空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

花組「うたかたの恋」「ENCHANTEMENT」

2023-01-05 15:14:00 | 観劇(タカラヅカ)
あけましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願いします。

あ、去年の観劇3本分感想書けてない!
別に不満があった訳じゃないんです、むしろ好きだったんですが、すぐ(帰りの電車内で)書かないと永久に書かないやつですね。
という訳で帰りの車内で書いてます。

【うたかたの恋】
全ツではすっかり定番の演目ですが、大劇場でやるのは何と30年ぶりとのこと!!
私は全ツ版を見る機会がなかなか無く、最初で最後に見たのが2006年の花組さん。
…えっ、17年前!?
昨日のことのように思い出せるのに!(でも細部は全然覚えていない)

ノーブルで神の歌声・オサ様ルドルフと、
聖少女かつ聖母の彩音マリー。
彩音ちゃんはトップ就任したてで、技術面ではとっても大変なことになっていましたが、その未熟さ、拙さが幼いマリーにハマっていたのと、彼女の持ち味「母性・包容力・生命力!」が、孤独なルドルフを癒し、彼の支えになっていくのに説得力がありすぎて、とても納得できるカップリングでした。
…が、生命力に満ち溢れて強い、そして幼いマリーであったからこそ、その彼女を死出の旅の道連れにする、いい大人・ルドルフの身勝手さもまた際立ち、「君が死にたくなったのは分かる、死ぬ時にマリーにそばにいてほしかったのも分かる、それでも死ぬ時は一人で行け!」と憤ってしまったのもまた事実。
後は、昭和の名作ゆえのどうしようもない「古さ」と、『エリザベート』を見てしまったが故にルドルフの死の動機を恋愛に矮小化されてしまったようなモヤモヤも拭えず、今回の演目が発表された時は正直複雑でした。
「オープニングは大階段で見たいけど、全体的に古いし、役も少ないからな〜」と。

が、めっちゃ美麗なポスターが出たのと、初日が開いて劇評が出て、新演出が好評なので期待が急上昇。
2023年もコロナ禍が続いていますが、とにかく無事に見たい!と祈って観劇日を迎えたのです。

…小柳先生の新演出最高!
「何で大劇場でやるのかって? この舞台機構を使いたいからだよ!」と納得させられる、大階段と盆を使い倒すスペクタクル感!
あれやこれやの、見てる方が気恥ずかしくなる古くさいシーンをばっさりカット!
狼ごっこは、今回はバンパネラごっこかな〜とか勝手に期待してたんですが(おさあやがオペラ座の怪人ごっこだったから)、これも切って正解。
「役がない」問題も、ひとこ@フェルディナント大公をフィーチャーし、彼がゾフィーと結ばれることを「ルドルフの遺志が成就した」形にすることで一抹の救いを作る(でもこの夫婦も最期は悲劇なんですけどね…)、そしてそこにフランツとシシィの話も被せる、あたりが上手い。
一方で、ルドルフを巡る政治的状況は、あっさり描いて(ツェップスが出てくるから『エリザベート』見てたら分かるでしょう)、あくまでも「恋」を強調する。
そう、政治的状況を描き過ぎると、(史実はそうなんだが)いい大人が自分の自殺に世間知らずのお嬢ちゃんを巻き添えにした話にどうしてもなってしまうので、ルドルフとマリーの「うたかたの恋」にするためにはこれぐらいバッサリ行った方が良いよ。

オープニングだけでなく、続く舞踏会の場面とマイティ@ジャン・サルヴァドル大公の語りで、結末を予め示しておくことで、どんなに甘いシーンであっても常に悲劇への緊張感が漂っていて、それが色んなツッコミどころを無力化していたのが良かった。

カレー君@ルドルフの美しさとひたむきさ。
どんなに遊び人を演じていても、彼の根っこには祖国への愛と立場への責任感、夢と理想があるのが見えていたので、その誠実さを信じることができた。
そして、一度マリーを失う展開が入ったことで、「彼女無しでは生きることさえできない」と自覚してしまった、その気づきと覚悟が鮮やかだった。

まどかちゃん@マリー。
前作では、みりおんの遺伝子を感じる理知的で自立した女性を演じていたのでちょっと心配だったんだけど、見事に、「恋愛しか頭にない十代」になっていて凄かった。
持ち味というか演技力で何とかした感じ。
いや、持ち味がいつまでも「少女」なのも強いんだけどさ。
あと、歌が上手い!主題歌、耳福。

だけど彼女が可愛ければ可愛いほど、私は序盤からあおいちゃん@マリーのばあやや、凛花さん@お母さんに感情移入してしまって「大事に育てた娘がなんてこんな死に方をしなければならないのか…」と思わずにいられなかったよ(特にラストが惨い)。

マイティ@ジャン&みさきちゃん@ミリー。
いやもう、君たちが癒しだ。本当に。

ひとこ@フェルディナント&あわちゃん@ソフィー。
こっちは「希望」。そして、あわちゃん、舞羽美海ちゃんに似てる?すごく可愛くてショーでも目についた。

ラスト、カゲソロと2人のダンスがそれはそれは美しく、ボロボロ泣きながら「ああ、宝塚見たわー」という気になりました。
追い詰められての自殺ではなく、恋の成就としての心中。
「恋の手本となりにけり(曽根崎心中)」ですね。
史実がどうであれ、2人の魂は結ばれたのだと「私たちは信じている」…という物語。

柴田先生のセリフの美しさ(前半の会話劇で状況を説明していくのとかすごく上手いし、マリーの最後の「小さな青い花、月の髪飾り…」も好きなセリフ)、小柳先生のツボを押さえた演出(痒いところに手が届く感じ!)、そしてキャストの熱演。
新年からいいもの見ました。

ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-】

ショーも良かった!
野口先生なので、オープニング「ディズニーランドっぽい…」のは相変わらずだったけど、ずっと華やかで楽しくて文句なし!
『デリシュー』でも思ったけど、多幸感に溢れてるんですよね。芝居が悲劇だからちょうどいい感じ。
中詰の中華風衣装がすっごくツボだったので、あの場面だけでも通いたい。
この作品を最後に専科に行っちゃうマイティと、カレー君の同期場面もがっつりあり、別れを惜しむことができました。
黒燕尾もデュエダンも最高。

客席参加場面(扇は持ってた方が楽しい)で、「コロナ前なら絶対客席降りあったのに!」と、なんかもう3年分の怒りが込み上げてしまいました。
カレー君はお披露目からずーーーーーっとコロナ禍に祟られ続けて今に至りますが、
…負けないでくれて、本当にありがとう。

困難な中でも最高のエンタテインメントを届けてくれる宝塚の皆さんにとって、今年が良い年でありますように。


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