カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

スタディーツアー報告⑪スラム学校訪問

2008年11月10日 16時34分59秒 | Weblog
こんにちは。今日はHCCが支援をしているスラムでの学校訪問について、スタディーツアー報告その11として、宇野が報告をさせて頂きます。

まずは、この学校で先生として勤務されている、チャンター・バーさん(女性)のお話です。チャンター・バーさんは、1966年スバイリエン州K村に生まれました。1983年高校を卒業し、1985年に結婚、4人の子どもに恵まれました。夫は所有する土地で農業によって自立した仕事をしていました。しかし、よりよい収入が得られるようにと、彼女の伯母から勧められ、カンボジアとタイ国境付近のポイペトで養豚業を始めましたが、それが不運にも失敗に終わり 、彼女たちは土地を売らなければなりませんでした。そして、1993年、彼女の家族は、プノンペンにある‘建設村(Building Village)’と呼ばれる地域の小さな借家に移り住みました。このような‘建設村’と呼ばれる地域には、古くて小さな家々が密集しており政府が公に人々が住むことを認めているもので、実際多くの家族が住んでいます。
プノンペンでは、チャンター・バーさんは公園の庭師として、夫は建築業労働者として働いていました。しかし2000年、建設村で放火事件がおき、プノンペン市役所によって、452家族がプノンペンA村に強制移住をさせられました。彼女の家族もその家族の一つでした。そこは、政府が彼らに土地使用権を与えた場所で、新たなコミュニティが生まれました。しかし、彼女の夫は、彼の低収入ではプノンペンまでの通勤にかかる高いガソリン代や食料をまかなう事が出来ず、働き続けることが出来ませんでした。チャンター・バーさんは、2000年から2002年の間、新しく移り住んだコミュニティで自ら進んで無償でノンフォーマル教室(カンボジア事務所注:ノンフォーマル教育とは、NGOが公立の学校に通えない貧しい子どもやストリートチルドレンなどに対して行う教育)の先生となりました。というのも、新しく移り住んだ地区から学校は遠く、学校に行かない子供たちが沢山いたからです。2002年からは、HCCによってチャンター・バーさんの給料は支払われ、彼女の授業のための教材も支給されるようになりました。高い学費が支払えないために子どもを公立学校へ通わせることに反対をする親が多いという事実に直面し、HCCのサポートを受けながら、チャンター・バーさんは「出来るだけ多くの子どもを公立学校に通わせられるように、知人などに学費交渉をしている。」と言います。ツアー参加者からの「学校で教えていて困ることは?」という質問に、チャンター・バーさんは
「以前は床が(地面が)赤土だったので、雨季は大変だった。今はコンクリートで状況は改善されているけれど、壁がないので、雨期の時は未だ苦労が多い。」
「給料($30/1か月)が少ない、また、カンボジア国内の物価が高騰し、生活が苦しい」
と答えていました。

チャンター・バーさんの教える学校には、70名の生徒が登校してきます。私達が訪問した日には、8歳1名、9歳2名、10歳7名、11歳6名、12歳4名、13歳11名、14歳1名という年齢層の子どもたちが同じ教室で、机を並べて、算数を勉強していました。
その子どもたちにツアー一行はいくつか質問をしてみました。
現在の仕事は?→あひるの卵・魚・お菓子・アイスクリーム売りなど
将来の夢は?→医者・看護師・縫製工場・学校の先生・技術者・建築家・テーラー(仕立て屋)・バイクタクシー・パイロット
トイレのある家庭は?→9家庭
(シーライツはこの学校におけるトイレと井戸の設置を支援しました。)
この学校に来て勉強することを親に反対された人は?という質問に、挙手する子どもはいませんでした。

子どもたちが一生懸命に算数に取り組んでいる姿をみて、私が子どものころ算数は本当に嫌いでいかに算数ドリルから逃げるか、という事しか考えていなかったことが思い出されました。幼い子どもたちが将来の夢を語っている姿をみて、「病気の人を治したいから、医者、看護師になりたい」「自分のように、多くの子どもが学校に行けるように、自分も学校の先生になりたい」など、如何に彼らが現実問題に直面しているかを痛感したと同時に、子どもたちが語ってくれた将来の夢が一つでも多く叶うように願わずにはいられない瞬間でもありました。今の私に出来る事は、多くの皆様にカンボジアの状況をお伝えする事だと思いました。

写真は、学校で授業をしているチャンター・バー先生と熱心に耳を傾ける子どもたちの様子です。

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