府中市美術館の常設展。
もっぱら企画展目当てに行く私、時間の余裕があるときに寄ると、かつてどこかの展覧会で見て印象に残っている作品が何気に展示されているなど、その充実ぶりに驚かされることもある。
そのコレクションは、江戸時代から現代までの日本美術であると認識しているが、私的には、明治時代の洋画に感心することが多い。
2023年4月の常設展を見る。
以下の作品を特に眺める。
高橋由一
《墨水桜花輝耀の景》
1874年
隅田川を背景に、桜の一枝をクローズアップする。
私的に、桜の絵画と言えばまず思い浮かべる作品の一つ。
以前は神奈川県立近代美術館に寄託されていたようだが、2000年頃、府中市美術館が購入。
青木繁・福田たね
《逝く春》
1906年、126.2×83.3cm
青木繁と福田たねの合作。福田たねとして展覧会に出品した作品に、青木が手を加えたらしい。どこまでが福田の筆で、どこまでが青木の筆かは分からない。
よく知られる作品だと思うが、必ずしも評価の高い作品ではない(お互いの画風が薄められている)ようだ。
本作制作の前年には、二人の間に息子が生まれている。
青木繁
《少女群舞》
1904年、10.2×14.8cm
陽光の中を赤い袴をはいた少女たちが輪をつくるように駆けていきます。左から右へとほとんど水平に風にたなびく赤いリボンと着物と長い黒髪。板に描かれた小さな作品ですが、生き生きとした少女たちの歓声が聞こえてくるような、彼女たちの青春の一瞬が画面に塗り込められて永遠に定着されてしまったかのような印象を与える作品です。
現在開催中の企画展「江戸絵画お絵かき教室」においても、府中市美術館が所蔵する江戸絵画が何点か出品されている。
そのなかでは、次の作品を特に楽しく見ている。
亜欧堂田善
《甲州猿橋之眺望》
江戸時代後期、37.0×67.0cm
日本三奇橋の一つ、山梨県大月市にある猿橋。
実際は木造の橋だが、石の橋として描かれる。
景観も、実際の狭い渓谷から全く違うものへと変えている。
常設展は、企画展の会期にあわせて、展示替えを行っているようである。
多摩地区に住む私、府中市美術館は遠くない(だから「春の江戸絵画まつり」にはまめに通っている)ので、常設展も意識しての訪問を考えたい(なお、撮影は不可)。