与謝蕪村
「ぎこちない」を芸術にした画家
2021年3月13日〜5月9日
前期:〜4月11日、後期:4月13日〜
府中市美術館
俳人であり文人画家でもある与謝蕪村(1716〜84)。
蕪村は、大坂に生まれ、20歳頃に江戸へ行き、36歳に京に来る。39歳から3年間丹後に滞在して京に戻る。68歳で死去。
「晩年になってようやく傑作を生んだ」と言われる蕪村。でも、「それでは少し寂しい気がします」。「そもそも晩年より前から大人気の画家でした」。
で、「ぎこちない」をメインに、「ヘタウマ」「かわいい」「苦い」なども切り口として、蕪村の絵の見方・楽しみ方を提示する本展。
丹後時代から晩年まで全体で約100点の出品で、ほぼ全点が蕪村。前後期で大半が展示替え(一部は3/28をもって展示替え)されるので、1回あたり約50点が展示される。
蕪村の絵を私が初めて知ったのは、切手による。1976年発行の国際文通週間の切手に採用された《鴉図》。灰色主体で主題がカラスと、極めて地味な切手であった。
その原画実物を初めて観た(本当はおそらく2回目。1回目はあの切手の絵の実物だね、で終わり)のは、若冲目当てで訪問した2015年のサントリー美術館「生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」展のこと。こんなにも感慨深い絵だったのか、と認識を新たにした。枝につかまり風雨に屹と立ち向かっている一羽の鳶。降りしきる雪のなか、枯木に並んで留まる二羽の鴉。
この《鳶鴉図》(本展でも、前期に出品。出品を予想しておらず嬉しく観る)以外は、時折気になった作品が1〜2点あったとは言え、どう楽しんでよいものか分からず、これまでほぼスルーしていた私。
本展のおかげで、蕪村の絵を楽しむコツのようなものがおぼろげながらも見えてきたような気もするが、気のせいかもしれない。せっかくなので後期も訪問するつもり。
【本展の構成】
1章:「ぎこちない」からのスタート
2章:二つの仕事 ー 中国風の絵・俳諧の絵
・中国風の絵
・俳諧の絵
・広がる蕪村の「ヘタウマ」的スタイル
3章:「ぎこちない」を芸術にした画家
・「苦み」を味わう芸術
・「かわいい」を楽しむ芸術
・「光と空気と情感」の芸術
特によく見た作品
1章
No.4 《田楽茶屋図屏風》個人蔵
丹後時代の作。縁日に集まる人々。席に腰掛け焼きまんじゅうを食おうとする男の大きく開いた口。着物の模様の白の色が目につく、両親兄弟と4人で縁日に向かう少女の笑顔。みんな愉快そう。
2章
No.42 重文《奥の細道図屏風》山形美術館(長谷川コレクション)
画面の大半を占める文字と、小さなかわいらしい人物の挿絵、絶妙な塩梅。
No.54《「ゆふかおの」自画賛》個人蔵
薄い墨ではかなげな線で簡略に描かれた女性。
3章
No.78《白箸翁》逸翁美術館
2年前の春の江戸絵画まつり「へそまがり日本美術」展で印象に残った作品。姿は枯れ木のような老人、白い箸を売るが誰も買う人がいない。そんな老人がそんな感じで描かれる。
No.85《薄に鹿図》愛知県美術館(木村定三コレクション)
鹿の首の傾げ具合が「かわいい」。
No.95 重文《鳶鴉図》北村美術館
前述のとおり素晴らしい作品。再会できて嬉しい。
No.98 重文《山野行楽図屏風》東博
総合文化展でもお目にかかったことがあるのかもしれないが、実質初見。
左隻は若者たちに支えられて何とか山を登ろうとしている老人(高士)4人。腕を引っ張られて、肩を借りて、背中を押されて、背負われて、支えられ方はそれぞれ。
No.99 重文《富岳列松図》愛知県美術館(木村定三コレクション)
解説にあるとおり、松が手を繋いで踊っているよう。富士のバックダンサーだ。
鑑賞券には、例年どおり2度目の鑑賞が半額となる割引券付き。
本展図録は一般書籍として販売(東京美術刊)。