「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)2月10日(木曜日)
通巻7213号
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タリバンが支配するアフガニスタンで戦略的沈黙を維持するアルカィーダ
ETIM(東トルキスタンイスラム運動)は、数百が国境付近に残存している
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国連報告はアフガニスタンでTTP(パキスタン・タリバン)が最大5,000人、アルカィーダ、IS─Kのほか、ETIMの活動家が各派と連絡を取っているとする報告書を提出した。
TTPはパキスタン南西部のバロチスタンでさかんにテロ活動を展開している。パキスタン政府と中国を敵視している。
タリバンが支配するアフガニスタンは「テロ集団にとって安全な避難所である」とも国連は指摘している。
とくに注目している集団はIS-K(イスラム国ホラソン派)で、タリバンへもテロを行う。IS-Kは「スマートな攻撃を仕掛ける継続能力を持ち、国境を越えて活動する可能性がある」と警告している。
TTPには3,000人から5,500人の戦闘員があり、リーダーはノール・ワリ・メフスド。
アルカィーダとISは、主にアフガニスタン、バングラデシュ、インド、ミャンマー、パキスタンからの戦闘員を数百程度養っている模様だ。
中国が敵視しているのはETIMである。
米国が昨秋11月に「テロリストリスト」から削除したのが、この「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」だ。別の集団「トルキスタン・イスラム党(TIP)」も中国に於けるテロを計画している。ただしETIMの主力はシリアに潜伏しているとされ、およそ1,000人から3,000人の兵士がいると国連報告は言う。この両派は「頻繁にワハン回廊を訪れ、ジハードのために新疆への帰還を求めた」という。
この両派はアルカイダ、TTPと協力して「パキスタン、タジキスタンなどにおける中国の利益に対する攻撃を計画する」と報告書は警告している。戦闘員は従来の拠点バダフシャンからバグラン、タカール、その他の州に移され、200~700人の兵士がアフガニスタン国内に潜伏しているという。
アルカイダはアフガニスタンで鳴りを潜め、「戦略的沈黙」を維持している。
パキスタンや中国でなく、かれらは海外で911に匹敵するような派手なテロを計画している。
▼中国人へのテロ? アフガニスタンに中国人は居ない
これらの動きに関してアフガニスタンのテロリスト動向に詳しいアントニオ・ギウゥトージ博士(キングス大学客員教授)は次のように分析している(ジェイムズタウン財団発行『テロリズム・モニター』、通巻17号)。アントニアには『戦場のタリバン』『IS─K』 など十数冊の専門書を世に問うている。
曰く。
「IS─Kはタリバンと米国共通の敵だが、お互いが共同しての作戦は考えにくい。またタリバン政府は中・露をパートナーとは見ておらず、とくに中国は経済的にいかに役に立つ貢献をするかを見計らっているだけ。ロシアへの懐疑心は根強い」。
「アフガニスタンには現在、中国人は居ない。ISは資金難に陥っているらしくイランへの潜入を試みている。また中東各地にいるテロリスト過激派が、いまのアフガニスタンへ潜入するルートが限定されており、このため過激派各派は急速に連帯感を強くして兵站確保を維持している」。
「ETIMはIS─Kと緊密な連絡をとっていたこともあるが、少人数で奥地に逼塞を余儀なくされているようだ。
パキスタンはパンジシール渓谷にいる反タリバンの北部同盟など、カブール政府にまつろわぬ部隊を背後から支援しているらしく、このためタリバンはパンジシール攻撃を控えている」
武装ゲリラの派閥闘争も魑魅魍魎の暗躍ぶり。
令和四年(2022)2月10日(木曜日)
通巻7213号
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タリバンが支配するアフガニスタンで戦略的沈黙を維持するアルカィーダ
ETIM(東トルキスタンイスラム運動)は、数百が国境付近に残存している
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国連報告はアフガニスタンでTTP(パキスタン・タリバン)が最大5,000人、アルカィーダ、IS─Kのほか、ETIMの活動家が各派と連絡を取っているとする報告書を提出した。
TTPはパキスタン南西部のバロチスタンでさかんにテロ活動を展開している。パキスタン政府と中国を敵視している。
タリバンが支配するアフガニスタンは「テロ集団にとって安全な避難所である」とも国連は指摘している。
とくに注目している集団はIS-K(イスラム国ホラソン派)で、タリバンへもテロを行う。IS-Kは「スマートな攻撃を仕掛ける継続能力を持ち、国境を越えて活動する可能性がある」と警告している。
TTPには3,000人から5,500人の戦闘員があり、リーダーはノール・ワリ・メフスド。
アルカィーダとISは、主にアフガニスタン、バングラデシュ、インド、ミャンマー、パキスタンからの戦闘員を数百程度養っている模様だ。
中国が敵視しているのはETIMである。
米国が昨秋11月に「テロリストリスト」から削除したのが、この「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」だ。別の集団「トルキスタン・イスラム党(TIP)」も中国に於けるテロを計画している。ただしETIMの主力はシリアに潜伏しているとされ、およそ1,000人から3,000人の兵士がいると国連報告は言う。この両派は「頻繁にワハン回廊を訪れ、ジハードのために新疆への帰還を求めた」という。
この両派はアルカイダ、TTPと協力して「パキスタン、タジキスタンなどにおける中国の利益に対する攻撃を計画する」と報告書は警告している。戦闘員は従来の拠点バダフシャンからバグラン、タカール、その他の州に移され、200~700人の兵士がアフガニスタン国内に潜伏しているという。
アルカイダはアフガニスタンで鳴りを潜め、「戦略的沈黙」を維持している。
パキスタンや中国でなく、かれらは海外で911に匹敵するような派手なテロを計画している。
▼中国人へのテロ? アフガニスタンに中国人は居ない
これらの動きに関してアフガニスタンのテロリスト動向に詳しいアントニオ・ギウゥトージ博士(キングス大学客員教授)は次のように分析している(ジェイムズタウン財団発行『テロリズム・モニター』、通巻17号)。アントニアには『戦場のタリバン』『IS─K』 など十数冊の専門書を世に問うている。
曰く。
「IS─Kはタリバンと米国共通の敵だが、お互いが共同しての作戦は考えにくい。またタリバン政府は中・露をパートナーとは見ておらず、とくに中国は経済的にいかに役に立つ貢献をするかを見計らっているだけ。ロシアへの懐疑心は根強い」。
「アフガニスタンには現在、中国人は居ない。ISは資金難に陥っているらしくイランへの潜入を試みている。また中東各地にいるテロリスト過激派が、いまのアフガニスタンへ潜入するルートが限定されており、このため過激派各派は急速に連帯感を強くして兵站確保を維持している」。
「ETIMはIS─Kと緊密な連絡をとっていたこともあるが、少人数で奥地に逼塞を余儀なくされているようだ。
パキスタンはパンジシール渓谷にいる反タリバンの北部同盟など、カブール政府にまつろわぬ部隊を背後から支援しているらしく、このためタリバンはパンジシール攻撃を控えている」
武装ゲリラの派閥闘争も魑魅魍魎の暗躍ぶり。
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