デュフィ展-絵筆が奏でる 色彩のメロディー
2014年6月7日~7月27日
Bunkamuraザ・ミュージアム
デュフィ(1877-1953)のポンピドゥー・センター、パリ市立近代美などフランスの美術館等や、国内の美術館等の所蔵作品からなる回顧展。
国内に、デュフィの作品が、大型作品を含めてたくさん所有されていることに、驚き。世間は、こんなにデュフィ好きだったとは。
デュフィは、1899年にパリに来て以降、印象派、フォーブィズム、キュビズムなどの間を彷徨う<第1章>。
そんなとき、ファッション・デザイナーのポール・ポワレと出会い、1910年代・20年代と、テキスタイルのデザインに従事する。
第2章は、デュフィがデザインしたテキスタイル、デュフィのデザインによるドレスを着たモデルさんの白黒写真4点、そして、デュフィのデザインによるドレス実物1点が展示される。
実は第2章が本展の一番の見どころではないか。
デュフィのあの画風は、テキスタイルのデザインとの相互作用により確立したのだ。だから、色彩・作風の邪気のなさにつながっているのだ。と思い込むこととした。
第3章・第4章はお馴染みのデュフィ。本展の目玉作品をあげると。
≪馬に乗ったケスラー一家≫
テート美所蔵の219.5cm×267.3cmの大型作品で、本展のメイン・ビジュアル。
石油会社「ロイヤル・ダッチ・ペトロリアム」の創業者夫婦と5人の娘を描く家族肖像画。
1作目≪森の旗手たち≫は受け取りを拒否され、本作は2作目という。
図録に1作目(ポンピドゥー・センター所蔵)の図版があったが、小異はあろうが、基本は2作目と変わらないように見える。
本作品が私に引っかかったのは、他の出品作品がフランスまたは日本国内の所蔵なのに、なぜ本作だけロンドンから持ってきたのか、ということ(しかも、メイン・ビジュアル)。
ならばポンピドゥー・センターの第1作目も持ってきて並べて展示すれば、かなりの話題になっただろうに。
≪電気の精≫
1937年のパリ万博のために制作された10m×60mの超大型壁画ではなく、後年(1952-53年)に制作された、リトグラフによる縮小版(グアッシュによる加筆あり)。
縮小版とはいえ、99cm×125cmの10点組と、充分すぎる大型のリトグラフ。
古代から制作当時までの技術の発明と寄与した学者たちを時系列に並べる本作は、絵巻と同様に右から左へと進むので、順路と逆行して見る。
あと、音楽シリーズでポスターにも使われている≪ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ≫やデュフィが亡くなった日の朝にアトリエのイーゼルに立てかけられていたという≪麦打ち≫などもポイントだろうが、私の一番のお気に入り作品は、第1章の縦長の装飾的な作品≪網を持つ漁夫≫。(3点ともポンピドゥー・センター蔵)。
さて、本展を通じてデュフィへの関心が高まったかと問われると、はい、とは言いづらいなあ。
最後に繰り返し。なぜ、ポンピドゥー・センターの第1作目ではなく、テート美の第2作目を持ってきたのだろうか。気になるところ。