クラーナハ展開幕まで、いよいよあと約1カ月。
クラーナハ展-500年後の誘惑
2016年10月15日~17年1月15日
国立西洋美術館
先月、その予習に最適、というか、これ以上は望めないほどの書籍が刊行された。
『ルカス・クラーナハ 流行服を纏った聖女たちの誘惑』
八坂書房=編/伊藤 直子=著
八坂書房
3部構成。
第1部「画家の生涯」にて、1472年に生まれ、画家である父親の工房で修行し、30歳前後ウィーンに出て制作活動を行い、33歳でザクセン選帝侯の宮廷画家となりヴィッテンベルクへ移住し、ルターと知り合いその肖像画や書籍の挿絵などを制作し、息子とともに大工房を運営し旺盛な制作活動を行ったほか、市長など市の役職を担い、1553年に没するクラーナハの生涯と代表的作品を辿る。
第2部「女神と聖女の物語」では、クラーナハ作品といえばまず思い浮かぶ、独特の誘惑系女性像(裸体像のみならず着衣像も)に着目する。
・アポロとディアナ
・ヴィーナスとアモル
・パリスの審判
・ヘラクレスとオンファレ
・ルクレティア
・アダムとエヴァ
・ユディト
・サロメ
第3部「貴族と聖女の宮廷ファッション」では、クラーナハが制作した肖像画や聖女像をもとに、当時のドイツ・ザクセン地方の宮廷ファッションを見ていく。
以上の相当濃い内容であるが、書籍の主役は90点超の作品図版。
多くがカラーで、図版の質やサイズも総じて満足できるレベル。それらが140頁に収められ、クラーナハの魅力を味わえる。
おそらく日本語で初めてクラーナハを本格的に紹介する書籍。これで2,200円(税別)、コスパがよいと思う。八坂書房さんに感謝。
さて、国立西洋美術館のクラーナハ展では、この書籍で提示された領域をカバーできる作品がどの程度来るのか、気になるところ。