カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

NGO、子どもを性的虐待したベルギー人の国外追放を請願

2009年10月30日 19時31分50秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
 こんにちは、長島です。10月6日に、ベルギー人男性、フィリップ・デザールが少年に性的虐待をした罪で服役し、釈放後にその少年の母親と結婚しようとしているという記事を紹介しました。今回はその続報として、カンボジア国内のいくつかの子ども保護団体が、デザールを国外追放するよう求めているという記事をボランティアの方に訳していただきました。

シーライツとしても今後、特に加害者が日本人の場合、今回のような抗議活動に参加していきたいと思います。
最終的にデザールは9月末に国外追放されたのですが、そちらの記事も追って掲載します。

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

写真は、今回の抗議活動の中心となったローカルNGO・APLEの報告書、"Survey on street-based Child Sexual Exploitation in Cambodia"より。©APLE

カンボジアデイリー紙 2009年7月18-24日ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

NGO、子どもを性的虐待したベルギー人の国外追放を請願

 子どもへの性的虐待で前科ニ犯のフィリップ・デザール(ベルギー国籍)の国外追放を政府に求める請願書をNGOがまとめ、国内の児童保護団体に賛同を呼びかけている。

デザール氏は、90年代に子どもをレイプし虐待した罪でベルギーにて3年間服役、2006年にプノンペン市裁判所にて18年の有罪判決を受けたが、控訴審で刑期が短縮され、今年4月に釈放された。そして同月、彼によって被害を受けた少年が住むバンテアイ・メアンチェイ州へ移った。

 ネッス・サヴーン国家警察長官に宛てられた請願書の写しには、「私たちは、内務省入国管理局がデザール氏のカンボジアのビザを取り消し、内務省が彼に国外追放を命じるよう、要請します」と記されている。

 請願書では、デザール氏の現住所を問題視している。「少年への虐待が再び行なわれるリスクの高さ、同じ状況が続くことで生じる少年の当惑やトラウマを懸念する。また、デザールと同居する11歳の弟が性的虐待を受けるリスクも高い。」と指摘、「彼をこのような状況に置くことを容認すれば、子どもたちや地域社会に対し、犯罪を通報することは無意味であり、外国の性犯罪者はカンボジア国内では刑罰を逃れられるという、間違ったメッセージを送ることになる。」

 請願書をまとめたAPLE(Action Pour Les Enfants=子どものための活動)のサムレアング・セイラ代表は、11団体に送付した請願書にはすでに4団体が署名したと話している。

 国家警察スポークスマンのキエット・チャンタリッス氏と内務省スポークスマンのキエウ・ソペアック中尉からのコメントは水曜日には得られなかった。
 イッス・ラディ法務省次官は水曜日、裁判所が服役後の国外追放を命じていないため、法的には、デザール氏が再び罪を犯さない限り国外追放は不可能であると話している。
「新たな不法行為があれば政府は措置をとり、それから国外追放となるだろう」とラディ氏は語った。

(翻訳・小味かおる他 2009年9月16日)


人身売買レポートでカンボジア降格、後退の傾向

2009年10月13日 13時25分00秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。
毎年6月、米国務省は、各国の人身売買への取り組み状況を調査した結果を報告書にまとめて発表し、政府の努力に関する4段階でのランク付けを行っています。「ランク1」は、米国「人身売買被害者保護法」に基づく最低基準を十分に満たしている国、「ランク2」は、同基準を満たしていないが、同基準到達のため相当の努力をしている国、「ランク2監視対象」は、同基準を満たすために相当の努力をしている一方、成果が出ていない国、「ランク3」は、同基準を満たしておらず改善努力もなされていない国としてリストされています。
この報告書(通称:TIPレポート)に関しては判断基準があいまいなどの理由から批判もありますが、日本では、2004年に日本が監視対象国としてリストにランクされたことにより(ほとんどの先進国はランク1)、マスコミも政府も注目し、2005年、刑法が改正され人身売買罪の創設につながりました。

さて、ある国がランク3になると、米国の経済制裁の対象ともなります。実際、カンボジアが2005年にランク3に引き下げられたときは、ゆるやかなものではありましたが、経済制裁を受けました。その後カンボジアは、2年間、監視対象国としてランクづけされたあと、2008年は4年ぶりにランク2に格上げされました。にもかかわらず、今年は再びランク2の監視対象国として格下げされてしまいました。http://www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2009/
今回は、それについての記事をボランティアの方が翻訳してくださったので紹介します。

 2008年に人身売買取締法が改正されたにもかかわらず、なぜカンボジアはランクが下がったのでしょうか? 詳しくは、今年のカンボジアについてのTIPレポートの和訳をシーライツのホームページに掲載しましたので、そちらを読んでいただければ詳しくご理解いただけると思いますがhttp://www.c-rights.org/6-1/、この法律について警官が十分理解しておらず、人身売買業者ではなく、路上で働くセックスワーカーばかりが逮捕されているという状況があります。さらにひどいことに、その拘留中に警官や社会福祉省のスタッフからレイプされたり、お金を強要されたりしているひどいケースも数件報告されているそうです。
セックスワーカーたちのネットワークは、TIPレポートがこの点を指摘したことを評価し、レポートの提言にそってセックスワーカーを逮捕するのではなく、人身売買業者を逮捕するようにすべきだという意見を出しています。
http://www.sexworkeurope.org/site/index.php?option=com_content&task=view&id=295&Itemid=186

人身売買取締法の執行の問題点については、今後もフォローしていきたいと思います。

カンボジアの子どもの人身売買を防止するためご支援ください。
詳しくは http://www.c-rights.org/join/donation.html をご覧ください。
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/ab/95d0c05681ba28d60d5ab5f8b1c75861.jpg

図は、米国務省の人身売買報告書2008のカンボジアより
出所:www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2008/


人身売買レポートでカンボジア降格、後退の傾向


カンボジア・デイリー紙ウィークリーレビュー2009年6月13-19日号
ベサニー・リンゼイ、ヌウ・ヴァナリン記者

 米国務省発表の人身売買に関する年次レポートにおいて、カンボジアは再度評価を下げられ、昨年の格上げからわずか一年での降格となった。
昨年は、人身売買を防止する最低基準の到達に向けた「めざましい努力」によりカンボジアは同省規定のランク2に格上げされていたが、2009年のレポートでは改善傾向の後退がみられ、ランク2の監視リストに載ることとなった。

 同レポートでは、人身売買に関与する者(共謀する役人を含む)の有罪判決・処罰、及び被害者保護に対してカンボジア政府の取り組みに進展がないと報告されている。
ランク2(※1)は、人身売買を防止する最低基準を満たしてはいないものの、基準到達の適切な努力は行っているとみなされる。
米国務省は、カンボジア当局に対し2008年に人身売買取締法が施行されて以来、有罪判決件数が減少していることを指摘。2008年4月から2009年3月までの間にわずか12名しか有罪判決を受けておらず、これは前年同期間の52名を大きく下回る。また警察内部および司法関係者の間においても汚職がはびこり、カンボジアの人身売買問題が深刻化していると言及している。

 レポートによると、警察や司法関係者を含む、多くの個人が直接的ないしは間接的に人身売買に関与しているという見方が一般的である。一部の地元警察や役人が買春宿の営業を黙認する見返りに金銭を強要したり、オーナーから賄賂を受け取っていたりすることは周知の事実であり、連日不正が行われていることもあるという。

 レポートでは様々な事例が報告されており、買春や使用人労働を目的として売られた子ども、カラオケバーや買春宿で売春を強いられた女性、タイの漁船やマレーシアのプランテーションで労働させられた男性などが挙げられている。
レポートが公表された同日に米大使館のスポークスマンであるジョン・ジョンソン氏のコメントはなかったが、米大使館によるプレスリリースでは、前年度に人身売買に対する取り組みに後退が見られたとしている。

 カンボジア内務省 人身売買対策局のビッス・キムホン局長は、新レポートの内容は認識していないが、警察は最善を尽くしていると述べている。「我々は、犯罪者を逮捕・起訴するために捜査及び取締りを強化している。人身売買の防止を目的として関連ニュースを放送して、人々に呼びかけている。」とも話した。
「2009年中に警察当局は、数多くの人身売買事例を取り締まり、防止してきた。」とキムホン氏は付け加えたが、外出先であったため具体的な統計は示されなかった。
閣僚評議会のスポークスマンであるファイ・シファン氏は、政府が人身売買に十分な措置をとっていないとする報告内容を容認できないとしている。「クメール文化では女性は尊重される」とし、政府は人身売買の防止に全力をあげているとシファン氏は話している。

 カンボジアの人権団体Licadho(Cambodian League for the Promotion and Defence of Human Rights; 人権の保護と普及のためのカンボジア連盟)のナリー・ピロージュ事務局長は、「Licadhoはレポートにまだ目を通しておらず」、米国務省がカンボジアの格下げをした理由を把握していないとして、レポート内容についてはコメントを避けた。

(※1)Trafficking in Persons Report 2009 Tier Placements より


子どもを性的虐待した元受刑者、被害者少年の母親と結婚か

2009年10月06日 18時39分30秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。

先日、子どもへの性的虐待の隠れ蓑に養子縁組という手口を使おうとしたスウェーデン人男性の記事を紹介しました。今回は、同じように少年を性的虐待したベルギー人男性が少年の母親と結婚しようとしているという記事を紹介します。

 カンボジアでは、子どもを狙う外国人が少年だけでなく、その親ともまず仲良くなり、物資の支援提供などをしたあとに子どもを性的に虐待するというやり方が報告されています。いったん支援を受けた家族は子どもが虐待されているのを知っても何も言えなくなってしまう状況になるようです。(このようにまず子どもと仲良くなり、その後、性的虐待をすることを英語ではgroomingと呼ばれていて、インターネット上でもこの手口が使われています。)
優しくしてくれたおとなを信用したあとに性虐待に遭ってしまい、その上、親が何も助けてくれなかった経験をした子どもたちは、どれだけ深い心の傷を負っているでしょうか。

その後、このベルギー人男性の結婚計画に対して、カンボジアのNGO数団体が抗議し、国外追放されることとなりました。その詳細についての記事は別途掲載します。

写真は子どもの性的搾取に取り組むNGO・APLEの報告書“Street Pedophilia” in Cambodiaより ©APLE

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
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子どもを性的虐待した元受刑者、被害者少年の母親と結婚か

カンボジアデイリー紙 2009年6月6-12日ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

 バンテアイ・ミエン罪で実刑判決をうけた事件の被害者とされる少年と、近頃、同居を始めていた。
州警察の人身売買対策部門オム・サッス署長は、デザールが当時13歳の少年を性的虐待した罪による3年の服役を終え、4月5日にプノンペンのプレイ・ソー刑務所を出所したと伝えた。デザールは被害者少年の母親サオ・ニイさんと5月25日に婚約し、6月3日にカンボジアを後にした。「婚姻関係の書類」を作成するためにベルギーに向かったという。

 当初デザールは懲役18年の有罪判決を受けたが、控訴審で懲役3年に大幅軽減され、最高裁もこれを支持した。彼は6月1日に婚約者と共に同州セレイ・サオポアン郡トゥック・トゥラー集合村を出てプノンペンに向かったと、サッス署長は伝える。署長は、「この婚約が更なる子どもの性的搾取を目的とした隠れ蓑かどうかを調査中で、ニイさんの親族からは、村長やらが列席した婚約パーティーの写真を見せてもらった」と話している。先月、警察と地元のNGO、APLE(Action Pour Les Enfants=子どものための活動)は、デザールが現在16歳となる被害者の少年に引き続き虐待を加える懸念を表明、ともに暮らす少年の弟の安全も憂慮している。

 デザールは子どもへの性的虐待の常習犯で、1994年にベルギーで子どもをレイプし虐待した事件で有罪判決を受け、懲役5年の刑で3年間服役している。
サッス署長によると、デザールは日中にニイさん宅を訪れ、夜はゲストハウスに滞在したと、ニイさんの親族が話しているという。

 APLE カンボジア事務所サムレアング・セイラ代表は、APLEが他の子ども保護団体とともに、デザールのカンボジア再入国阻止に取り組んでいると伝えている。「デザールは好ましくない人物なので、彼のビザを発行しないよう働きかけている。デザールは養豚場を所有していて、カンボジアに永住するつもりだ」とも語った。

(翻訳・植田あき恵 2009年8月6日)



子どもポルノの罪で日本人男性に有罪判決

2009年10月02日 20時12分48秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
甲斐田です。

先日、お伝えしたように、カンボジアでは昨年、日本人男性が子どもポルノの罪で逮捕される事件が起きました。この事件に対して判決が出たという記事をボランティアの方に訳していただきましたので、ご紹介します。

子どもポルノに関する情報は限られていて、実際は何件くらいの事件がカンボジアで発生しているのかを把握することは不可能ですが、ブログに掲載されることもあり、少なくない数の子供たちが被害にあっていることは確かです。記事の最後には、このように加害者に判決が出るのは、カンボジア政府が本気で処罰していこう姿勢の表れだとしていますが、判決による損害賠償金額はあまりにも低いものです。

取締りが弱く、わずかなお金で子どもを利用できるという理由で、カンボジアやその他の国で日本人が子どもを性的搾取しに旅行するのは、人権の観点からも倫理的にも容認しがたい問題です。

日本から海外に子どもを搾取しに出かける「子どもセックスツアー child sex tourism(注)」に対しては、シーライツとしてこれまでも反対してきましたが、もっと大きな効果的な運動にするにはどのようにすればいいか考えていきたいと思います。そのためにも、ひとりでも多くのみなさんが運動に参加してくださることを願っています。

(注)Child Sex Tourismをなくしていこうとする運動は1990年代から世界的に広がっています。詳しくは、シーライツ発行「ブラジル会議報告書」(700円)をご覧ください。

写真は子どもセックスツアーをなくす活動をASEAN諸国で実施しているオーストラリアのNGO、Child Wiseが作成したポスター。©Child Wise

子どもの性的搾取をなくすためにご支援ください。
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子どもポルノの罪で日本人男性に有罪判決

カンボジアデイリー紙 2009年7月11-17日 ウィークリー・レビュー
プラック・チャン・トゥル記者

キム・エング裁判長によれば、プレア・シハヌーク市裁判所は、少年7人の裸の写真を撮影したとして、日本国籍中川俊一被告(32歳)に懲役6年の判決を下した。
エング裁判長は、2日にわたる公判で同被告に子どもポルノ製作に係る罪で有罪判決を言い渡したほか、被害者の少年(11歳から15歳)一人につき50万リエル(125米国ドル相当)の賠償金支払い命令を下したことを明らかにした。
被告は全面的に起訴事実を認め、少年がきれいだったため、個人的鑑賞のために撮影しただけだと主張しているという。公判では少年7人が揃って中川被告の関与を証言した。

地域住民は昨年8月17日に中川被告がオートレスビーチ付近で少年たちの裸を撮影し、2~5米国ドルをそれぞれに支払っているのを目撃し、これを警察に通報した。
警察によると、中川被告は自身が製作中の本のモデルとして少年たちを撮影したと主張していた。

子どもの性的搾取の問題に取り組むNGO「Action Pour Les Enfants(子どものための活動、以下APLE)」のペン・マネッス氏は、被害者の代理人として、少年たちの母親らが賠償金額を不服とし、上訴する意向であることを伝えた。
「少年の被った被害の大きさに比べ、一人あたり50万リエルはあまりにも不十分」とマネッス氏は述べている。

APLE カンボジア事務所サムレアング・セイラ代表によれば、中川被告は昨年改正人身売買取締法が施行されて以降、子どもポルノに係る罪で有罪判決を受けた初の外国人となる。
「本事件は、カンボジアが子どもポルノの製造及び提供行為を本気で罰するようになったことを示している」と同氏は述べている。

(翻訳・植田あき恵 2009年8月6日)

女性たちに「立ち上がって闘おう」と伝えている ~ソマリーさんインタビュー記事 その2

2009年09月25日 13時10分03秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。

前回に引き続き、シーライツが支援するアフェシップの創設者であるソマリー・マムさんに関する記事を会員の小味さんに翻訳していただきましたのでお届けします。今回はソマリーさんが、人身売買の被害に遭った女性たちをどのようにエンパワーしようとしているか、そして、彼女がドナーから支援を得るにあたってどのような苦労をしているかが描かれています。

8月にシーライツ主催のスタディツアーでアフェシップの施設の保育室(シーライツ支援)を訪問し、保育室を利用しながら職業訓練を受けている若いお母さんたちと交流をもちました。短い交流でしたが、訪問した私たちが、体験を乗り越えて力強く生きていこうとしている彼女たちを応援したいという気持ちが伝わったのか、別れるとき、女性たちは笑顔と涙で見送ってくれて、私たちもとても励まされました。

写真はそのときの様子です。

AFESIPのトムディセンターで保育サービスを利用する女性たち。右は保育士のニエットさん。ニエットさんはアフェシップの職員と結婚し、もうすぐお子さんが生まれます。©C-Rights

困難の中から立ち上がってきたヒーロー~ソマリー・マムとのインタビュー

An unlikely hero: Interview with Somaly Mam
2009年6月5日
INSEAD(訳注:フランスとシンガポールにキャンパスを持つビジネススクール・大学院)
出典:UNIAP Cambodia News Digest May 29,2009


ソマリー・マムは、努力家で、精力的で、影響力のある、疲れを知らないリーダーだ。これが、タイム誌の「世界に最も影響を与えた100人」さらにCNNヒーローに選ばれた理由でもある。
ソマリー・マムは、ヒーローっぽくない。彼女自身が人身売買の被害者で、12歳の時にカンボジアの買春宿に売られた。約10年後、あるフランス人の援助関係者の助けで逃げ出し、1993年にパリへ渡った。2年後、カンボジアに帰国して、「Agir Pour les Femmes en Situation Precaire (AFESIP)-困難な状況に置かれた女性のための活動」を創立した。39歳の今、彼女とその団体は、カンボジアや他のアジア諸国で、何千人もの子どもや女性たちを救出し、教育を保障し、職業訓練を提供している。世界中で、人身売買に対するキャンペーンも実施している。先日、ソマリー・マムはシンガポールのINSEADのアジア・キャンパスにおける講演会に先立って、'INSEAD Knowledge'(訳注:動画やニュースレターを配信しているサイト)のインタビューに応じた。


「私たちは(人身売買の被害者に)どうやったら立ち上がって闘えるのかを説明します。彼女たちに、立ち上がって世界中に希望があることを示そう、と話しています。」数々の困難を経験したにも関わらず、ソマリー・マムは希望に溢れている。彼女が最も苛立つことは、汚職への対処である。人身売買業者と組織だった犯罪グループは、裁判所や警察に影響を及ぼし、彼女の仕事を振り出しに戻してしまう。「彼らはお金があり、何でもお金で解決できてしまう」と言う。

マムの団体は、草の根レベルで活動し、人身売買被害者である女性や子どもたちを助けている。彼女は、地球規模の問題解決には、ローカルNGOと大きな国際機関の双方の協働が必要だと信じてはいるが、その調整には、行動する時間よりもはるかに話し合いの時間が多いと感じている。マムの時間の過ごし方は、大きなNGO職員の過ごし方とは違う。彼女にとっては一日一日が貴重だが、大きなNGOにとっては、1日も1年もそんなに長い時間ととらえられていない。「買春宿にいれば、1日はとても長いのです。」とマムは言う。

AFESIPはお金も必要だけれど、同時に、世界全体を啓発するボランティアや援助も必要としている。「どの女性もどの子どもも虐待されたくない」と彼女は言う。「もし風俗街で彼女たちとすれ違っても、見下さないでほしい。」それ以上に、人身売買との闘いで必要なのは、男性への教育だろう。「本当にこの問題を終わりにしたかったら、需要をなくさなければなりません。」

AFESIPによって救出された女性や子どもたちは、安心できる居場所、教育、職業訓練を得てやっと、永久に買春宿と縁を切ることができる。「彼女たちに法律家になってほしい。自らの大変な経験をふまえて、決して買収されることはないでしょう。」とマムは言う。
彼女は、Lexis-Nexisが、財団に貢献してくれたことを評価する。資金支援だけでなく、助成金申請書作成の専門技術、技術支援、専門家たちの時間も提供してくれた。ある中堅管理職は、仕事時間の半分を彼女のサポートに費やしてくれたそうだ。

マムと彼女の団体は、世界的なセレブ、アンジェリーナ・ジョリーやスーザン・サランドンなどからの世間の注目を引くサポートも受けている。こうした人の影響力と人脈は、多くの人の関心を集めるために役立つと、マムは言う。「私が欲しいのはお金だけではなく、みなさんに来てもらって、私の世界を見て欲しいのです。この世界はとても底が深くて、私は5千人の少女を救出したけれども、まだまだたくさんいるんです。」そして、より小さな子どもが人身売買業者に狙われるようになってきていると、マムは付け加える。

ドナーや援助関係者への対応は、死の恐怖より頭の痛いことだと、マムは言う。「分をわきまえて話さなければならないけど、私はそういう教育を受けることができませんでした。」「彼らに私を理解してもらうことは大変骨が折れますが、これは私の課題です。」
「私のゴール? 子どもたちを助けて幸せにすること」カンボジアの現場で、マムは少女たちを少しずつ、でも着実に助けている。

(翻訳・小味かおる 2009年8月2日)

買春の被害にあった少女たちを救出 ~ソマリーさん記事その1

2009年09月15日 18時52分41秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんにちは。甲斐田です。
ボイス・オブ・アメリカ(カンボジア語ラジオ放送)のウェブサイトに掲載されたソマリー・マムさん(シーライツが支援するアフェシップの創設者)に関する記事を会員の小味さんが訳してくださったのでご紹介します。

先日、アフェシップのHIV/エイズ教育の担当スタッフに同行して、セックスワーカーたちの女性に会ったのですが、ピアエデュケーター(同じ仕事、状況をもつ仲間に教育をする人のこと。ほとんどがボランティア)の女性が誇りをもって活動をしている姿に胸を打たれました。

昨年、制定された新しい人身売買禁止法がセックスワーカーの女性たちに及ぼしている影響、人身売買の被害にあった少女たちの置かれている状況、アフェシップの活動、少女たちに対するソマリーさんの思いをみなさんに知っていただければと思います。

写真はHIV/エイズ教育を行うソマリーさんの様子です。
©AFESIP

子ども買春をなくすための活動を支援してください。詳しくは、http://www.c-rights.org/join/donation.html

セックスワーカーの救出、そして保護
Rescued Sex Workers Find Refuge
By Ker Yann, VOA Khmer
2009年5月21日

カー・ヤン VOAクメール(*Voice Of Americaカンボジア語放送)
出典:http://www.voanews.com/Khmer/archive/2009-05/2009-05-21-voa1.cfm

プノンペンのセックスワーカーはプノンペンの路上でも客をとっている。大規模な不法性産業を規制する近年のカンボジア警察当局の努力にも関わらず、このビジネスは盛んになる一方だ。閉鎖される買春宿がある一方、新たに違法な宿が営業を始めている。 カンボジアの法律では、売春は違法と明確に定義されていないが、性産業に難色を示す当局により、定期的に路上摘発が実施されている(訳注:公共の場での客引きは違法行為であるため)。カンボジアでは毎年、何百人もの少女たちが人身売買業者に誘拐され、買春宿に売られている。彼女たちの多くは長年の精神的・肉体的苦痛に耐え、1日に20人以上もの客を取らされる。

 同時に、セックスワーカーの増加は、ビアガーデンやカラオケクラブやバーにまで及んでいる。「バーガール」と呼ばれる女性たちの中には、貧困から脱却するためにセックスワークを選ぶ人たちもいるが、買春宿を拠点としたセックスワーカーの大多数は人身売買の被害者だ。

 自身も人身売買の被害者であったソマリー・マムが設立した団体(AFESIPアフェシップ)は、人身売買の被害者の救出と社会復帰を支援している。マムは、カンボジアの大規模な人身売買に関わる組織だった犯罪ネットワークや公務員の汚職を非難する。「犯罪組織のネットワークにより、人身売買のシステムが構築されました。ブローカーは村から村へ少女を探しに行きます。結婚ということで連れ出したり、プノンペンで高収入のいい仕事があると約束したりして、少女達をそそのかします。被害者の多くは、あまり教育を受けていないので、罠に陥り、都市に来ると、買春宿に閉じ込められるんです。」とマムは話す。

 ソマリー・マムの団体は、1996年の設立以来、カンボジア全土の買春宿から、4千人を越える性的奴隷にさせられた少女や女性たちを救出してきた。現在は3つのセンターで、250人を超える少女たちを保護している。半数以上は18歳以下で、多くの少女たちが長年にわたる買春宿での拷問や虐待に耐えた。

 ヴァン・シナーは、13歳の時にどのようにベトナムから誘い出され、カンボジアの売春宿に閉じ込められたかを泣きながら話す。「何度も叩かれ、多くの客を取らなければなりませんでした。拒否したら、電気ショックで拷問されるか、辛い唐辛子を食べさせられました。地下室に閉じ込められ、1日に15人から20人の客を取らないと、叩きのめされ、さらに拷問されました。」

 ソマリー・マムは、「買春宿は、生き地獄」と自らも耐えた長年の虐待を振り返る。

「苛酷な経験や劣悪な状況下で生きなくてはならなくても、あなたが悪いという意味ではないんです。私たちは、自らのおぞましい経験と向き合って、それらを何か前向きなことへと転化しなければならないけれども、自らの身に起こったことを決して忘れることはできません。いつも記憶がよみがえってきます。私たちは多くの犠牲者を救出しなければなりませんが、私たちも彼女らの愛に救われるのです。」

 セックスワークに巻き込まれた女性は、はかりしれない精神的・肉体的な障害を抱える。AIDSやその他の性感染症などと同様に、多くの被害者が心理的にも傷ついている。マ・ライ女医は、ほとんどの少女には長期セラピーが必要と話す。

「センターに来るほとんどの少女が深刻な精神障害を抱えています。すぐ怒ったり、頻繁に叫んだり、とにかく死にたがったりします。こうしたとき、彼女たちの体や命は大切な価値あるものだと話して勇気づける定期的なカウンセリングを行なっています。そうしたカウンセリングは非常に多くの時間を要します。」

ソマリー・マムのセンターは、少女たちが新しい友だちをつくり、失った子ども時代を取り戻せるよう愛らしい環境を整えている。精神面と肉体的な傷の両方から癒すように、ソマリー・マムの団体では、さらなる教育と職業訓練を行なっている。
少女たちがセンターを離れた後に就職できるよう、正規クラスに併行して職業訓練も提供されている。しかし、主たる目標は、少女たちが自らの人生に意味を見出すこと、明るい未来を描くことを教えることである。人身売買は、世界で第3位の収益性の高い犯罪ビジネス(profitable)で、今日では大西洋三角貿易(奴隷貿易)時代の最盛時よりも多くの奴隷が存在する。ここにいる少女たちは幸運を掴んだ一握りにすぎず、活動の輪を広げて性産業を撲滅に追い込まなければ、カンボジアや世界中で何千もの少女たちが待ちうける運命から逃れられない。
(翻訳・小味かおる 2009年8月2日)


スウェーデン人男性、子どもへの性犯罪で起訴される

2009年09月11日 13時53分40秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援

こんにちは。甲斐田です。長らく更新が滞っていてすみませんでした。
近々ごあいさつさせていただきますが、カンボジア事務所に新しくスタッフが入りましたので、これからは、頻繁に更新できるようになると思います。

カンボジアで子どもたちを性的搾取から守る努力は、政府、NGOによって続けられていますが、残念ながら、子どもの性的搾取の事件は後を絶ちません。カンボジアでは、近年、性的搾取をするために養子縁組という手段が使われることがあるのですが、最近も、スウェーデン人男性がその手口を使おうとして逮捕された事件がありました。その事件についての記事がプノンペンポスト2009年5月11日に掲載され、シーライツ会員の小味かおるさんに訳していただきましたので、ご紹介します。

なお、これから、子どもの性的搾取にかかわる記事を随時掲載していく予定です。

近々、この逮捕されていた男性が住んでいたとされる同じ場所のシアヌークビル(カンボジアのビーチリゾート)で数人の子どもの裸の写真を撮って逮捕された日本人についての記事も掲載します。

写真は多くの外国人が訪れるビーチ、シアヌークビル
出所:http://www.sihanoukville-cambodia.com/aboutbottomstuff/pics.html
写真は本文とは関係がありません。


スウェーデン人男性、子どもへの性犯罪で起訴される

プノンペンポスト2009年5月11日
チュラン・チャムロウン記者
Swede charged with underage sex crimes
The Phnom Penh Post: May 11, 2009


62歳男性は1981年スウェーデンで幼児性的虐待の罪で調査されていた――人身売買局員談。

プノンペン市裁判所はスウェーデン国籍の62歳男性を子どもに対する性犯罪の罪で訴追した。ヨハン・アブラヒム・エスコリは、有罪となれば10年の禁固刑となる。
プノンペン市の人身売買対策青少年保護局ケオ・ティア局長は、エスコリ容疑者は猥褻行為と少年3人との性交渉の2つの罪に問われていると語った(訳注:15歳未満の子どもとの性行為はカンボジアの人身売買禁止法で犯罪と規定されている)。

容疑者は水曜日、自分の養子と主張する9歳のカンボジア少年と部屋を共にしていたプノンペン市アンコール・インターナショナル・ホテルにて逮捕された、と局長は話し、「容疑者は、猥褻行為と未成年との性交渉の2つの罪で拘留中と聞いています」。

エスコリは1981年にスウェーデンで子どもへの性犯罪で告訴されたが証拠不十分で禁固刑にならなかった、また、2006年末にはカンボジアで3人の少年に対する犯罪が疑われていたと、局長は付け加えた。

フランスの子ども保護NGOのAction Pour Les Enfants(APLE=子どものための行動)のカンボジア事務所長サムレアン・セイラ氏は、逮捕前にエスコリは5人の少年と暮らしていたと語った。

APLEは、彼が定期的に複数の少年を連れてレストランへ来るという通報を受けて、2007年から彼のシハヌークビルの自宅を見張っていた。

「エスコリ容疑者は2007年に地元警察に尋問されたが逮捕には至らなかった」とセイラ氏は話し、昨年、彼が少年の養子縁組を申請したが当局の認可が得られず却下された、とも続けた。

「この男は一番好きな9歳の少年を養子にするために母親への依頼書に記入しました。これは他の外国人がとってきた手口で、母親は警察や地元NGOからの疑いを避けるために500ドルと引き換えに承諾しました」とセイラ氏は話している。


アフェシップの縫製所を訪ねて スタディツアー報告その8

2008年06月23日 22時45分09秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんばんは。甲斐田です。今日はスタディツアー報告その8をお届けします。前回に引き続き、アフェシップへの訪問報告ですが、今回は職業訓練を受けた女性たち(人身売買や性的搾取の被害を受けた女性)が、主にスペインなど海外から服やテーブルマットの注文を受けて仕事をしている縫製所を訪問したときのものです。文中に出てくる保育所を開設することができるように、現在、寄付を募っています。がんばっている女性たちの子どもたちが危ない目にあわず、健やかに成長できるようにみなさまのご支援をお待ちしています。また、アフェシップの女性たちが作る服も注文していただけたらと思います。詳しくはinfo@c-rights.org まで。

写真はお母さんが仕事をする間、縫製所の床に寝かされている子どもです。

アフェシップの縫製所を訪ねて 

Y. Yさん(会社員)

   2008年3月24日、アフェシップのフェアファッションの代表ロタさんが縫製所の中を案内してくれました。
   
 2ヶ月前に越してきたばかりでまだ散らかっているという縫製所。
入り口を入ると6台のミシンがあり稼働中。女性たちは笑顔で迎えてくれました。

「近くにロシアンマーケットがあり、そこにお店を出したかったのですが、賃料が高いのでこの場所になりました。」

 2階に上がるとまず裁断チームの部屋があり2人の少女がいました。そして、デザインマネージャーのサビ・ベンジョンソンさんのミーティングルーム。

 3階に上がると縫製所があり9台のミシン、4人が作業中。

 かつては20名ほど働いていたのですが、結婚、出産などで現在15名。注文が増えているのでトムディーセンター*に働く人を依頼中。
(*編集注:アフェシップの職業訓練センター。詳しくはソマリー・マム著『幼い娼婦だった私へ』をお読みください) 「アメリカから注文がきていて1ヶ月はかかる。その後、スペインから大量の注文が入る予定です。日本の方にもどうぞ伝えてほしい。

 新しいデザインの服をつくるためにスペインからデザイナーを雇うことになりました。」とのこと。

Q1)アメリカからのオーダーはいくらくらいか?

A)安いものから高いものまであわせて500着、5千ドル(約50万円)の注文。
Q2)日本からオーダーする場合は、どのようにしたらよいのか?

A)ウェブサイトにデザインがのっているので好きなデザインを選んで注文ができます。

Q3)フェアファッションのフェアとは?

A)フェアトレードの基準に従っています。

※フェアトレードとはhttp://www.peopletree.co.jp/fairtrade/index.html
                   
Q4)子どもをそばにおいて仕事をしている女性がいるが、針、ハサミなど子どもには危険が多いと思う。 ここでは保育所はつくらないのか?
(編集者注:トムディセンターにはシーライツの支援で保育室を運営しています)

A)ほとんどが核家族なので、小さな子どもは連れてくるしかない。近くに保育所が
必要だが予算が少なく、場所を見つけて保育士を雇うのは難しい。

Q5)もっと大きな会社にするためアフェシップ以外からも人を雇う予定はないのか?

A)アフェシップより10人ほど受け入れてほしいと話があったが、予算の都合で難しい。しかし、大量の注文が入るときは50人は雇いたい。注文が不定期であるため安定することが大事だ。
 
代表のロタさんは丁寧に説明してくれました。

 たしかに、小さな子どもは長い時間静かにしているのは難しく、針やハサミ等に気をつけなければならず、それゆえに母親までもケガをすることや仕事への集中力が欠けるであろうと感じました。 

 品物はどれもきちんと仕上がっていて、彼女たちの努力がうかがえます。私も服を注文しました。まもなく届く予定で、とても楽しみにしています。
 
【編集部より】
縫製所で保育室を運営できるようにご支援ください。
http://www.c-rights.org/join/donation.html

アフェシップで話を聞いて スタディツアー報告その7

2008年06月13日 18時28分31秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんばんは。甲斐田です。今日(13日)映画「闇の子供たち」(子どもの人身売買、性的搾取が描かれています)の試写会に行ってきました。加害者としての日本人がしっかり描かれているところがいいところだと感じました。映画のパンフレットに書かれているように恵泉女学院大学の斉藤百合子さんが助言された点に対して、監督がきちんと応えていることが評価されると思います。多くの人に見てほしいです。7月から劇場公開だそうです。

さて、スタディツアー報告その7を掲載させていただきます。1月に招聘したソマリー・マムさんが代表をつとめるアフェシップについて渡邊美奈子さんが報告してくれました。なお、明日のスタディツアー報告会で渡邊さんも発表されます。

写真はアフェシップの施設トムディセンターの様子です。
強調は編集部。



AFESIPで話を聞いて
                              渡邊美奈子(大学生)

 AFESIP(アフェシップ)は、カンボジアの7つの州で活動しており、買春宿にコンドームや石鹸を配ったり、売春に従事している女性たちにHIV/AIDSの予防法を教えたり、病気になった時にトゥクトゥク(カンボジア版タクシー)で彼女たちをクリニックに連れて行く、などの活動をしています。

 現場での情報は全てコンピュータに記録し、月に1回の頻度でデータファイルを作っており、センターと関わりを持った1人1人のデータが保管されています(どこで保護してどこへ移動されたかなど)。勿論人身売買や性的搾取の被害者である彼女たちには、AFESIPのルールを伝えてから了承サインをもらい、その人の個人情報などを記録しています。

クリニックに来た女性たちに対しては、まず医者が身体の状態を調べ、精神状態なども一緒に記録しています。そして、女性たちがAFESIPのシェルターを出た後、そこで学んだ職業技術のグレードアップをどうやってしていったかも記録していきます。具体的には、女性たちを必要としてくれる市場にはどのようなものがあるか、その後の職業などです。また、家族が再び彼女たちを売ったりしないかなども記録します。
女性たちを家族の元に戻した後に、後からAFESIPが非難されないためにAFESIPの活動を理解してもらい、村長や福祉省職員にサインをもらっています。

 この記録によってどんな家族構成が被害に遭いやすいかなどを分析することが出来ます。現在のデータに載っている女性は3000人ほど(1996年からのデータなので、年間100人くらいか)です。
 しかし、今現在、全部を分析することは出来ていません。どの地域で、女性が被害を受ける確率が高いかなども不明のままです。これが分析できればもっと効率よく被害を受けている女性を助けることが出来ると思いますので、一刻もはやく分析が進むことを願います。

 セックスワーカーとして働かされていた女性の中には、カラオケやビアガールなど、間接的な性労働に従事させられていた人もいます。ビアガールは、店が終わった後に売春を強制されます。世間でもそういった仕事であるという目で見られているので、普通のクリニックにはいけないという現実があります。 こういった差別をなくす活動はしていないのかどうか少し気になりました。市民に呼びかけて、ビアガール買春反対運動をしたり、警察と協力して取り締まったり、偏見をなくしていく努力をすればもっと状況はかわるのではないかと思います。


AFESIPでは性産業で働く女性が病気になったとき、無料でトゥクトゥクでの送迎を行っており、AFESIPの施設の中には、ITルームやクリニックなど様々な部屋があります。クリニックには婦人科の医者と看護士がおり、3~7日間の滞在が可能です。クリニックの費用は必要な時は50%をAFESIPが負担しています。
お金を持たない女性たちにとって、50%の負担でも大きくてたいへんなのだろうな、と思いました。
また、妊娠した女性はAFESIPのクリニックではなく、病院で出産していますが、もともとAFESIPにいた女性はAFESIP内で出産しています。

 裁判などで法的な保護を得るために、加害者を調査するのも活動の一つです。例えば、女性たちが誰に売られたのか(家族か友人かなど)などです。摘発された後に、どんなケアをしたのかも全て記録します。しかし、現在、カンボジアの法が変わり、人身売買の定義が変更され、現場では混乱がみられます。人身売買の定義が性産業に売られることだけでなく、その他の目的で売られる場合にも広がったからです。また、未成年の定義も混乱しています。カンボジアの法律では15歳以下が人身売買から保護される年齢となっていますが、子どもの権利条約では18歳未満が子どもの定義となっています。この年齢差から生まれるグレーゾーンの扱いが問題となっており、それが汚職にも繋がっていたりします。現在は、国内法が条約よりも重要な位置にあるので、それを条約に沿った国内法に変えていくことが必要です。そのためのロビー活動もAFESIPは行っています。
規模は違えど、日本でも権利条約と国内法の差異はあると思いますので、決して他人ごとではないと思います。

 また、司法関係者が女性の精神状態について正しい理解をしてくれないことも多いので、それも今後なんとか理解を広めなければなりません。現在は、たくさんの男性の前で自分の被害について話さなければならなかったり、加害者の見ている前で話さなければならなかったりします。

 人身売買や性的搾取の加害者の中には日本人もたくさんいるので、日本大使館にそのことを訴えたりもしています。また、タイのAFESIPにかけあって、タイ人のブローカーを15年の刑罰に処することが出来たケースもあります。他に、ベトナム人や中国人や台湾人の加害者がいます。例えば、台湾人が女性たちと偽装結婚し、彼女たちを連れ帰って、売り払ってしまったりすることもあります。その被害者数は5000人ほどだそうです。また、昨年はマレーシアから3人の女性を救出しました。これらの犯罪は組織化されています。

 マレーシアにもたくさんの被害者がいますが、マレーシアは宗教的にも法的にも厳しい場所なので、パスポートを持っていないのが見つかると、売られてきた被害者である女性たちをもが処罰されてしまったりすることもあります。
 このように、カンボジアの女性の被害は日本人とも無関係でないことがわかります。日本では、未だに買春ツアーなどというものがあるそうですが、それらの雑誌の取り締まりを強化し、買春男性にこの被害の状況を知ってほしいと思いました。

【編集部より】
アフェシップの活動を通して被害少女・女性をもっと支援できるように会員になってください。
http://www.c-rights.org/join/kaiin.html



『逞しく生きる少女たち』 スタディツアー報告その6

2008年06月07日 00時23分50秒 | 人身売買・性的虐待 被害者支援
こんばんは。甲斐田です。あさって、帰国し、児童労働反対世界デーのシンポジウムにパネリストして参加します。http://stopchildlabour.jp/modules/articles/mainevent.html
その準備で、今日、カンボジアで最悪の形態の児童労働に従事している子どもたちの写真をスキャンしていたのですが、レンガ工場で働いているときに機械で腕をもぎ取られてしまった男の子の写真が2枚ありました。一人は顔が特定できないように写真が加工されているのですが、背格好が似ていて同じように痛ましいケガをしているので、一瞬同じ男の子かと思いました。けれども、一人は右腕をもう一人は左腕をもぎとられていたので、別の男の子だとわかりました。こんなひどいケガをする可能性がある労働を10歳くらいの子どもにさせるなんて、一日も早くやめてほしい、と強く願いますが、最近のカンボジアの建設ブームでレンガ工場で働く子どもたちはむしろ増えているそうです。

 今回は、過酷な児童労働をさせられた経験をもつ少女たちが保護されているグッデイセンターについての報告です。(強調は編集部)

写真は報告してくださった池谷裕次さんと村の子どもです。

『逞しく生きる少女たち』                  池谷裕次(大学生)


「チョムリアップスオ!」「ナイストゥミーチュー!」少女たちはバスから降りた私たちを、クメール語や英語で迎えてくれた。顔には、これから一晩を共に過ごす私たちへの、ワクワクドキドキな緊張感や期待感、そして不安感もちょっぴり映っているようだった。

 少女たちはみな優しくて、とても丁寧に私たちをもてなしてくれた。作ってくれた夕食もとてもおいしく、センター内にあるマンゴーをもいで剥いてくれたり、あちこちを案内してくれたりした。敷地内の宿舎とは反対側に、大きなため池があり、その前でグッディセンターの所長さんがお話をしてくださった。

 ここグッディセンターは、6歳から23、4歳の少女がいて、100人まで生活できるそうだ。HCCでは、大きく2つの活動を行っている。性的搾取の被害に遭った、または遭う恐れのある少女の保護が一つ。他の人権擁護団体と協力、連携して少女たちは保護され、望むなら、クロマー織りや美容の技術、ドレス作りなどの職業訓練も受けられる。
 
 そしてもう一つが、少女への性的な搾取の防止の広報活動だ。大人たちへの影響力の大きい、尊敬される存在である村長や校長、そして僧侶たちにトレーニングを行い、トレーニングを受けたものたちが地域ベースの人身売買防止ネットワーク(CBPN)を組織し、広報活動を行う。また、基礎保健教育や識字教育も保護活動の一環だ。

 陽はどんどん暗くなり、所長さんの顔はもう分からなかった。宿舎では、少女たちの楽しそうな笑い声が聞こえている。

 少女たちが職業訓練で練習に織ったクロマーを纏い、ツアー中3人だけの男はシャワー代わりに水浴びをした。カンボジアは1年を通して温かいため、寒くはなかった。

 夜も更けてきたが、遠い国からの14人の客を前に、少女たちの興奮は覚めやらない。私の下手なギターで、一緒に「幸せなら手をたたこう」を歌い、ダンスを教えるツアー参加者の女性もいた。お礼に少女たちはアプサラダンスを踊ってくれた。歌って、踊って、騒いで、本当に楽しい夜で、もう一度水浴びをしなくてはならなかった。

 朝、敷地外で寝ていた私たち男3人が寝ぼけまなこでセンターに入ると、宿舎で寝たツアーの参加者の女性たちはすでに起きて少女たちとゲームをしていた。朝ごはんを食べ、日本の写真を見せたり、サッカーをしたり、この後の運動会のプログラムまでのんびり過ごす。高校生ぐらいの一人の少女と仲良くなった。名前をチャリアというその子は、私に「I want to play the guitar !」と言ってくれた。私の下手くそなギターでも、教えて欲しいと言ってくれることが嬉しかった。ただ、残念なことにそのオシャレな少女は、少々爪が長すぎた。

 運動会、最初の競技はつぼ割り。スイカ割りのように、目隠しで、吊るされたつぼを周りの声を手がかりに叩き割る。ツアー参加者と少女たちと交互に割り、うまく割れなくても、それも逆に場を盛り上げた。私も目隠しをされた。棒を振り上げ、少しふざけて「うおぉぉぉぉ!」と走り出すとみな「キャー!」といって楽しそうに逃げ出す。周りの声を頼りにつぼを見つけた私は、やったこともない剣道の動きを真似、「面!」の声と共につぼの破壊に成功し、武士のように一礼をした。その後もリンゴ食い競争や卵スプーンリレーと競技は続き、笑顔の絶えない時間になった。

 そして最後に交流会が行われた。「2人姉妹で妹がいます」「私は今、国際協力について学んでいます。」「私は、あなたたちの日本のお母さんになりたいと思っています。」「学校の先生を目指しています。」それぞれのツアー参加者の自己紹介を少女たちは一生懸命に聞いてくれていた。少女たちは夢を教えてくれた。NGO職員、お医者さん、ガイドさん、みんな色々な夢を語ってくれた。シーライツの後藤さんに後から聞いた話では、「以前に聞いたことと違って、みんな他の人が言う夢に影響を受けているみたい。」とのことだが、夢を沢山持てることは良いことだとも思う。「将来は歌手になりたい」そう語ったのはチャリアだった。私にギターを習いたいと言ったことの理由と、その真剣さが伝わった。

 そしてツアー参加者は「森のくまさん」と、SMAPの「世界に一つだけの花」を歌い、少女たちはアプサラダンスを披露してくれた。チャリアはクメール語の歌を歌ってくれて、それはとても澄んだ声で美しいものだった。
自分の写真をくれる少女や、「Don’t forget me.」と別れを惜しみ、涙する少女たちに引き止められて、ツアー参加者たちの中にも、涙を浮かべる人がいた。全員がいつまでもこうしているわけにはいかず、振り切ってバスに何人かのツアー参加者が乗り込むが、それでもバスはなかなか発車できなかった。

 少女たちと一緒に寝たツアー参加者の一人から「夜寝るときに急に泣き出す子がいたのが、ショックだった」と後で聞いた。昼間、ほとんどの子が見せてくれる無邪気な笑顔の裏に、夜に少女たちを襲う寂しさや、悲しみが沢山ある。笑顔を見せてくれなかった少女も、私たちには何かを求めるような視線を感じた。ここに生きている少女たちは、多かれ少なかれ、みんなそうした影を持っている。それでも、少女たちと過ごした時間からは、日々を活き活き過ごす力強さを感じた。

 水浴びのときに使ったクロマーは、少し不恰好かもしれないが、一織り一織り丁寧に重ねて作られていた。大変な環境でも力強く生きている少女たちの姿に重なるような気がした。このHCCグッディセンターの訪問は、そんな少女たちの過去や、それを乗り越えて生きていこうとする逞しさ、そしてその少女たちを支え、守る人々のつながりの強さと温かさを学ぶものとなった。