11月26日、東京都新宿区にあります、未来食カフェレストランTUBUTUBUの2階にあります、つぶつぶセミナーホールにて、日本ベジタリアン学会大会・懇親会が行われ、盛況でした。
午前中から午後にかけて、学会認定アドヴァイザーセミナーが開講され、9名の方に受講頂き、認定資格が授与されました。
セミナーは、
「ベジタリアンの理念と歴史」
垣本 充(日本ベジタリアン学会理事長、IVU元学術理事、歯学博士)
「菜食と栄養」
仲本桂子(日本ベジタリアン学会理事、東京衛生病院健康教育科長、栄養学博士)
「菜食と健康」
垣本 充(日本ベジタリアン学会理事長、IVU元学術理事、歯学博士)
「菜食と環境」
中川雅博(日本ベジタリアン学会理事、総監技術コンサルティング、農学博士)
以上4つのテーマで開講され、皆様熱心に聞いておられました。
15時からは、学会大会一般講演として、今年は6項目の発表があり、30名の方にご参加いただき、質問や議論も飛び交いました。
[一般講演1]
松原広幸(日本ベジタリアン学会評議員)
「信仰と食文化・信仰的ベジタリアンリズムに関する考察」
近年、ハラルなど、信仰に基づく食文化についての話題が多くでるようになっているが、信仰と食文化については、深くかかわる部分も多いが、現代日本においてはあまり認識されていないということで、ヒンズーやジャイナ教などの信仰の影響から、ご自身がベジタリアンとなるに至った経過と学びの中から、信仰と食文化の関係とベジタリアンである理由についての考察のお話しがありました。
[一般講演2]
宮城智央(琉球大学)
「沖縄戦ハクソーリッジのデズモンド・ドスとセブンスデー・アドベンチスト教会に関するベジタリアニズム」
第二次世界大戦の沖縄における激戦にて、信仰による良心的兵役拒否者として、敵の殺害や銃などの武器の携帯を拒否しながらも75名である大勢の人命を救った英雄的兵士を描いた映画「ハクソーリッジ」が近年公開され世界的に話題となった事に伴い、沖縄でのゆかりのある写真や動画などの資料を通して、博愛とベジタリアニズムについての関連性についての考えや思いを発表が行われました。
[一般講演3]
佐藤 陽子1・太田 尚孝1(1東京理科大学大学院・科学教育研究科)
「理科教育に活用可能な小麦アレルギー対応型変色麺の開発
-マイクロスケール法による酢橘うどん・酢橘ラーメンの作成実験-
紫キャベツを用いたカメレオン焼きそば作りで扱う原理の学習が可能な「新しい小麦アレルギー対応型変色麺」を開発したことにより、その方法の説明と、小麦を用いない麺類の調理に伴うpH変化の幅を可視化する事や、教材を用いた教育実践を行う事が今後の課題であるというお話がありました。
[一般講演4]
橋本晃一¹・²高井明徳³、垣本 充¹・⁴(NPO法人日本ベジタリアン協会¹、大阪市立大学大学院²、大阪信愛女学院短期大学³、三育学院大学⁴)
「動物性食品摂取状況に基づくベジタリアン調査
-近畿・関東地区の大学院・大学・短期大学生による調査-」
2017年8月から9月にかけて、京阪神・首都圏の大学院・大学・短期大学生
126名(男子50名、女子76名、19~69歳)を対象に、我が国におけるベジタリアン人口の調査を行った結果、
ビーガンタイプに関しては、
男子4.0%、女子3.9%、男女平均4.0%
広義のベジタリアンと言われるフレキシタリアンは、
男子12.0%、女子27.6%、男女平均21.4.%であった事の報告が行われました。
[一般講演5]
尾崎七海、長田百合、後藤花音、望月弘彦、嵐雅子(相模女子大学)
「ベジタリアンダイエットが若年性女性に及ぼす安全性の検証」
近年、我国においてベジタリアンダイエット(VD)は、「痩せる食事」、「貧血傾向が見られる食事」と誤認識されているが、VDは米国栄養士会では慢性疾患に効果的であり、すべてのライフステージにおいて有用であると認識されており、多くの報告がなされているものの本邦では少ないということで、4か月間VD(ラクトオボベジタリアン食)を摂取し、介入前後の比較を行いVDの安全性の検証を明らかにすることを目的とした研究・発表が行われました。
[一般講演6]
中西 純(国際武道大学)
「1日2食でラクトベジタリアンの子どもの発育」
発育に食事・栄養がどのように影響するかという問題を「発育期に子ども達が肉類を摂取しなかった場合」に観点を絞って報告されました。
世界には全く菜食をしない人々がいれば、肉を食べない人々もいる一方で、多様な食材を日常的に利用する民族もあり、これらの典型的な食習慣で生育する子ども達の発育状況を調査すれば発育学の外延を飛躍的に拡大させることができるといった視点からお話しされました。
16時からは、ロマリンダクリニック院長・医学博士・米国公衆衛生学博士(Dr.P.H.)の 富永國比古先生による「がん栄養療法ロカボダイエット vs.完全菜食主義(Vegan)ダイエット治療としてのベジタリアンダイエット―癌、婦人科疾患を中心に
」の題目で、医学的かつ専門的な、ロカボダイエットや菜食のお話しをお聞きすることができました。
富永先生は、1975年、岩手医科大学医学部卒業され、東京衛生病院産婦人科医長を経て、米国ロマリンダ大学大学院博士課程を修了されました。
現在、婦人科・心療内科 岩手医科大学医学部非常勤講師でもあります。
ロカボダイエットとは、極・低炭水化物食で肉食を勧めている食事療法のことを言い、この「ロカボダイエット」が、癌の栄養療法として最も優れている、という説が流布していますが、富永先生は、このロカボダイエットについて警鐘をならしておられます。
そして、デイーン・オールニッシ教授の研究結果などを紹介し、がん予防・治療において、動物タンパク質を排除、低脂肪食とし、野菜、果物、豆、全粒穀物、大豆などの「完全菜食主義」の実践が有益である事などをお話しされました。
18時からは、同会場1階にあります、未来食カフェレストランTUBTUBUで、日本式ヴィーガン食と言われる、おいしい雑穀菜食料理をいただきながら、懇親会を行い、皆様おいしいと、笑顔で話しながら交流を楽しんでおられました。
年1回の学会大会・講演会ということもあり、1日を通して、ベジタリアニズムへの理解や知識が深まると共に、普段あまり交流することが無い遠方の方や、一般の方、学生の方などとも交流する事ができ、とても楽しく、また有意義でした。
このような活動・取り組みによって、日本でも徐々にベジタリアニズムが広がりを見せており、そういった事が、本協会を含め、啓発活動を行っている人たちの励みにもなり、良い循環を生んでいるのではないかと思いました。
このような会を主催されている、日本ベジタリアン学会様や、講演・発表を行っていただきました先生方、学生の皆様、ならびにセミナー・講演会・懇親会にご参加いただきました皆様に心より感謝申し上げます。
(報告:橋本晃一)
NPO法人日本ベジタリアン協会
ホームページ:http://www.jpvs.org/