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なぜならその論理が通るなら、「前世が見える」と自称する人間がホラの吹きほうだいになってしまうからだ。
メシア──世界唯一のスケプティックハンター。インチキ霊能力者の嘘を暴く達人。
クラウディア──オカルト好きのハーフの美女。
クラウディア 江原啓之さんは『前世 人生を変える』という本の中で次のようなことを言っているわ。
(前略)私の今生も、すぐ前の前世も、江戸時代に茶坊主だった人の経験が色濃く反映されています。
茶坊主というのは、頭を剃っていたために坊主といわれていただけで、出家しているわけではありません。名前の通り茶の湯や、殿様に来客があれば会食の支度をしたり、接待するなど、雑務全般を担当するのが務めですが、主な仕事は殿様の相談相手になること。つまり、現代でいうところのカウンセラーだったのです。
茶坊主という立場には、特別な官位や名誉があるわけではありませんが、ある程度の敬意をもって意見が尊重されていました。そうした点なども、今生の私の立場と重なっている部分があり、少なからず合点がいくのです。(中略)
私に視える前世というのは、パッと映像が浮かぶだけ。見ようとして能動的に見るのではなく、スクリーンに映し出されるかのように受動的に視えるものです。(中略)
何度でも繰り返します。前世がどこの誰であったかを知ることには意味がありません。大切なのは、前世から引き継いだ資質やカルマを認識すること。それは、前世からの思い癖ともいえます。それから自分が現世に生まれてきた理由を感じ取ることができれば、現世での試練にもまた深い意味があることを理解できるでしょう。
メシア まず「パッと映像が浮かぶだけ」という発言なんだけど、そんなもの誰でも経験があるだろう。
洋風の顔立ちの人がいたら、なんとなく洋風の街並みなどを連想するだろうし、和風の顔立ちの人がいたら、なんとなく和風の街並みなどを連想するだろう。
ただそれだけのことさ。
クラウディア まあ、そうね。
メシア さて、聞き捨てならないのが、「前世がどこの誰であったかを知ることには意味がありません」という言葉だ。
これは前世の人物を特定できる能力を持っていないがための《逃げ》《開き直り》と言わざるをえない。
クラウディア どういうこと?
メシア 前世を語る上で、前世がどこの誰であったかを特定する作業はぜったいに避けて通れないものだ。
なぜなら人物が特定できなければ、前世が見えると自称する人間たちがホラの吹きほうだいになってしまうからだ。
クラウディア なるほど。
メシア 生まれ変わり研究の総本山、米バージニア大学知覚研究所のデータベースには、日本の生まれ変わり研究の最高権威である大門正幸教授が2021年頃調べた時点で、2030もの例がおさめられていた。
そのうち、前世の人物が特定できた既決例が1468例、特定できなかった未決例が547例だったそうだ。
ちなみに残りの15例は、《該当人物がいるように見えるが確信が持てない例》に分類されている。
クラウディア すごく細かく分類されているのね!
メシア また、知覚研究所を創設したイアン・スティーブンソン教授が確立した生まれ変わり研究は、次のような流れでおこなわれる。
面接調査→記録による確認→追跡調査→データ入力
全部説明すると非常に長くなってしまうので、最初の面接調査だけを説明する。
まず、1人でも多くの関係者に面接する。
10人に面接して全員が「この子は3歳のとき、『僕は飛行機の事故で死んだんだ』と言っていた」と証言すれば、本当にそのような発言があったと考えられるわけだ。
次に中心人物の発言や振る舞いを、直接見聞きした人のみを対象にすること。
話に尾ひれがつかないようにするため。
次に個別に面接すること。
他人の発言に影響を受けないようにするため。
ちなみに情報提供者に金品は渡さない。
報酬目当てで偽りの証言をする人間が出てこないようにするためだ。
このように生まれ変わり研究とは膨大な時間、膨大な労力を費やして、果てしなく綿密におこなわれるものなんだ。
しかも私が今書いたのは、生まれ変わり研究の流れの中のほんの一部にすぎない上、該当人物がいるように見えるが確信が持てない場合は、既決例には含まないという厳格ぶりなのだ。
これが本当の生まれ変わり研究であり、スティーブンソン教授をはじめとする先駆者たちの血のにじむ努力のおかげで、7割ほどの前世の人物が特定されているんだ。
クラウディア すごすぎるわ!言葉が出ない……。
メシア これで江原さんの「パッと映像が浮かぶ」だの、「前世の人物が誰だったかはどうでもいい」だのといった発言が、デタラメとハッタリの極致であることがわかってもらえたと思う。
クラウディア メシアさんが敵でなくてよかった……。
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