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現存最古の日本人を撮影した写真 - 「日本初期写真史 関東編」展(東京都写真美術館)

2020年12月22日 | 展覧会(その他)
日本初期写真史   関東編
幕末明治を撮る
当初:2020年3月3日〜5月24日
新会期:2020年12月1日〜21年1月24日
東京都写真美術館
 
 
   当初は2020年春に開催を予定し、会場準備も完了していながら、1日も公開されることなく中止となった展覧会。
   新会期が設定され、一度撤去したものを再度設営し、今回無事開催されたのはありがたいこと。
 
   写真・写真史には疎いが、初期の人物写真や風景写真を見るのは楽しい。
 
   3章構成で、約190点の出品(一部前後期入替)。
 
 
   印象に残る作品。
 
 
ハーベイ・ロバート・マークス
《慎兵衛(清太郎)像》
《岩蔵(岩吉)像》
1851-52年頃、川崎市市民ミュージアム
 
   現存最古の日本人を撮影した写真。
   彼らは船乗りであった。
 
   1850年10月、17人が乗る摂津の「永力丸」は、江戸からの帰路、紀伊半島沖で漂流状態に陥る。53日目に、アメリカ商船に救助される。到着したサンフランシスコにて彼らの肖像が撮影される。写真の存在が確認されているのは5人であるようだ。
 
   乗組員17人のその後はまちまちである。
   帰国した者、帰国途上で亡くなった者、帰国を(すぐには)選択しなかった者。
 
   写真の2人。
 
   慎兵衛(清太郎)は、帰国した者。  
   1854年に帰国。長崎奉行所での3ヶ月の取り調べを経て故郷に帰る。その後、姫路藩から士分に取り立てられ、西洋式帆船の建造に携わったという。
 
   岩蔵(岩吉)は、帰国をすぐには選択しなかった者。
   アメリカ経由で英国に渡る。英国の市民権を取る。1859年、英国初代駐日総領事オールコックの通訳として日本に戻る。しかし、その半年後、英公使館(東禅寺)前で攘夷浪士に刺殺される。
 
 
   2人の人生は壮絶だが、2人の写真も。
   この写真の所蔵者は、あの「川崎市市民ミュージアム」。
 
   2019年10月、令和元年東日本台風。
   川崎市市民ミュージアムは、その地階に設置された収蔵庫が浸水し、収蔵品に大きな被害が発生する。
   収蔵品約26万点中、浸水被害を受けていない収蔵品は約3.1万点(約12%)だという。
   同館は現在も休館中。
   収蔵品のレスキュー活動も継続中である(その状況は同館HPにて月次報告されている)。
   この貴重な写真2点は、当時どうやら地階の収蔵庫には保管していなかったらしい、浸水被害から逃れ、傷を負うこともなく、本展にも無事出品されている。
 
   この写真は幸いにも無事であったが、貴重な収蔵品がどれほど被害にあったことだろうか。
 
 


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