日本昔話 にやにや笑う殿様
昔々あるところにおじさんとおばさんが住んでいました。おじさんは庄屋さんとこで小作に、おばさんは川へ洗濯に行きました。おじさんの庄屋さんとこの小作はつらいけど、仕事の後皆と居酒屋へ行くのが楽しみでした。だれが次の春手代に昇格するかの噂話が楽しくて仕方ありませんでした。一方おばさんの洗濯の仕事はつらいけど、洗濯しながら村の女と冗談を言い合うのが楽しくて仕方ありませんでした。
ある日のことです。おばさん達は自分たちも庄屋さんとこで働かせてくれ、手代や番頭に出世してちょっぴりだけどお給金が増えることを楽しみにしたいと言い出しました。おばさん達は殿様に掛け合いおじさんと同じように庄屋さんとこで働けるようにしてもらいました。これでおばさんも居酒屋で噂話ができればよかったんですが、二人は早く帰って洗濯をしないといけません。おじさんは早く帰って慣れない洗濯を、おばさんは慣れない仕事をした後帰って洗濯をしないといけなくなりました。もう村の人と一緒に冗談を喋る余裕はありません。もう仕事の後仲間と噂話するゆとりもありません。だんだん疲労が溜まってきます。
むかしは小作にでて稼いでくれる人と洗濯をしてくれる人は別々になってましたからお互いがお互いを必要としていたのです。少しのことなら辛抱します。しかし今は一人で両方できてしまうのでいったんおじさんが村の美人に、おばさんが隣町の若い男にちょっと色目を使っただけで別れ話が出てしまうことになります。家の中で争いが絶えず、それを見て育った子供は結婚したいと思わなくなりました。子供が生まれなくなりますので国土は荒れていきました。
しかし殿様は別です。何もしないのに勝手に税金が2倍になったのです。殿様は毎日毎日にやにやして暮らしました。その後国土がだんだん荒れていきましたので、とうとう何百年ののちにはもとの山林野原に戻ってうさぎやイノシシが走り回るようになってしまったという話です。
斉家治国平天下は孔子の言葉とされていますが、最近はもっと前から言われていたのではないかと言われだしています。斉家は税金より大事なものというお話でした。