさらに東欧に侵攻するのを阻止するためである。
結局、この7000人派兵のおかげで台湾防衛のための2500人は雲散霧消してしまった。もはや米本土に台湾を防衛するための陸上兵力は存在しない。3月1日にバイデンは米議会で一般教書演説を行った。
ウクライナへのリップサービスに議場は沸いたが、バイデンはインド太平洋戦略にも台湾防衛にも全く触れなかった。翌2日に国連特別臨時総会でロシアのウクライナ侵攻を非難する決議が賛成141、反対5、棄権35で採択された。
中国とインドが棄権したのをバイデンは非難したが、この場合、非難の重点はインドにある。中国の棄権は、ロシアとの同盟関係から当然と考えられていたからである。インドはインド太平洋戦略の中核をなすクアッド(日米豪印)会合の一員なのである。
3日にクアッド首脳会合がテレビ会議形式で行われたが、共同発表に対露非難は盛り込まれなかった。インドが反対したのである。国連総会で採択された対露非難がクアッドで採択されないということは事実上、日米が推進してきたインド太平洋戦略の崩壊としか捉えようがない。
バイデンの無気力な眼差しは、そのことをよく物語っている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます