こんにちは。中川香須美です。今回も前回に引き続き、学校を拠点としたネットワークによって、人身売買の被害から自分たちを守る子どもたちの取り組みについて紹介します。2007年12月5日、スバイリエン州のチュレ中学校でチュレ中学校とトロペアントロー小学校のネットワーク立ち上げのためのワークショップに、国際子ども権利センター代表甲斐田万智子さん、プノンペン事務所の近藤千晶さんと一緒に参加してきましたので、以下内容を報告します。
人身売買防止ネットワークを学校に設立するにあたって、子どもたちはHCC(カンボジアのNGO)のトレーナーから、子どもの権利や人身売買について学びます。子どもたち自身が正確な知識を得た後に、子どもたちがクラスメートや家族・地域の人たちに学んだことを普及させていくことがネットワークの活動だからです。学習の内容は、子どもの権利条約、重要な子どもの権利の概念、児童労働、および人身売買についてです。ほとんどの子どもが子どもの権利条約について学んだことがなく、なぜ子どもの権利条約が必要なのか、なぜ子どもに権利を持たせることが重要なのかについて話し合うところから学習は始まります。子どもたちは、「大人が子どもに対して悪いことをしないように」「学ぶ機会を得るために」「社会の活動に参加するために」、あるいは「子どもはカンボジアの発展に重要な将来大人になる資源だから」などなど、色々な意見を出し合います。カンボジアの学校では子どもが積極的に意見を言うことが奨励されているので、全員ではないとしても、かなり多くの子どもたちが挙手して自分の意見を述べているのは頼もしいです。発言内容がまとまらないうちから挙手して、先生に指名されると緊張もあってか発言できない子どももいて、子どもたちの積極的に学ぼうとする姿勢がとても印象的です。
子どもの権利条約は、生きる権利、保護される権利、発達の権利、参加する権利の4つの分野に分かれています。子どもたちは、権利とは何か、という先生の質問から学習を開始します。「正しいこと」、「全ての人がもっているもの」「えこひいきしないこと」「尊厳」「法律に書いてある」など、色々な意見がでます。今回は、一人一人が条文の絵が描かれているA4サイズのカードを使って、それぞれの絵が示す権利が上記の4つの分野のどの権利に属するのかをグループで話し合いました。トレーナーからは、権利を知ることが大切であると同時に、他人の権利を侵害しないように自分の権利を行使しなければならないという点も学びます。
児童労働については、村の中で子どもたちがどんな仕事をしているかを検討します。圧倒的に多いのは牛の世話をしている子ども、その次がごはんの準備など家事手伝いです。まきわりや稲狩りの手伝いなど、カンボジアならではの労働もあります。また、ベトナムに送られて物乞いや宝くじ売りをさせられている子どもも数多くいます。学校に通える子どもが豊かだというわけでは決してありません。でも、学校に通えない貧しい家庭の子どもたちは、学校に通っている子どもたちよりもつらい仕事に従事させられていることが多い点について改めて考えます。参加している子どもたちによると、学校教育では児童労働が禁止されていることなどを学んだことがないそうです。身の回りで児童労働に従事させられている子どもを見ているものの、それが搾取である、権利侵害であるという認識はもったことがないということです。大人の手伝いをしていると思っていても、それが子どもの学業の妨げになるような仕事であれば、児童労働であり子どもの権利侵害につながることを、子どもたちは自分たちの生活に照らし合わせて考えます。
人身売買については、どういった手口で子どもたちがだまされるかを話し合いました。「お金をあげると約束する」「恋人になるという」「遊びに行こうと誘う」など、子どもたちの間でも「悪い大人が使う手段」についてはある程度の認識があることが伺えました。印象的だったのは、「飴などお菓子を与える」という子どもの発言に対して、学校の先生が「この地域では、飴をくれるといったら、その大人に子どもは簡単についていってしまう」と発言された点です。飴を食べることなどほとんどない子どもたちは、その程度の簡単な手口でもだまされる可能性があるのです。
今回参加した人身売買防止ネットワークは、12月5日から活動を開始しました。「子どもは親や保護者の指示に従って行動するべき」だと考えられているカンボジア社会で、子どもたちが主体となって自分たちの権利を主張していく機会を提供する貴重な活動がSBPNです。国際子ども権利センターの支援でエンパワーされていく子どもたちが、今後どうやって学んだことを友だちや家族に普及していくのか、みなさんも一緒に見守っていきませんか。
人身売買防止ネットワークの活動を成功させるため、ぜひ国際子ども権利センターの会員になってください。
http://jicrc/pc/member/index.html
写真は、ワークショップで子どもの権利について学ぶSBPNのメンバーの少年
©甲斐田万智子
人身売買防止ネットワークを学校に設立するにあたって、子どもたちはHCC(カンボジアのNGO)のトレーナーから、子どもの権利や人身売買について学びます。子どもたち自身が正確な知識を得た後に、子どもたちがクラスメートや家族・地域の人たちに学んだことを普及させていくことがネットワークの活動だからです。学習の内容は、子どもの権利条約、重要な子どもの権利の概念、児童労働、および人身売買についてです。ほとんどの子どもが子どもの権利条約について学んだことがなく、なぜ子どもの権利条約が必要なのか、なぜ子どもに権利を持たせることが重要なのかについて話し合うところから学習は始まります。子どもたちは、「大人が子どもに対して悪いことをしないように」「学ぶ機会を得るために」「社会の活動に参加するために」、あるいは「子どもはカンボジアの発展に重要な将来大人になる資源だから」などなど、色々な意見を出し合います。カンボジアの学校では子どもが積極的に意見を言うことが奨励されているので、全員ではないとしても、かなり多くの子どもたちが挙手して自分の意見を述べているのは頼もしいです。発言内容がまとまらないうちから挙手して、先生に指名されると緊張もあってか発言できない子どももいて、子どもたちの積極的に学ぼうとする姿勢がとても印象的です。
子どもの権利条約は、生きる権利、保護される権利、発達の権利、参加する権利の4つの分野に分かれています。子どもたちは、権利とは何か、という先生の質問から学習を開始します。「正しいこと」、「全ての人がもっているもの」「えこひいきしないこと」「尊厳」「法律に書いてある」など、色々な意見がでます。今回は、一人一人が条文の絵が描かれているA4サイズのカードを使って、それぞれの絵が示す権利が上記の4つの分野のどの権利に属するのかをグループで話し合いました。トレーナーからは、権利を知ることが大切であると同時に、他人の権利を侵害しないように自分の権利を行使しなければならないという点も学びます。
児童労働については、村の中で子どもたちがどんな仕事をしているかを検討します。圧倒的に多いのは牛の世話をしている子ども、その次がごはんの準備など家事手伝いです。まきわりや稲狩りの手伝いなど、カンボジアならではの労働もあります。また、ベトナムに送られて物乞いや宝くじ売りをさせられている子どもも数多くいます。学校に通える子どもが豊かだというわけでは決してありません。でも、学校に通えない貧しい家庭の子どもたちは、学校に通っている子どもたちよりもつらい仕事に従事させられていることが多い点について改めて考えます。参加している子どもたちによると、学校教育では児童労働が禁止されていることなどを学んだことがないそうです。身の回りで児童労働に従事させられている子どもを見ているものの、それが搾取である、権利侵害であるという認識はもったことがないということです。大人の手伝いをしていると思っていても、それが子どもの学業の妨げになるような仕事であれば、児童労働であり子どもの権利侵害につながることを、子どもたちは自分たちの生活に照らし合わせて考えます。
人身売買については、どういった手口で子どもたちがだまされるかを話し合いました。「お金をあげると約束する」「恋人になるという」「遊びに行こうと誘う」など、子どもたちの間でも「悪い大人が使う手段」についてはある程度の認識があることが伺えました。印象的だったのは、「飴などお菓子を与える」という子どもの発言に対して、学校の先生が「この地域では、飴をくれるといったら、その大人に子どもは簡単についていってしまう」と発言された点です。飴を食べることなどほとんどない子どもたちは、その程度の簡単な手口でもだまされる可能性があるのです。
今回参加した人身売買防止ネットワークは、12月5日から活動を開始しました。「子どもは親や保護者の指示に従って行動するべき」だと考えられているカンボジア社会で、子どもたちが主体となって自分たちの権利を主張していく機会を提供する貴重な活動がSBPNです。国際子ども権利センターの支援でエンパワーされていく子どもたちが、今後どうやって学んだことを友だちや家族に普及していくのか、みなさんも一緒に見守っていきませんか。
人身売買防止ネットワークの活動を成功させるため、ぜひ国際子ども権利センターの会員になってください。
http://jicrc/pc/member/index.html
写真は、ワークショップで子どもの権利について学ぶSBPNのメンバーの少年
©甲斐田万智子