ヴァロットン-冷たい炎の画家
2014年6月14日~9月23日
三菱一号館美術館
スイス・ローザンヌに生まれ、パリで活躍した「外国人のナビ」、ヴァロットン(1865-1925)の日本初の回顧展。
オルセー美術館およびフェリックス・ヴァロットン財団の監修による国際レベルの展覧会として、
・グラン・パレ(パリ)
2013年10月2日~1月20日
・ゴッホ美術館(アムステルダム)
2014年2月14日~6月1日
を経て、いよいよ東京に巡回。
なお、本展は、企画当初から三菱一号館美術館が関わってきたとのこと。
休憩室に置かれた3会場の図録をパラパラめくる。
パリは、さすが本家本元。
図録は、版型も大きく、厚く、重量感ある造り。
出品数は、油彩・版画あわせ170点。
油彩についていえば、東京の出品作品はほぼ全部含まれるように見え、さらに、図録の表紙になった作品を筆頭に、東京非出品作品がたくさんあって、確認していないが、総数100点は下らないのではないか(東京は62点)。
アムステルダムの図録は、ソフトカバーの小さい版型の、薄い、軽めの造り。
体裁は、カタログ形式ではなく、読み物形式。
出品油彩は、図版を見る限り、入替えは多少あるだろうが、東京と概ね変わらない印象。
さて、ヴァロットンの主要作品は、次の3つに分けられるという。
1:胸騒ぎのする風景
2:男女の怪しい緊張関係を暗示する室内画
3:冷やかなエロスをまとう裸婦像
そのなかから印象に残った作品。
≪トルコ風呂≫
1907年 ジュネーヴ美術・歴史博物館
展覧会冒頭、いきなり「クールなエロティシズム」、6人の裸婦の登場。
出品番号のとおりに≪20歳の自画像≫からのスタートとはしなかったところがすごい。
アングル≪トルコ風呂≫のオマージュらしい。
裸婦の一人に抱えられた、首から上だけ見える犬も印象的。
≪ボール≫
1899年 オルセー美
以前のオルセー美術館展にて印象に残った作品だが、本展のメイン・ビジュアルに使われて、初めて作者名を認識した次第。
画面から伝わってくる落ち着かない感は、前景は上から、後景は正面から撮影した2枚のスナップ写真を組み合わせていることによるものらしい。
≪夕食、ランプの光≫
1899年 オルセー美
ヴァロットンの妻は、大画商の娘で、連れ子がいたらしい。
ヴァロットン家の夕食。画面手前の大きな後ろ姿のシルエットが画家本人。
家庭生活における疎外感が伝わってくる。
≪ポーカー≫
1902年 オルセー美
ヴァロットンの妻の実家。
画面の中心には、ランプの置かれた大きなテーブル。左奥にポーカーに励む実家の人達。
妻の実家に馴染めない感が伝わってくる。
≪赤い服を着た後姿の女性のいる室内≫
1903年 チューリッヒ美
あちこちに脱ぎ散らかされている服。奥は寝室。
赤い服の女性は妻なのか、別の女性なのか。
≪貞節なシュザンヌ≫
1922年 ローザンヌ州立美
旧約聖書の「スザンヌと長老たち」のパロディで、娼婦が無防備な男たちを誘惑している場面とのこと。
画面の二人の紳士と同じ髪型をした男性の背後で、この作品をほほえましく鑑賞することとなった。
≪赤い絨毯に横たわる裸婦≫
1909年 プティ・パレ美、ジュネーヴ
背景は1色、装飾なし。
その背景と赤一色の絨毯の境界上に、横たわる裸婦。
≪赤いピーマン≫
1915年 ソロトゥリン美
白の皿の上に、5個のピーマンとナイフ。
ナイフについた赤色→血に見える→第1次世界大戦、という連想が妥当かは知らない。
ただ、そのマティエールに惹かれる。
結果的に、ほとんどがチラシ掲載作品となった。
充分に楽しんだが、好みの画家かと問われると、はい、とは言いづらいかなあ。